File26 こういうこともあろうかと……。
第26話です。
よろしくお願いします。
バサバサ……。バサバサ……。バサバサ……。
音は入口の方向。さらに50メートルほどいったところから聞こえます。
カイは元きた道を引き返すことにしました。
ココさんも後に従います。
音を頼りに進みます。
結局、外に出てしまいました。
陽の光が、カイのセンサーを一瞬真っ白にします。
現れたのは、大きな羽根を広げたガーゴイルさんでした。
地上から6メートルの位置でホバリングし、こちらを見つめています。
ガーゴイルさんの下には大きな影が広がっていました。
「来たな」
ガーゴイルさんはニヤリと笑います。
すでに勝利を確信した笑みです。
「どうだ。いくらお前が、ロボットという種族でも、空は飛べまい」
とうとうロボットが種族にされてしまいました。
もういいです。
これ以上は時間の無駄です。
カイはロボットです。
耐用年数は15年しかありません。
人類のみなさまの寿命の半分の半分もありません。
時間を無駄にすることは出来ないのです。
「だが、俺様には魔法がある」
そうしてガーゴイルさんは首を絞めました。
大きく口を開けて、炎を吐き出します。
カイはなんとか走って逃げます。
ココさんもかわしました。
思ったのですが、あれは魔法なのでしょうか?
どちらかといえば、魔法というよりガーゴイルさんの身体的特徴のように分析します。
検索しました。
そうです。炎息です。
「どうやら、お前……。あまり素早く動くのが苦手みたいだな」
はい。そうです。
カイはあまり素早く動けません。
「敵に弱点を教えてどうするんだよ!」
大丈夫です。
炎に当たっても、カイが壊れることはありません。
耐熱仕様で摂氏1000度まで大丈夫です。
「じゃあ、さっきはなんで逃げたんだよ?」
ココさんが尋ねました。
答えはシンプルです。服が焦げてしまいます。
これは管理者様からいただいた大事なものと記録されています。
「けど、どうするんだよ。炎が大丈夫でも、こっちから攻撃できないんだぞ」
ノープロブレムです。
先に対策はお話しておいたはずです。
カイは映像データを再生します。
1時間前の映像です
―――― 再生 ――――
「お前、本当にガーゴイルに勝てると思ってるのか?」
前を歩くココさんが質問します。
まだ森を歩いている時です。
棍棒を振り回し、行く手を遮る枝を払っています。
ノープロブレムです。
「あいつの魔法は炎だ。射程も長い。距離を取られたら、パパでも勝てないんだぞ」
大丈夫です。ノープロブレムです。
「何か飛び道具とか持ってんのかよ」
道具は持っていません。
この通り、ノーオプションです。
ですが、ちゃんと秘策はあります。
「秘策……」
カイは先ほどクエストをクリアしました。
ゴブリンさんを討伐したからです。
そこで新しいスキルが追加されることになっていました。
そして先ほど、ダウンロードが終わったのです。
「なんだよ。それ――」
―――― 停止 ――――
では、ここからカイの新スキルをお見せしましょう。
カイはコマンドを選択します。
いくつかの項目の中に、一際異色の名前がありました。
【魔法】
そうです。
カイは【魔法】を使えるようになったのです。
ロボットなのに――です。
しかし使えるのだから、仕方ありません。
使用しない選択肢はカイにはありません。
カイは【魔法】を選択します。
その中に1つだけ名前がありました。
続いて音声入力です
カイは口を大きく開けました。
そして――。
サンダージャベリン!!
声は山々に響き渡りました。
我ながら、大きな声です。
すると、黒い雲がどこからともなくやってきました。
晴れていた空を覆い尽くします。
まるで夜になったようです。
ゴロゴロ……。ゴロゴロ……。ゴロゴロ……。
「まさか……」
呟いたのはガーゴイルさんでした。
その0.8s後のことでした。
稲光が光ると、落雷がガーゴイルさんを貫きました。
巨大な電撃に、1度灰色の身体が真っ白になります。
「うぎゃああああああああああ!!」
下品な悲鳴が響きました。
時間にして、3秒ほど……。
放電時間としては、かなり長いはずです。
ホワイトアウトした世界がふっと元へと戻ります。
ガーゴイルさんの体勢が崩れます。
そのまま……落下しました。
動体センサーに反応なし。
焦げたにおいだけが、カイのセンサーに引っかかりました。
人工知能にメッセージが表示されます。
“ガーゴイルを討伐しました”
どうやら、カイはガーゴイルさんを倒したようです。
ロボットに魔法ってチートじゃない?
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明日も7時に更新します。
よろしくお願いします。




