File36 カイ、またまた勧誘を受けました。
第36話です。
よろしくお願いします。
ロスさんはカイが渡した紙を受け取ります。
珍しそうに見ると、尋ねました。
「これは?」
カイが作った契約書です。
村のみなさまと話し合って決めました。
「へぇ……。どれどれ……」
目を走らせます。
初めは退屈そうに見ていたロスさんでしたが、やがて手が震え始めました。
え? 何か怒っているのでしょうか?
やがて読み終わると、カイの方に向き直りました。
「これ? もしかして君が書いたのかい?」
よくわかりましたね。
「村の人の中に、こんなに事細かに契約書を書ける人はいないからね。もしかしてカイくんは商人なのかい? それとも大商人の秘書か何かを勤めていたのかな?」
カイは首を横に振りました。
ただ単に契約書は、村の人と話し合ったことと、これから起こるであろうことをカイがシュミレーションし、係争が予測されるであろう問題の――責任の所在を明らかにしたものです。
またカイには向こうの世界でインプットされた契約条項や約款が収められています。
その文章を元に製作させていただきました。
何か問題はあるでしょうか?
「正直、僕としては折れてほしいと思うところもあるのだが、さすがにこれほどきっちり決められると、何も言いようがないよ。100点満点の契約書だ」
パンとカイが作った契約書を叩きます。
ピロリロリン……。
評価を受けました。
「ところでカイくん。……この紙はどこで売っているものだね。すっごいなめらかに出来ているんだけど」
あ……。それは……。
「もしかしたら、お酒よりもこっちの方が高値が売れるかもしれない。もし、これも村で作っているなら、一緒に契約させてくれないか!」
どうしましょうか?
実はその紙は、カイに内蔵されているペーパーロールの一部なのです。
お腹を開けて、見せてもいいのですが、さすがに異世界のみなさまに見せるのは、ショッキングです。
ロスさんの顔は真剣でした。
しかし、誤魔化すしかありません。
カイは笑いました。
笑って誤魔化すことにしました。
ハハハ……。ハハハ……。ハハハ……。
「ロスさんや。ともかく、お酒は売ってもらえるんじゃろうか?」
カイとロスさんの間に、割って入ったのは村長さんでした。
ロスさんの視線が村長さんに移ります。
カイはホッと胸をなで下ろしました。
自動的に、です。
「ええ。構いません。先ほども言いましたが、このお酒が世に出ないのは惜しい」
カイの次は、村の人が胸をなで下ろす番でした。
ロスさんは言葉を続けます。
「ただ……。僕から1つ条件をつけてもいいでしょうか?」
村のみなさまの心臓が、一拍大きく打ち鳴らされるのを検知しました。
「なんじゃ?」
「彼を…………。カイくんを、しばらく僕に預けていただけないでしょうか?」
「カイを……かい?」
助産師さんが驚いています。
カイも同じです。
人工知能があらゆる予測を出そうとして、若干頭部が熱いです。
「彼はとても優秀です。……失礼ながら、この村にずっと置くには惜しい人材だと思います」
「それはこの村ではカイをもてあますということかい?」
「有り体に申し上げて……」
ロスさんは目を伏せました。
おそらく村の人から反対されるのをわかっていたのでしょう。
事実、村のみなさまは次々に口を開きました。
「カイは、この村の子だ!」
「見損なったぞ、ロス!」
「この人買いめ!」
「カイはこの村の救世主だ」
「どこにもいかないでおくれ、カイ……」
「やめな! あんたたち!!」
部屋の壁がビリビリと震えました。
大きな声です。102dBです。
一喝したのは、助産師さんでした。
騒々しかった部屋が一気にミュートします。
助産師さんはロスさんに向き直りました。
「ロス。カイをどうしようってんだい?」
ロスさんはようやく目を開けました。
「王都に連れて行こうと思います」
さらりと言います。
またみなさんの心臓が大きく高鳴るのを検知しました。
カイくん、モテモテ……。
明日も7時に更新します。
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