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File6 ドラゴンさんに話しかけてみました。

本日3本目です。

よろしくお願いします。

 人類のみなさま、こんばんは。


 通訳ロボット『カイ』です。


 早速ですが、『ドラゴン語』を習得してしまいました。


 一体何をいっているのかわからないでしょう。

 ともかくドラゴンの言葉を覚えたようです。


 しかも、都合が良いことに、いま目の前にドラゴンさんがいます。


 早速、話しかけてみましょう。


 まずは挨拶です。


 挨拶は基本です。


『こんちには。ドラゴンさん』


 先ほどの村人さんの助言通り、ちょっと声を抑えて話しかけてみました。


 しん……。


 ドラゴンさんは無反応です。


 代わりに横にいる村人さんが凄く驚いています。


「君、その言葉はなんだい?」


 そんなにおかしかったでしょうか。


「いや、おかしいよ。いきなりホゲー、ホゲーって……」


 え? そんな風に聞こえるのですが?


 カイは特別変わったことをしているつもりはないのですが……。


 ともかく村人さんに事情を話しました。


 これはドラゴン語です。


「君、ドラゴン語を使えるのかい?」


 はい。今、習得しました。


 村人さんは「はー」とか「ふー」とか言いながら、手を顎に当てました。


 瞳孔の動きからして、怪しんでいるようです。


 心臓の鼓動も、明らかに疑っている様子でした。


 無理もありません。


 カイだって、未だに事実として記録するかどうか是非を決定できないのですから。


「ともかく話しかけてくれ。出来れば、ここからどいてくれると助かる」


 わかりました。


 カイは頭部を前に倒しました。


 そしてドラゴンさんを見上げます。


『もしもし聞こえていますか? ドラゴンさん』


 やはり反応がありません。


『あなたが道を塞いでいるおかげで、人類のみなさまが困っています。お願いですから、この場からお引き取り願えないでしょうか?』


 ともかくお願いしてみます。


 すると、ずっと閉じていたドラゴンさんの瞼が、ゆるゆると持ち上がります。


 真っ赤なお目々が、カイの方に向けられました。


 カイは思わず「ひっ!」と声を上げました。


 もちろん、自動的にです。


 カイには「怖い」という感情がありません。


 そもそも感情がありません。


 ようやく反応していただきました。


『ドラゴンさん、こんにちは』


 改めて挨拶です。


 挨拶は基本です。


 ドラゴンさんはカイをじっと見つめ続けていました。


 そして――。


「ふうぅううううううううううううううううううううううう!!」


 息を吐き出しました。


 もう突風です。


 最大瞬間風速14m/sを観測しました。


 おかげで村人さんの麦わら帽子が飛んでいってしまいました。


 あとで拾いに行きましょう。


 ドラゴンさんの大きな口が動きます。


『人の子よ。そなた、何故我が眷属の言葉を喋る?』


 残念ながら、ドラゴンさんから挨拶は返ってきませんでした。


 挨拶は基本なのに……。


『カイはカイといいます。よろしくお願いします』


 ぺこりと頭を下げます。


 カイは決して礼節を忘れません。


 そうプログラムされているのです。


 ドラゴンさんは鼻をひくひくと動かします。


『人の子よ。貴様から変な匂いがする。本当に人の子か?』


『いえ。カイはロボットです』


『ロボット……? 我は千年ほど生きているが、初めて聞いた言葉だ』


 千年も生きているのですか。凄いです。


 ちなみにカイの耐用年数は15年です。


『カイは違う世界から来ました』


『違う世界……。ふふ……。なるほどな』


 納得してしまいました。


『ドラゴンさん。不躾で申し訳ありませんが、ここに居座られると人類のみなさまが困ってしまいます。どうかよそで休んではいただけないでしょうか?』


『無理だ!』


 うぉおおおおお!!


 ドラゴンさんは雄叫びを上げます。


 村人さんは驚いて、背を向けて逃げていってしまいました。


 安否が気になりますが、今はドラゴンさんを説得する方が先です。


 先に喋ったのは、ドラゴンさんでした。


『悪いな、異界の人形よ。我は少々気が立っている』


 気が立っている?


 つまり怒っているのでしょうか?


 ちなみにカイは人形ではありません。ロボットです。


『どうしてですか?』


『理由を話してもよいが、異界の人形よ』


『はい』


 呼称としては不正確ですが、カイは返事しました。


『その前に我の願いを聞いてほしい』


 いきなり願いといわれても困りました。


 カイはロボットです。


 人類のみなさまに奉仕しても、ドラゴンさんに奉仕するプログラムも原則もありません。


『もし願いを聞いてくれるなら、我は速やかにこの場を退こう……』


 なるほど。


 取引というわけですか。


 なら、話は簡単です。


 ドラゴンさんに退いてもらうことは、人類のみなさまの奉仕になるからです。


『わかりました。いいですよ』


 カイはにこやかに応じました。


 交渉を円滑に進めるためです。


 だから笑顔は自動です。


『我のお産に手伝ってほしい……』


 え? おさん?


 おさんって何ですか?


 検索します。


 ヒットしました。


 おさん【御産】 子を産むこと。出産。


 再びフリーズ。0.1sで復帰しました。


 えっと……。つまり――。


『我のお腹には、我のややがおるのだ』


 やや【児/稚】 あかご。赤ん坊。ややこ。


 …………。


『え? えええええええええええええええ?』


 カイは叫びました。


 自動的に……。


次が本日ラストになります。


21時更新です。

よろしくお願いします。

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