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Final File カイは感情を覚えた。

最後です。

お楽しみ下さい。

 カイは歩きました。


 てくてく……。てくてく……。てくてく……。


 こういうのも久しぶりです。


 ここ数日、カイはたくさんの人に囲まれていました。


 村の人たち。


 第1村人さん。


 村長さん。


 助産師さん。


 ロスさん。


 ゴブリンさんたち。


 パパさん。


 そして……。


 色々な方たちがカイの周りにいました。


 ですが、今はカイ1体だけです。


 村からすでに2キロ離れました。


 村の姿は小山に隠れて見えなくなっています。


 どこか寂しいです……。



 寂しい(ヽヽヽ)



 おかしいです。


 カイに何かしらのエラーが出ているのではないでしょうか。


 チェックします。


 不正プログラムやウィルスの形跡はありません。


 至って正常です。


 では、何故でしょうか。


 何故、カイは。



 寂しい(ヽヽヽ)……。



 と結論づけたのでしょうか。


 わかりません。


 カイはロボットです。


 人類のみなさまのような感情というものがありません。


 なのに寂しい(ヽヽヽ)というのはとてもおかしいです。


 しかも、人工知能はコメント付きで解析をしていました。


 “カイが“寂しい”と感じたのは、カイが今1体しかいないからではない”


 “まして半径数キロ圏内に、人類や意思疎通が出来る生物がいなからでもない”


 ???


 カイは首を傾げます。


 自動的に、です。


 人工知能は一体何を言おうとしているのでしょうか?


 理解不能です。


 カイの中にあるのに、人工知能が結論づけたいことがわかりません。


 コメントは続いていました。


 “その定義は難しい”

 “しかし、それは1つのシチュエーションとして説明が出来る”


 “それはある特定の個体の姿、声などを、ある期間をおいて、記録できていないからだ”


 ますますわかりません。


 一体、人工知能は何が言いたいのでしょうか?


 殴ってやりたい。


 そんな暴力的なことまで思考しました。


 やはり、どこかおかしいのでしょうか?


 以前のカイなら。


 バーランドに来たばかりのカイなら、こんな思考しなかったはずです。


 その時です。


 カイのセンサーが生物の反応を捉えました。


 何者でしょうか?


 新しい人類様でしょうか。


 それともモンスターさんでしょうか。


 未知の情報です。


 自動的に下を向いていた顔を上げます。


 いいえ。


 違いました。


 最初からわかっていました。


 記録していたのです。


 血液が流れる音を。


 骨が軋む音を。


 その匂いを。


 規則正しい心音を。


 センサーは1つの結論をすでに出していました。


 カイの前には道が続いています。


 馬車の車輪痕ぐらいしかありません。


 ただの直線です。


 木も、標識もありません。


 小さな野花だけが咲いた……。

 人が通る道です。


 そこに立っていました。


 人ではありません。


 緑色の肌です。


 微風が髪を撫でます。


 パッチリとした赤い目は、今は伏せ目がちです。


 顔を下に向け、無意味につま先で地面を蹴っています。


 誰かを待っている――。

 そのようにも見受けられます。


 見るまでもありません。


 カイのよく知る人でした。



「ココ……さん…………」



 カイの音声は風に運ばれていきました。


 ココさんの耳元に届いたようです。


 こちらを向きます。


 ココさんの赤い瞳に、カイが映っていました。


「王都へ行くんだな」


「はい。王都へ行きます」


「そうか」


「……」


「王都の道のりまで長いぞ」


「はい。でも、大丈夫です。カイはロボットですから」


「そ、その荷物とか重くないのか?」


「全然大丈夫です。カイはロボットですから」


「じゃ、じゃあ……! モンスターとかに襲われたらどうする?」


「カイは強いですから大丈夫です。カイより強かったら、逃亡を選択します」


「お前、足が遅いだろ。転んだりしたらどうするんだ?」


「その時は諦めるしかありません。でも、カイはロボットです。食べても美味しくありません。そもそも食べることができません」


「じゃ、じゃあ……」


「……」


「……」


「ココさん……」


「な、なんだよ」


「カイは嬉しいです」


「はあ?」


「嬉しいというのはおかしいです。カイはロボットですから。感情がありません」


「感情がないって……。おかしくないか?」


「どうしてでしょうか?」


「お前は笑っていたじゃないか?」


「それは自動的にです」


「困っていたじゃないか?」


「それも自動的にです」


「泣いていたとも聞いたぞ」


「それも……。自動的にです」


「と、ともかく! あたしはお前に感情がないなんて1度も思ったことがない」


「え?」


「お前はロボット、ロボットっていう。けど、あたしからすれば人間だ」


「でも、カイは――」


「あたしはずっと……。ロボットっていう言葉が、人間で言う“人類”という意味だと思ってんだけど、違うのか?」


「それは――」


「違わないだろ? だって、あたしはカイを人間だと思ってる。感情があるって思ってる。お前がどう思おうと、それは変わらないし、あんたが変えることでもない」


「……」


「否定も、変えてほしいとも思わない。そもそもあんたの言うことを聞く義理なんて、あたしにはないんだからね」


「……」


「で――。何が嬉しかったのさ?」


「カイは、ココさんに会えて嬉しかったです」


「……」


「……」


「……ば、ばかいうな!」


「本当です。事実、カイは寂しくなくなりました」


「お前、寂しかったのか? だったら、また村に戻ればいい。ゴブリンの巣にもたまには来てもいいからさ」


「違います」


「だったらなんだよ?」


「様々な検証をしました。たくさん思考しました。人工知能が焼き切れるぐらいに。今も、頭部の熱が抜けません」


「だからなんだよ?」


「結論から申し上げます。カイは――」



 ココさんに会えなくて寂しかったようです。



「!!」


「……」


「……」


「……」


「……」


「あの――」


「な、なんだよ」


「顔を真っ青にしてないで何か言ってくれませんか」


「う、うううううるさい!」


「すいません」


「……」


「……」


「おんなじだ」


「え?」


「おんなじだって言った」


「何がですか?」


「い、いい言わせるのか?」


「カイは知りたいです」


「……!」


「……?」


「あ、あたしも寂しかった」


「へ?」


「あたしも寂しかった! そう言ったんだ!!」


「――!」


 カイはドキリとしました。


 正確には、一瞬にして1日のエネルギー循環係数の3分の1ぐらい使用してしまいました。


 一気にエネルギーを使ってしまったのです。


 カイの視覚センサーがココさんを捉えます。


 顔が真っ青でした。


 聴覚センサーが、その鼓動の音を捉えます。


 ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドク


 すごい高速です。


 心拍数150です。


 でも、心地よいです。


 ココさんの鼓動です。


 何より。


 とても可愛かったです。


 いつの間にかココさんはカイを見ていました。


 上目遣いです。


 やはり可愛いです。


「……」


「……」


 沈黙が続きます。


 何か言うべきでしょうか。


 でも、何を言えばいいでしょうか。


 とても大切なことを伝えなければならないと推測します。


 カイは思考しました。


 そして検索しました。


 検索……。検索……。検索……。


 けれど、何も出てきません。


 0件です。


 検索を続けました。


 0件でした。


 でも、何かおぼろげに人工知能の可視領域に何か浮かんでいます。


 よく見えませんでした。


 しかし、なんと書いているかはわかります。


 その意味も知っています。


 果たしてこの場にふさわしいのかわかりません。


 けど――。


 藁をも掴む思いで、カイはその言葉を伝えました。


「すき……」


「え?」




 カイはココさんが好きです。




 言いました。


 音声に出力しました。


「「……」」


 また沈黙です。


 ココさんは俯きました。


 やはり顔が真っ青です。


 そしてポツリと言いました。




「あたしもカイが好き……だ……」




 聴覚センサーがココさんの音声を伝えます。


 カイの身体の温度が上がります。


 自動的に――。


 いえ。


 ごく自然に、です。


 カイは反射的にココさんの肩を抱きました。


 ココさんのぱっちりお目々が大きく開きます。


「な、なにするんだよ!!」


 バチン、と音を立てて、カイに平手を打ちます。


 しかし、蹲ったのはココさんでした。


 手が真っ赤――訂正(エラー)――真っ青になってました。


「相変わらず固いなあ、お前!」


 カイはロボットです。


「わかってるよ。そんなこと! というか、さっきのはなんだ?」


 なにって――。


 キスしようとしました。


「ななななななな! ききききききキス!!!!」


 はい。


 男女間の気持ちの確認の後、キスするのが常套です。


「ば、馬鹿あ! 何を考えているんだ、お前! そんなの時と場合と相手によるだろ!」


 そうなのでしょうか?


 カイは首を傾けます。45度です。


 ココさんはひとしきり怒った後、手を差し出した。


 顔は相変わらず真っ青です。


 目も合わせようとはしません。


「とりあえず、ここからだ」


 何がですか?


「い、言わせるな! 手をつなぐところからだ」


 しかし――。


 手をつないでしまうと、それは……。


「ああ! もう! わかれよ!!」


 ココさんは頭を掻きます。


 かき乱します。


 そして言いました。


「あたしも王都に連れてけって言ってるんだ?」


 カイは首を傾げます。またです。


 本当に解析できませんでした。


 理解不能です。


 人工知能が完全に沈黙しています。


「パパの許可はもらってる」


 それに――。


「カイに付いていきたい、あたしは……」


 その時のカイはどんな顔をしていたのでしょうか。


 いえ。確認しなくてもわかります。


 顔を赤くしていたはずです。


 だって、とても熱かったから。


 頭部がショートしたように熱かったのです。


「連れてってくれよ、カイ」


 ココさんは笑いました。


 とてもとても……。


 素敵な笑顔でした。


 カイは答えました。



 はい……。



 カイとココさんは歩き出しました。


 王都まではとても遠いです。


 でも、大丈夫です。


 不安ありません。


 寂しくありません。


 カイはロボットだからではありません。



 カイにはココさんがいるからです……。





 人工知能にメッセージが表示されました。


 【クエスト 完了】


 【カイは好きという感情を覚えた】



                        【了】


短い間でしたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。


実は延野は昔からロボットが好きです。

デビュー作にも巨大ロボットが出ているのですが、

本来カイのようなロボット――アンドロイドが好きで、

昔からちょこちょこと書いてました。


なろうになれてきて、新作を書いてみようとなった時、

ロボットの話を1つ書いておきたいと考え、

連載させていただいたのが、本作というわけです。


カイの王都での生活、グラロマ商会での活躍など、

まだ書くことはあったと思うのですが、

作者個人としてやりたいことはやってしまったので、

クローズさせていただきました。


非常に自分本位な作品でありながら、ブックマーク、評価、PVをいただきました。

読んでいただいた方に感謝を申し上げます。

本当にありがとうございました。


他作品の連載は今も続いておりますし、商業での出版も行って参ります。


どうぞこれからも延野正行の作品をよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ほっこりさせて頂きました( ꈍᴗꈍ) 自分本意なんかじゃないと思いますよ。 とても良い作品でした! これからも創作活動を応援しております。
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