File33 カイは「晩酌」を覚えました。
第33話です。
よろしくお願いします。
カイは早速、ゴブリンさんたちに説明しました。
村の人たちの農作業を見ていたパパさんは頷きました。
「商売のことは俺たちにはわからん。だから、お前に任せる」
お酒を造ってくれるんですね。ありがとうございます。
カイはぺこりと頭を下げました。
「ただ、あまり多くは作れないぞ。時間もかかる。それに酒が造れるほどの大きさに育った竜睾草自体、見つけるのは至難の業だ」
なるほど。
竜睾草が育つのにどれほどの時間がかかるのか、と聞くと、パパさんは最低でも5年はかかると話してくれました。
確かに大量生産は難しいかもしれないですね。
記録しました。
「あと……。必ずお前が仲立ちしてほしい」
それは構いませんが……。
「商売にはトラブルがつきものだと聞いている。これはゴブリンたちとトラブルを起こさないよう、人間を守るための制約だ」
理解しました。
カイはロボットです。
人類のみなさまを守るためなら、どんな労も惜しみません。
ところで……。
「…………!」
先ほどからパパさんの影に隠れたココさんがずっとカイを睨んでいます。
目を三角にして、時々うなります。
とりあえず謝っておきましょう。
ごめんなさい。
ですが――。
「ふん」
ココさんは首を振ってすねてしまいました。
そんなココさんの頭を、パパさんは優しく撫でます。
「ココ……。それぐらいで許してやれ」
「絶対イヤだ!」
取り付く島もありません。
一体、カイは何をしたのでしょうか?
カイは村長さんたちのところに行くと、事情を説明しました。
ゴブリンさんが出した条件を、皆さんは快く承諾してくれました。
「我々としても君が仲立ちになってくれると助かるよ」
むしろ、ホッとしています。
「しかし、量が限られているのは痛いなあ……」
「むしろ少量だからこそ価値が出るんじゃないか」
「あれだけ美味いんだ。……大金をはたいても、買いたいというものもいるだろう」
「俺たちみたいな無学なものが、大きな商売をすれば失敗するかもしれない」
「……これぐらいが身の丈にあってて、オラはいいと思うぞ」
口々に話し合います。
視覚センサーや聴覚センサーで確認していると、カイが村に来た初めの頃よりも、細胞が活性化しているように推測します。
人類のみなさまでいう「活き活きしている」という状態です。
何より楽しそうです。
お酒もないのに、盛り上がっています。
カイも笑みを浮かべます。
自動的に、です。
そうしてあれよあれよ、と物事が進んでいきました。
まず3人のゴブリンさんが村にやってきました。
ゴブリンの中でも比較的お若く、働き盛りな方がお2人。
もう1人は、パパさんよりも1つ下――つまり副リーダーさんと言えばいいのでしょうか。
ゴブリンさんの中で、2番目に偉い方が来てくれました。
3人のゴブリンさんたちは素直で、よく働きました。
最初は不安そうにしていた村の人たちとも、打ち解けていきました。
今は、秋の実りの収穫時期と重なっていて、大変助かったといっています。
あっという間に、3人は村の人気者になりました。
最初は、カイが通訳に入って、色々とゴブリンさんや村の人に説明をしていました。
しかし、双方からお互いに言語を覚えたい、という要望がありました。
素晴らしいことです!
ということで、カイが先生になって人間とゴブリンの言葉を教えることになったのです。
カイには言語学習のノウハウが詰まっています。
通訳ロボット『カイ』の本領発揮です。
あと、ささやかな変化ではありますが、カイは『晩酌』なるものを覚えました。
一気にお酒を飲むと、とんでもないことになるからです。
カイの記録には残っていないですけど……。
だから、1日1~2杯飲むことにしました。
仕事の後の1杯はなかなか格別です。
最後に1つだけ気になることを記しておきます。
パパさんたちが帰ってからというもの、ココさんは1度も村に姿を現しませんでした。
人工知能に揺らぎを感じます。
これが人類のみなさまでいう「さびしい」という気持ちなのでしょうか。
そう――。
カイは「さびしい」のです。
自動的に……。
そしてあっという間に、日にちは過ぎていきました。
運命の日です。
行商人さんがやってくる日なのです!
最近、晩酌とかしていない作者です。
明日も7時に更新します。
よろしくお願いします。




