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File40 カイ、旅立ちます。

第40話です。

よろしくお願いします。

 人類のみなさま、おはようございます。


 通訳ロボット、カイです。


 旅立ちの朝です。


 快晴。南から1メートルの微風。湿度50パーセント。


 気温24度。紫外線量は少なめ。


 良い天気です。


 絶好のお洗濯日和です。


 旅立ちにもちょうど良い気候と言えます。


 村の入り口前には人だかりが出来ていました。


 村の方全員が集まっています。

 寝たきりで動けないはずのおじいさんまで来てくれました。


 体調、大丈夫でしょうか?


 みなさん、次々に別れの言葉をかけてくれます。


 小さな子供たちからはプレゼントももらいました。


 まず木の実です。

 とても美味しそうです。

 けれど、カイは食べられません。


 道中、困っている人にあげましょう。


 小さな細工物ももらいました。


 花輪や木の実の殻で出来たものです。

 とても綺麗です。そして細かいです。


 いつかマスターに見せてあげたいですね。


 ありがとう。


 カイは頭を下げました。


 子供たちは照れくさそうに。


「バイバイ! カイ!」


 と言いました。


 バイバイというのは、バーラントでは使いません。


 カイがいた世界の別れの言葉を、子供たちが覚えてしまったのです。


 飲み込みが早いです。


 とてもいいことですね。


 年配のご婦人方はハグを求めてきました。


 中には自分の子供のように抱いてくれる人もいます。

 そんな時、そっとカイの髪を撫でてくれます。


 光栄です。


 カイはロボットですが、子供のように思ってくれるのはとても嬉しいです。


「また酒を飲もうな、カイ」


 と言ってくれたのは、村の男の人たちです。


 こちらも年配の方たちばかりです。


 顔が赤いです。


 もう飲んでいるのでしょうか。


 いいえ。違います。


 カイのセンサーが判断しています。


 男の人たちの目には涙が浮かんでいました。


 また絶対戻ってきます。

 だから、また飲みましょう。


 カイは約束しました。


 でも、ほどほどにお願いしたいです。


 もう記録を消すのは御免被りたいです。


「ゴッゴッゴフ……」


 ゴブリン語が聞こえました。


 ですが、ゴブリンさんではありません。


 ゴブリンさんとは昨日別れの挨拶を済ませてきました。


 立っていたのは、村でも比較的若い方々です。


 カイの教え子さんたちでした。


 見事なゴブリン語です。


 鼻が高いです。


 もう教えることはなさそうです。


 免許皆伝です。


「ゴッゴ!」


 お元気で、と言ってくれました。


 ちなみにその前は「カイさん、ありがとうございます」です。


 でも、先ほどから一言も人類の言葉を喋りません。


 この人たちは果たして本当に人類さんなのでしょうか?


 少し心配になってきました。


「君には本当にお世話になったね」


 握手を求められました。


 第1村人さんです。


 いえいえ。お世話になったのはカイの方です。

 色々とよくしてくれてありがとうございます。


 カイは頭を下げます。


 自動的に、ではありません。


 これは礼儀です。


「君があの時現れてくれなかったらといつも考えるよ」


 第1村人さんは肩をすくめます。


 そして、カイに耳打ちしました。


「実はね、カイくん。僕は趣味で小説を書いてるんだ」


 ほう。それは素晴らしいですね。


 いつか読んでみたいです。


「ああ……。また君がこの村を訪れた時にね。――で、ものは相談なんだけど、君を主人公にした作品を書いてみたいんだ。いいかな?」


 どうぞどうぞ。


 それは楽しみです。


 ちなみに、どんな話にしようと思っているんですか?


「君が異世界へ行って、様々な町や村を訪れて、困っている人を助ける話さ」


 カイは弱りました。


 どこかで読んだ事があるような気がしたからです。


 検索します。


 該当件数0件。


 うん。問題ないかもしれません。


「やはり寂しいのぉ。カイがいなくなるのは……」


 そう言ったのは、村長さんでした。


 杖を持って、相変わらず震えています。


 村長さんの下の地面だけ揺れているように見えます。


 マグニチュードいくつでしょうか。


 そしてカイは助産師さんに向き直りました。


 助産師さんは笑顔でした。


 いつも通りです。


 大きなお腹をでんと突き出し、手を腰に当てています。


「あたしゃ、さよならはいわないよ」


 はい。カイも言いません。


「また帰ってくるんだよ。……あんたは、この村の子供なんだから」


 帰ってくることはお約束します。


 ですが――。


「なんだい?」


 カイはこの村の子供ではありません。


 はっきり言いました。


 助産師さんはキョトンとします。


 豪快に笑いました。


 そしてカイと助産師さんは声を揃えました。



「「カイはロボットです」」



 助産師さんは満足そうに笑いました。


「元気でな」


 問題ありません。


 カイはいつでも元気ですから。


 表情筋を駆使して、カイは笑います。


 自動的に、です。


 そしてカイは大きな樽を持ち上げました。


 中にはゴブリンさんが作ってくれたお酒が入っています。


 王都は遠いです。


 カイの足でも何日かかるかわかりません。


 エネルギー源であるお酒は、あるに越したことはありません。


 カイは振り返ります。


 また頭を下げました。


 みなさん、ありがとうございました。


 このお礼は忘れません。


 だから、またきっと帰ってきて、お礼を言いたいと思います。


 ありがとうございます。


 3度、頭を下げました。


 カイは出発します。


 目指すは東です。


 大きな声援がカイの背中を後押しします。


 カイは手を振って応えました。


 バイバイ。人類……。


 口には出しませんでした。


 人工知能の中だけで呟きました。


残すところあと1話となりました。


最終回の話は、もちろん……。


明日も通常通り7時に更新します。

よろしくお願いします。

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