序章 ‐はじまり‐
金曜から始まる物語「分岐点」からの派生のお話なので、
本編の「分岐点:alternative」からの続きとなります。
当 「序章 -はじまり-」はいきなり始まります。
空が紅い…黒い月のようなものが見えるが 今が昼なのか夜なのかさえもわからない
突然影が辺りを覆った。
飛行機? ちがう、鳥?
それにしてはあまりにも大きな翼と巨体を誇り、
耳をつんざくような叫び声まであげている。
伝説上のドラゴンのようなサイズ感である。
そんなモノが空を覆っているのだ。異様な光景と言わずしてなんと言おうか
先程までいた自分達の“世界”とは どうやら別世界のみたいだ
(どうなってるんだ 駅の外装もさっきとまるで別物じゃんか)
「ねぇ…ここってさっきいた駅…だよね?」
「あぁ、そのはずだけど…」
ここがどこなのかはさっぱりわからない
まともな世界では無さそうだ。
「とりあえず 人のいるところに行こうか」
「そうね そうしましょう」
俺達は 駅だった場所をあとにした
「町並みは割りと元のままなんだけどな~」
「どれも和洋折衷のような造りになってるけどね」
そう 町並みはそっくり しかし全て木造、漆喰、瓦等々で構成され なかにはレンガ造りの建物もみえる 信号機もあるのだが 機能はしていないようだ。車通りはない。
道路は石レンガのような造りで、電柱は勿論木の柱。
外灯は灯籠などガス灯、提灯に変わっていた。
明かりが灯っているので、今は夜なのだろう。
夜だから暗い のはわかるが、この紅い空の昼間はどんな感じなのだろうか。この世界の常識を知らない俺たちにとっては
少しのことでも疑問が出じる。
「にしても、人がいないな どうしてだろう」
「家に明かりはついてるのに人の気配もしないなんて…」
「それはですねェ 夜になると、魔物が出るからですよォ。」
「ひゃぁ!?」
いきなり真後ろで声がして ユカリは飛び跳ね驚く
振り返ると老人が立っていた。
なぜ今まで気づかなかったのだろうか
それに辺りの灯籠の灯が消えている。これは一体…
「驚かせてしまったかなァ」
老人は笠を被っていて 顔はよく見えないが、
なにか 危険ということは体が教えてくれる
「へぇー、そうなんですね 知らなかったです。ありがとうございます」
老人は首をかしげながら続けた
「あんたら 見かけん顔じゃなァ… ここらの者ではないな?」
「そういう じーさんは何者なんだ?」
「ちょっと、失礼じゃない 年配の方に」
茅野が諌めてくれるが、今はそんなところではない
老人はニヤリと笑い
「お嬢さんはええ娘じゃなァ。年寄りを敬ってくれて」
傘の下の顔が歪み こう続ける
「喰ってしまいたいくらいじゃ」
!?
「やっぱり 普通のじーさんじゃないらしいな…」
くそっ なんてことだ まともな世界じゃないと思っていたけど
完全なハズレくじじゃないか
「に、逃げるぞ!茅野さん」
「逃げるってどこに!?」
「とにかく安全なところへ!」
「逃がしませんぞォお客人!!」
老人はこちらに手を向け、狙いを定める
(何をするつもりだ?)
老人の手が青白く光り、なにやら呪文を唱えた
「蛇光鞭!!」
うぁあ!?老人を激しい光が包んだ。
と思った刹那、老人と二人の間に乱入者が割って入り
閃光を打ち消した。
「お二人さん今のうちにお逃げなすって」
敵対する意思は感じられない 背中をまかせても良さそうだ
「「ありがとうございます!おじさん」」
タッタッタッタッタッタッ…
「ふっ、おじさんか」
影から娘が1人飛びでてきて 乱入者をからかう
「親方がおじさんですって♪」
「うるせえなぁ 妥当だろうよ」
「口が滑りました」
娘に反省の色はみられない
「逃してしもうたわ。ほんに儂らの邪魔しかせんのぉ ボウズ」
「今度はボウズだって」
「どつくぞ サクヤぁ」
「お主と戯れとる時間など無いわい あのガキどもを追わんといかんのでな」
「そうかよ 一歩たりとも追わせはしねぇがな」
二人は睨み合い、両者の覇気が、灯篭の灯を揺らし出した。
城下町の夜は深みを帯びていくばかりであった
“功城譚”とも言うべきストーリーの展開になります
お楽しみに