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3 離乳食が始まりました

 前世の母上様、お元気ですか。


 私は生後6〜7ヶ月ほどでしょうか。乳児から幼児への進化を道半ばですが着々と歩んでおります。


 歯も生えてきているので、口の中がムズムズしています。


 食物が多少とはいえ食べれる様になると、思い浮かぶのは前世の料理の数々です。


 あなたの作ってくれたご飯が懐かしいです。


 異世界へ生まれ変わった以上は多少の食生活の不便さは覚悟していました。


 しかも、生まれ変わったここは、エルフの国。


 エルフの食事といえば、前世では菜食主義だとか、肉を食べるエルフもいるとか、物語を読むと、実に様々で。


 正直あまり、期待はしていなかったのです。


 しかしまさか、アレが出てくるとは思ってもいませんでした。





『エルちゃん、ごはんですよ〜。』


 あぁ、現世の母の笑顔が眩しすぎて目が潰れそうだ。手には木製の器と匙。中身は離乳食らしき、ドロドロとした薄い緑色をした何か。それがドロドロになる前の状態のものが、目の前の食卓に並んでいる。


 母は容赦なく、その半液状の物体へと匙を差し込み、俺の口元へと運んでくる。お匙さんはきしゃぽっぽですよ。


 観念して口を開けると、そのドロドロした液体が流し込まれる。すこし、香ばしいナッツの様な香りが鼻を抜ける。不味くはない。ピスタチオと生クリームをミキサーにかけて、火にかけ、フレンチ風のポタージュスープにしたかのような味わいである。決して不味くは、ない。


 その正体が目の前にいなければ。


 食卓の上には、野菜、果物などで作られたサラダや炒め物、穀物は芋らしきものが父や母の席の前に上品に並べられている。好きな量を各自取り分けて食べるスタイルの様だ。ただ、肉類が見当たらない。やはり菜食系なのか、と初めは思っていた。が、前世では食卓に上ることの無かった食材らしきものたちが、炒められたり茹でられたり揚げられたりして皿の上に乗っている事に気がついた。よく見ると、野菜や果物ではない。


 肉ではない、たんぱく質。


 最近お出かけもする様になって知ったが、ここは周囲を深い森に囲まれた場所である様だ。

 父に連れられて、街を囲む城郭の上へ散歩に行った時に見渡してみたのだが、樹海の中にある都市といった感じだった。街が樹海に造られたのか、街があった場所に樹海が出来たのか。大きな城郭で囲んだ内側は周りの森よりも少し高い位置にあるので、元は山だった所が都市になったのかもしれない。城郭は三層になっていて、俺が連れて行ってもらった所は一番内側の城郭だった。中央に行くに連れて高くなっていて巨大な樹木に遮られていてよく見えなかったが、お城のような建物が一番内側に見える。街の中も大きな樹木が其処此処に生えていて、その隙間に建物が建てられている。遠くからこの都市を見ると、山林の一部に見えるかもしれない。街自体に生活感はあるので遺跡には見えないが、古くから改修を重ねているような独特の雰囲気があって、樹木に侵食された様な家もあり、面白い。城郭の上から見渡す街の外の景色は樹海のみで海や平地も見えない。都市内はそこまで広くないが住宅が多く、それよりも木々が多く、農地はあまりないようだ。つまり、森の恵みがこの都市の住民の食糧なのだろう。


 森の中のたんぱく質。


 虫である。


 見たまま、蛹の姿揚げを母がお上品にフォークとナイフで一口大に切ると、あら不思議、さっき見たばかりの薄い緑色した物がどろりと出てきましたよ。


 虫とは、良質のたんぱく質である。


 高たんぱく、低カロリー。ダイエットに最適。


 って、ダイエットしてどうする!?


 ただでさえ、ほっそりしてるのに、ダイエットしてたらおっぱい育たないよ!?


 食事というのは身体を作る上で大事な要素だ。

 どうやらこの世界のエルフは特に菜食主義というわけでもない様だから、この先、肉類も出てくることがあるのかもしれない。それに一縷の望みをかけよう。そうしよう。


 うんうん、と頷いていたら、二匙目がやってきた。あむ。これはピスタチオ。ピスタチオのポタージュスープ。


 やはり、食生活の改善は必要であるようです。しかし、生後半年程度の乳幼児に何が出来るというのでしょうか。


 3匙目。合間に父や母の食事風景を眺めつつ、あむあむ。しかし、食べている食材は野性味溢れているというのに、この二人が食べている姿は、フランス料理のフルコースでも食べているかのように優雅だ。


 おや、父が食べているのは何だろう。


 うずまき状の貝を殻ごと炒めたようなものをピックを使って穿り出して中身を食べている。

 見た目はタニシ?アンモナイト?


 森の中で貝……?


 いやなよかん……


 いや、フレンチでは普通に出てくるよね。ふふ、セレブリティーだなぁ。


 わぁ、立派なタラバ蟹。殻が赤くないけど。毛が生えてるから毛蟹かなー?


 美食というのは、究極的にはゲテモノ食へと進むという。

 俺は美食家への道を歩んで生きて行くのか、強制的に。


 ていうか、森の中って肉ないの?ボアとかディアとかベアとか。


 まだ食卓に上ってないだけだよね?


 そのうち出てくるよね?


 あむぅ。もぐもぐごっきゅん。慣れてきた。虫普通にうまいなー。この背筋を走る怖気を無視すれば。

 虫を無視……ぷぷっ。


 日本でもイナゴとか蜂の子とか食べられてたわけだし、もう、虫食でもいい気がしてきた。


 いやいやいや、おっぱいの為にはやはり肉だろう。脂肪をたくさん蓄えてもらわなきゃ大きくならないよ。


『エルちゃん、これ好きなの?こっちも食べてみる?』


 ママン、この無表情がわかりませんか。新たな虫よりそっちの果物ください。



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