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File37 カイは一体誰の命令を聞けばいいのでしょうか?

第37話です。

よろしくお願いします。

 人類のみなさま、こんにちは。


 通訳ロボット『カイ』です。


 カイはまた勧誘されてしまいました。


 今度は人類の方に、です。


 カイは優秀な通訳ロボットです。


 何故なら、開発した人類の方がとても優秀な方だったからです。


 スペック的にもベースタイプですが、それでもオプションタイプとなんら引けはとりません。


 勧誘されるのは仕方ないことかもしれません。


 ……なのですが――。


 どうしましょうか?


「カイ……。あんたが決めな」


 助産師さんが言いました。


 カイが決めていいのでしょうか?


 人工知能はますます熱を帯びました。


「カイくん」


 いつの間にかロスさんはカイを見つめていました。


 青い瞳は鮮やかな青空の色と類似していました。


「王都には様々な人や物が溢れている。君はそういうものに興味がある側の人間のはずだ」


 カイは人間ではなく、ロボット――という指摘は、今は置いておきましょう。


 確かにカイは興味があります。


 人や物が溢れている。


 翻せば、情報がたくさんあるということです。


 情報の摂取は、人工知能を搭載したカイにとって、人類のみなさまでいう「本能」のようなものです。


 カイというロボットを、より価値のあるものに変えるためのもの。


 引いては、人類のみなさまのためになるのです。


 しかし、カイは即答できません。


 王都へ行くというのは、命令(コマンド)ではないからです。


 あくまでカイの自立行動(わがまま)です。


 それによって、村の人たちが損害を被るというなら、ロボットであるカイは行くことができません。


 そもそも……。


 カイはたった今、思考しました。


 現状、カイの管理者様とは連絡が付きません。


 なら――。



 カイは一体誰の命令を聞けばいいのでしょうか?



「カイ……」


 助産師さんが名前を呼びました。


 カイはボディを向けます。


「お前さん……。泣いているのかい?」


 音声を聞いて、ようやく感知しました。


 視覚センサーのレンズが濡れています。


 映像がぼやけていました。


 そっと頬に手を添えます。


 レンズの洗浄液が、カイの手にちょこんと付着していました。


 カイは泣いていました。


 けれど、こんな機能あったでしょうか?


 機能を確認。


 やはりありません。


 これは自動的に、ではありません。


 では、何故カイは泣いているのでしょうか?


「カイ……」


 突然、助産師さんがカイを抱きしめました。


 土と花の匂いがします。


 少しだけお酒の匂いも検知しました。


 でも、とても柔らかいです。


「私たちと別れるのが嫌なのかい?」


 カイは助産師さんの胸の中で頭を振りました。


 違います。そうではないのです。


 カイはお願い(ヽヽヽ)をしてみました。



 “カイに命令してください”



 カイは決められないのです。


 ロボットだから……。


 人類のみなさまに奉仕するためのロボットだから……。


 命令されないと動けないのです。


 しかし、助産師さんは何も言いません。


 その代わりカイの髪を撫でました。


「本当にあんたは、奉仕が好きなんだね」


 好きとか嫌いとかではありません。


 カイはロボットです。


 そうするよう命令されているのです。


 だから、ちゃんと命令してほしいのです。


「わかったよ。カイ……。じゃあ、よく聞きな」


 はい。


 カイは洗浄液(なみだ)を拭きました。


 助産師さんの音声に、センサー感度を上げて待機します。


 やがて言いました。



 “あんたの幸せはね。私たちの奉仕にもなるんだよ”



 え?


 人工知能が一瞬、ブラックアウトしかけます。


「だから、あんたがしたいと思ったことをすればいい……」


 助産師さんが振り返ります。


「それでいいね。あんたたちも……」


 初めは暗い顔していた村の人たちは、徐々に顔を上げました。


 そして次々と頷き、助産師さんの意見に賛同しました。


 村長さんは「ほほほ」と笑いました。


 ロスさんも口角を上げて、頷きました。


「みんな、それでいいってさ」


 助産師さんも笑いました。


 カイは……。


 また泣きました。


 自動的ではない涙を流しました。


 そして拭きました。


 人工知能はある決定を下しました。


 カイは――――。


1番書きたかったシーンです。


明日も7時に更新します。

よろしくお願いします。

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