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File30 お酒の力は偉大です。

第30話です。

よろしくお願いします。

 カイがお手伝いをして、お酒を杯に人数分いれます。


 それぞれの前に、酒杯を並べ、横にゴブリンさんが持ってきてくれた燻製の肉をお皿に盛ります。


「待て待て、カイ」


 声をかけたのは助産師さんでした。


 はい。なんでしょうか?


「酒の肴ってのは、みんなで摘まむもんなんだ。小分けにするんじゃない。大皿を持ってきな。そこに全部を盛るんだよ」


 おお。なるほど。そういうものなのですね。


 記録しました。


 カイは早速、大皿を持ってきて村長さんたちにも、ゴブリンさんたちにも手が届くところに置きました。


 そういえば、ココさんってお酒が飲めるんでしょうか?


「ば、バカにしないで! お酒ぐらい飲めるわよ!」


 ふん! と髪を振って、明後日の方を向きます。


 頬がプクッと膨れていました。


 それは失礼しました。


 では、みなさんどうぞ。


「どうぞって、あんたのぶんがまだないじゃないか」


 助産師さんはカイの前に置かれた空の杯を指さします。


 いえ。カイは今、仕事中ですから。


「これも仕事のうちさね」


 そう言って、酒が入った袋を傾けて、入れてくれました。


 どうしましょうか?


 あの映像(あくむ)がよみがえります。


 あれ? なんでまだ残っているのでしょうか?


 しつこいですねぇ。消去しておきましょう。


「カイくん。まずは君から飲んでくれないか?」


「村長……。あんた、肝が小さいねぇ。カイに毒味させるつもりかい?」


「彼は若いし、胃も丈夫そうだし」


 お気遣いなく、大丈夫ですよ。


 カイはそう言って、杯を口部に近づけました。


 匂いは相当きついですが、毒物らしきものは検出されませんね。


 人類のみなさまが体内に入れて、消化しきれないものもないようですし。


 では――いざ実飲してみましょう。


「少しでいいからね、カイ」


 助産師さんが気遣ってくれましたが、カイは一気にいきました。


 自動的に――。



「うまい!!」



 ボリュームを上げて、叫んでいました。


 これは凄い情報(あじ)です。


 低アルコールですが、雑味の中に程よい酸味と甘さが検出されます。


 毒なんてとんでもありません。


 人類のみなさまにも、とても飲みやすいのではないでしょうか。


 カイの感想を聞いて、村長さんも助産師さんも酒杯に口をつけました。


 少し含んだ後、2人は一気にいきました。



「「うま!!」」



 ぷはー、と2人は同時に息を吐きます。


 そうです。


 分析しがたいのですが、一気に飲みたくなるおいしさなのです。


「こんな酒……。初めて飲んだ」


「甘さもあって……。女でも飲みやすいねぇ」


 それぞれ口にします。


 カイは通訳しなかったですが、2人の表情を見て、パパさんも杯を傾けました。その姿はどこか誇らしげです。


「人間も、マシな舌を持っているんだな」


 その横に座ったココさんは鼻の下を掻きました。

 パパさんより誇らしげでした。


「一体、どうやって作っているのかのう」


 助産師さんに酌をしてもらいながら、村長さんは尋ねました。


竜睾草(りゅうこうそう)を砕いて、発酵させたものだ」


「ぶはっ!」


 村長さんは驚きのあまり――お酒を吹き出してしまいました。


 ちょっと汚いです。


 カイのボディに少しかかってしまいました。


「竜睾草って、あの竜岩草ともいわれるほど、硬い植物のことか?」


「斧だって通さないほど硬いって聞いているよ。よくそんなものをお酒にしたね」


 カイは通訳すると、パパさんは教えてくれました。


 竜睾草というのは、主に草原に生えてる歴とした野草だそうです。


 ただしとても硬い。


 竜の睾丸みたいに大きいことから、竜睾草と呼ばれるようになったそうです。


 睾丸みたい(ヽヽヽヽヽ)ですからね。

 勘違いしないで下さいね。


「表面に一部だけ割れやすい箇所がある。あとは力だ」


「ぷはっ! なんともゴブリンらしい豪快な答えだね」


 助産師さんは杯を持ちながら、豪快に(ヽヽヽ)笑いました。


 その時でした。


 突然、音がして、村長さんの家の扉が倒れてしまいました。


 光が差し込みます。


 ゴブリンさんたちは何がなんだかわからず、立ち上がりました。


 ココさんが歯を食いしばって威嚇します。


 そこには村の人たちが、将棋倒しのように倒れていました。


「わ、わしの家の扉が……」


「あんたたちなにやってんのさ」


 へへ……と、村の人たちは笑っています。


 そこに敵意はありません。


「おお! あれがゴブリンが持ってきたという酒だぞ」


 1人――村人さんが革袋を指さしました。


「ははーん……。あんたたち、お酒に興味があるんだね」


「「「でへへへへ」」」


 村の人――特に男の人たちは、照れ笑いを浮かべました。


「どうする、村長……?」


「むうぅん……」


 村長は判断に困って、カイを見ます。


 カイはお酒を村の人にも振る舞ってもいいか、尋ねました。


 パパさんは頷き、快諾してくれました。


「やった!」


 我先にと、村の人がなだれこんできました。


 みなさま、すでにマイ酒杯を持っています。


 とても用意がいいです。


 カイは持ってくる杯に、次々とお酒を注ぎました。


「う、うめぇ!」

「なんじゃこりゃー」

「こんなの初めてだよ」

「甘いお酒って苦手だけど、これは飲める!」

「うん。私でも飲めるわ」


 評判は上々のようです。


 気がつくと、酒宴が始まっていました。


 村のあちこちから、酒の肴が持ち込まれていました。


 どの酒の肴が合うか比べ合いが始まりました。


 いつの間にか、村の人はすっかりゴブリンさんになじんでいました。




「カイ、あんたも飲みな」


 え? いや、ちょっと……。


「なんだい? あたしの酒が飲めねぇってか?」


 あ――。わ、わかりました。


 大丈夫でしょうか。


 また自動的にあの映像が脳裏に浮かびました。


睾丸から抽出されるお酒とかにしても面白いかなって思ったんですけど、

さすがに汚いのでやめました。


明日も7時に更新します。

よろしくお願いします。

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