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第5夜会 指先で決まる無罪の犯人-フィンガーディレクション(中編)

中編です!


前編から読むことをオススメ致します


 ……沈黙の中、チェルシーが声を上げた所から始まった。


「みなせ。アルコールの強い酒をもらえないか?」


 皆がキョトンとする中、ロサナも何故か納得したように続けた。


「みなせ。私にも頂けますか?」


「……はい。かしこまりました」


『?』


 コレット、ユア、アーニャが首を傾げる中、底の深いグラスにトクトクトク……っと酒が注がれる音色が流れる。


 その音色にふふっという声が混ざりイズミも笑いながら、


「飲まないとやってられないですよね? 

 私もそんな気持ちで荒れていました……オーナー……私にも頂けませんでしょうか?」


 イズミはその綺麗な指でグラスを持ち、その中で酒を転がす。


「アイリス様は何故、私のことを指差したのでしょうか? 

 非常に憎悪の顔で……私は恨まれていたのでしょうか?」


 バンっ! 


 机を打ち付ける大きな音がなり。


『そんなことないっ!』


 みなせ以外の夜会のメンバーとそれにつられたコレットも大きな声で叫ぶ。

 ユアは涙を流していた。


「そんなわけないじゃないですか! だって……だって! 

 私はイズミさんの優しさを知っています! 

 きっと何かの間違いです!」


「そうよ! 一緒に働いてみなせ様に色目をつかうのは気にくわないけど……でも……でも、あんたがそんな恨まれる奴なんて思えないわよ! 

 ユアの言う通りだとあたしも思う! 

 いや、断言できるわ!」


「イズミを恨むなんてさ~どんなに考えてもないわ~」


「アーニャの言う通りですわ。何かの間違いとしか思えないわ」


「皆様ありがとうございます」


 イズミは全員に感謝の気持ちを言葉で伝えた。

 チェルシーが話しかける。


「実際にその出来事から数年経っているけど、オーレリアの相続書類は見つかったのか?」


「見つかりました」


「だっ、だったらアンタの無罪を証明できるじゃない!」


 コレットが叫ぶ。

 それに続くようにロサナも疑問を上げる。


「でも……おかしいですわ。

 イズミは夜会の時に『私の心に引っ掛かっている謎』と言っていましたわ。

 場所がわかっているのであれば謎にはならないのではなくて?」


「確かにそうかも~」


 部屋の全員の視線がイズミに向けられる。

 イズミはゆっくりと艶やかな唇を震わせながら答える。


「私はオーレリアよりオーガスト家から遠ざけられていたのと、荒れていたので何処に書類があったのかは知らないのです。

 ただ、人伝に書類が見つかったということは知りました」


『……』


 全員が沈黙する。

 しばらく沈黙が続いたあとコレットが声を上げた。


「きっとそのオーレリアよ! 

 オーレリアがイズミを嵌めたのよ! 

 なんかやったに違いない!」


「私もそう思いたいです。

 しかしあの時の遺産が相続できないという狼狽え具合、私が指を指したときの慌てて主張したときの姿はとても罠を仕組んだようには思えません」


「そうとは言い切れなくて?」


 ロサナは煙草に火をつけ一呼吸置く。

 そこにアーニャが突っ込みをいれる。



「なんでさ~今の情報だと確かにオーレリアは仕組んでなさそうだぞ~」


「過去にあった俳優・講演家の事件を思い出してご覧なさい。

 本心から生まれた演技は演技と見抜く術はありませんわ」


「でも、ロサナさん。オーレリアがどうやってイズミさんを罠に嵌めたというんですか?」


「私にもわからんな」


 ふーっ……と煙を吹きチェルシーは答える。


「それは頭の回転がいい人間なら気付くことですわ。何故ならそもそもオーレリアは相続書類を聞き出す気はさらさらなかったということですわ」


「えっ!?」


「なになにどういうことなの?」


 ユアとコレットが食い付く。


「アイリスが他界する数日前から相続書類を探し発見出来なかった……遺産を手に入れる条件は【相続書類を手にする】ことと、あともう一つございましてよ」


「あ~! 【イズミの妨害行為】か!」


「そうですわ。

 確か【片側が妨害行為を行った時は相続書類を手にしていなくても残りの片側が相続できる】とのことでしたわよね? イズミさん?」


「はい。そうです」


「つまりは最初から相続書類を見つける気はなかったんだな!」


「いいえ……最初は見つける気だったと思いますわ」


「ん? じゃあどうしてよ?」


「アイリスの行動ですわ」


「アイリスさま……ですか?」


 イズミは少しつらそうな顔をしてロサナに問いかけ、ロサナはそれに応じる。


「そうですわ。アイリスがイズミを指差した……その時オーレリアは今回の罠を思いついたんですわ!」


「なっ……なるほど。ロサナさん凄いです」


「んで、イズミの知りたい所の何故アイリスはイズミを指差したんだ?」


 チェルシーは素朴な疑問をロサナにぶつける。


「……」


 ロサナは黙る。そして、チェルシーはまたロサナにぶつける。


「そんで結局、オーレリア用の相続書類は何処にあったんだ?」


「……」


 ロサナは沈黙の末、顔を少し赤らめ俯き小さな声で呟く。


「……そ……こはわかりませんわ……」


「ロサナさん! そんなんじゃチェルシーさんと一緒ですよ!」


「はぅ!? ……そんな……わたくしが……」


 少し情けないロサナにユアの鋭い指摘が入る。

 ロサナはかなりショックを受けた様子を見せ、その姿を見てアーニャは爆笑する。



 そして、何故かチェルシーもダメージを受けていた。



「……まあ、私がどうとかは置いておいて……こほん! 

 今回のイズミの疑問はオーレリアはこの際どうでもいいんだ。

 まず【自分は相手を妨害していない】というところと、何より一番大切な所は【アイリスが何故イズミを指差したのか】ここだろう!」


 チェルシーは仕切り直しに言い放った。


「はい。私はなぜアイリスさまに指を差されたのか……どうしてもそこが気になります。

 その答えはオーレリアの相続書類の隠し場所ときっと結び付いているはずです」


 イズミは一口、綺麗な色をしたブランデーを飲みながら言った。

 そして、ユアも飲み物をみなせに頼みそれから続けた。


「ですが……またわからなくなりました。アイリスさんはイズミさんを本当の家族と思っていたと私は思います。

 でも、どうして最後にイズミさんを指差したのか……」


「イズミは聞いてなかったんだよね~」


「はい……私は存じ上げませんでした」


「う~ん……イズミが着ていたメイド服に折り畳まれた相続書類があった! 

 ポケットの中とかさ~。

 だから、アイリスはイズミを指差した!  

 これはどうだろ~」


「その日の一週間前にクリーニングから帰ってきたばかりです。

 そしてそれよりも前からアイリスさまは床にふせっておりました」


「う~ん……ちがうか~」


 アーニャは頭をポリポリとかく。

 

 そして、何かを思いついたようにチェルシーに話を振る。


「というかさ~。チェルシーいつも誰よりも先に推理を披露するじゃん。まあ~当たったのはついこの前一回こっきりだったけどさ~。

 今回はどうなのよさ~?」


「……」



 チェルシーは何も言わない。


 そして、しばらく無言が続いたあと。



「イズミが真剣に悩んでいる以上、私は何としてでもその悩みを解決させてあげたい。

 でも、何もわからないんだ……せめて……せめて隠した場所さえわかれば答えに繋がるはずなんだ。そうだ! みなせ! 

 みなせは話を聞いていて何かわかったことがあるんじゃないか!?」


 全員の目がみなせに向く。

 みなせはニコリと微笑み指を差した。

 みなせの指はしなやかで色白でとても綺麗な指をしていた。


 そして、みなせが話始める。







「これが答えでございます」






「えっ!?」






 その驚いた声はみなせの指し示した方向から上がった。

 コンマ数秒遅れでその場の全員がその方向に目を向けた。







 そこには……















 








 驚いた顔をしたロサナがいたのであった。







つづく


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