File24 カイ、笑う。
第24話です。
よろしくお願いします。
ガーゴイルさん、おはようございます。
通訳ロボット『カイ』です。
ご要望通り。
カイはもう1度言いました。
いや、もしかしてこれで2度目かもしれません。
些末な問題です。記録はしないでおきましょう。
ガーゴイルさんは真剣な表情でカイを睨みます。
ゆっくりと体勢を整え、立ち上がりました。
横でココさんが驚いているようです。
口をあんぐりと開けています。
女の子なので、慎んでほしいです。
ガーゴイルさんはサッサッと肌についた埃を払います。
綺麗好きなのでしょうか?
その割には全裸ですね。
「なるほど。人間にしては、力があるようだ。ロボット」
えっと……。
ロボットというのは固有名詞であって、カイが名前です。
呼ぶなら、カイです。
「どうでもいい」
どうでもよくないです。
そこははっきりしておきたいです。
カイはロボットですから。
記録がしにくいです。
「ふん」
ガーゴイルさんは鼻息1つで一蹴します。
実に頑固な人です。
ガーゴイルさんは側に置いていた三つ叉の槍を拾い上げます。
室内戦において武器として選択するのはどうかと思います。
それに動物か何かの骨を加工したものでしょうか?
真っ白です。
ガーゴイルさんは槍を持って、カイにツッコんできました。
予測通りです。
とてもスピードがあります。
さんざん言ってますが、カイは素早く動くのが苦手です。
センサーによって反応が出来ても、人工筋肉がついてこれないのです。
だから受け止めます。
槍の切っ先を掴もうとしました。
しかし直前で変化し、軌道が変えられました。
刃先がカイの肩へと向かっていくのをセンサーが捉えていました。
「あぶない!」
ココさんの声が聞こえます。
なかなか乙女チックな悲鳴です。
今のは評価が高いです。
そして乾いた音が、洞窟内に鳴り響きました。
ひゅん、と音を立てて、何かが空中で回転します。
やがて硬い岩盤に突き刺さりました。
「な――」
息を呑んだのは、ガーゴイルさんです。
最初は笑っておられましたが、みるみる顔面から血の気が引いていきます。
驚いているようです。
カイは視覚センサーで確認します。
チェックするまでもありませんが。
やはり――。
ガーゴイルさんの槍の切っ先が、折れていました。
ちなみにカイのボディは無傷です。
衣服とコーディング剤がはがれた程度です。
内臓されたアクチュエーターも、正常に稼働しています。
特殊炭素繊維と耐衝撃構造のボディは、完璧に機能しています。
なんの骨をお使いになられているのかわかりませんが、そんなものでカイのボディを傷つけることなんて不可能ですよ。
「な、何を訳のわからないこと!」
驚いているようだったので、わかりやすく説明をしたつもりなのですが、逆に怒られてしまいました。
今後、ガーゴイルさんでもわかる説明方法を検証する必要がありそうです。
さてこの後どうしましょうか?
うーん……。
ひとまず検索してみましょう。
カチカチ……。カチカチ……。カチカチ……。
ああ、なるほど。
人類のみなさまはこう反応するのですね。
まねしてみましょう。
ともかく口角を上げます。なるべく広くです。
頬の筋肉を緩めつつも、目尻を押し上げます。
「お前、笑っているのか?」
はい。そうです。
カイは笑っています。
自動的ではありません。
人類のみなさまは、こういう余裕ある状況の時に、お笑いになるからです。
その時です。
ガーゴイルさんの後ろにぬっと影が浮かび上がります。
「この野郎!!」
ココさんが棍棒を振り下ろします。
しかしガーゴイルさんはわかっていたようです。
タンと地面を蹴るとかわしてしまいました。
振り下ろされた棍棒は、カイの頭に突き刺さります。
がひょん、となんとも間抜けな音が鳴り響きます。
なかなか効きました。
人工知能が瞬停してしまったほどです。
カイに会心の一撃を浴びせた本人は。
「あ。ごめん」
と謝罪はせずに。
「お前、邪魔だよ! うすのろ!」
ののしりました。
やはりココさんはもう少し女の子らしくするべきです。
明日も7時に投稿します。
よろしくお願いします。




