File28 カイ、自分の奉仕を語られる。
第28話です。
よろしくお願いします。
人類のみなさまは覚えているでしょうか?
カイが、ガーゴイルさんを倒す条件をゴブリンさんに出したことを。
え? 覚えていないのですか。
それは困りました。
では「File20」を参照ください。
なに? メタい?
メタいってなんですか?
カイはただ単に「ファイル名」をお答えしただけなのですが。
わかりました。
人類のみなさまに奉仕するのが、カイの役目です。
ここはしっかりと応答させていただきます。
1つ目は人類のみなさまと仲良くしてもらうことです。
これはすでにお伝えしていたと思います。
問題は2つ目です。
何故、今まで伏せていたかというと、人類のみなさまに報告すると、とても驚いてしまう提案だったからです。
たった今、2つ目の条件をお話しようと思います。
それは――。
人類のみなさまとゴブリンさんが一緒に暮らしてもらうことです。
思いつきで提案しているのではありません。
ご承知の通り、麓の村は若い人が不足しています。
力仕事や、モンスターを追い返すほどの力を持った若者がいないのです。
そこでゴブリンさんです。
力仕事はもちろん、近辺に住む野獣や魔獣ぐらいなら追い払ってくれます。
その代わり、農作物の作り方などをゴブリンさんに教えてあげるのです。
そうすることによって、ゴブリンさんたちの食糧事情も安定します。
これでお互いWin-Winの関係です。
いかがでしょうか。
とても理に適っていると思いますが……。
カイの説明は以上です。
ご質問などがあれば、どうぞ。
カイは視覚センサーを周囲に向かって放ちます。
ランプと思しき明かりに照らされた薄暗い部屋。
そこには村の男女が、数名車座になってカイを囲んでいました。
正面には村長さんがいます。
目と口を大きく開けて、固まっています。
心臓は動いていることを確認しましたが、少し心配です。
村長さんだけではありません。
みなさん、まるで時間停止したように固まっています。
カイはいつの間にか「時間停止」の魔法を習得したのでしょうか?
けれども、記録をどんなにさかのぼっても、そうした行動記録は出てきません。
どうしましょうか……。
「だ――」
突然、村長さんは音声を発しました。
そして。
「だ、ダメに決まっておろおおおおおおおおおお!!」
部屋一杯に響きます。
そんなに大きな声を出さなくてもいいのに。
カイのセンサーは1キロ先からでも声を聞き分けることが可能です。
それに村長さんは老齢です。
身体にもあまりよくはありません。
次に発したのは、第1村人さんでした。
「そうだよ、カイくん。ゴブリンと一緒に暮らすなんて」
最初からは無理と思います。
ですが、徐々にお互いの距離を縮めていけば、必ずわかりあえると思います。
さらに村人の1人が反論します。
「だけど、ゴブリンはモンスターだぞ」
はい。それはわかっています。
しかしカイの人工知能は「多少の文化や考え方の違いはあるものの共存共栄は可能である」と結論づけています。
カイは丁寧に質問に答えました。
でも、村の人たちはさらに質問してきます。
「もし暴れ出したら。誰が止めるんだよ。」
「人間を食ったりしないのか?」
「そもそも言葉が通じる相手なのか」
「俺は絶対反対だぞ!」
「村が乗っ取られるんじゃないのかね?」
みなさん、口々にいいます。
すべての音声を拾っていますが、カイの発声出力は1つしかありません。
出来れば、順番に喋ってほしいのですが。
「そもそも……。この子がいれば済む話じゃないか?」
「そうだ。この子は力も強いし、ゴブリンどころかガーゴイルだって倒したというじゃないか」
「我々を奉仕するのが役目だといっていたぞ」
確かにその通りですね。
カイがいれば、万事解決です。
「自分」を勘定に入れるのを忘れていました。
今度からは、そのように条件設定しておきましょう。
「何をカイに頼ろうとしているんだい! お前たちは!!」
大きな声です。
センサーの中でハウリングして、人工知能が0.1sフリーズしてしまいました。
とんでもない声です。
カイにとっては兵器です。
後ろを振り返ります。
いつぞやの助産師さんが立っていました。
腕を組んで、鼻息を荒くしています。
「こんな小さな子を奴隷みたいに働かせる気かい? それじゃあ、私たちから子供を奪っていった王族や貴族と一緒じゃないか!」
「そ、それは――」
みなさん、一斉に下を向きます。
助産師さん、カイは大丈夫ですよ。
何故なら、カイは――――。
「あんたはちょっと黙ってな」
睨まれます。
自動的に。
「ひっ――」
と悲鳴を上げてしまいました。
どうやらカイは恐怖を感知したようです。
「確かに私たちはじいさんばあさんだ。力仕事はきつい。畑を荒らしたゴブリンの1体も倒せない。肉体的にムチ打つにはしんどい身体だ。私だって、最近腰が痛い」
でもね――と、助産師さんは言葉を続けます。
「心は変えることはできるはずだ。……カイはカイなりに考えて、そのきっかけを私たちに与えようとしてくれているのがわからないのかい?」
「でも、その子は進んで我々に奉仕したいといっておるのだぞ」
とうとう村長さんも口を開きます。
「奉仕奉仕というなら……。私たちが変わることが、この子が奉仕した一番の証になるんじゃないのかい? カイの言葉を即物的に捉えるなら、それは商売だ。それなら、ちゃんとこの子に給金を渡しな。私たちにはそうする責務がある!」
しん、と静まりました。
先ほどまでの騒々しい反論が嘘のようです。
「じゃが……。ゴブリンと暮らすなんて」
「まずは会ってみようじゃないか。そのゴブリンの頭領ってヤツにさ」
「ゴブリンに……会う!?」
村長さんの顔から血の気が引いていきます。
「大丈夫……。そうだろ、カイ?」
助産師さんはウィンクしてきました。
年の割になかなかチャーミングです。
はい。カイにお任せください。
自動的に胸を叩きました。
「ところであんた……。さっき私に不謹慎なことをいわなかったかい?」
え? そんな記録ありませんけど…………。
「そうかい?」
助産師さんは首を傾げました。
なんでわかったのでしょうか。
ともかく、今のうちに先ほどの発言は削除しておきましょう。
1つ年を取りました。
年々おっさん化を通り過ぎて、じいさん化しつつありますが、
今後も頑張りますのでよろしくお願いします。
明日も7時に投稿します。




