File23 ガーゴイルさんを討伐します。
第23話です。
よろしくお願いします。
人類のみなさま、おはようございます。
通訳ロボット『カイ』です。
今、カイは山の中腹に来ています。
そして目の前には、大きな洞窟があります。
そうです。
やってきました。
これがガーゴイルさんの家です。
もとい――。
ゴブリンさんたちの根城です。
「この中にガーゴイルのバカがいるんだ」
ココさんはそう言って、棍棒をかつぎます。
やる気満々です。
まだついてくるつもりなのでしょうか?
「当たり前だろ! あいつは1発ぶん殴らないと気が済まないからね」
なるほど。
ですが、ココさんも女の子なんですから「ぶん殴る」とか言ったらダメですよ。
「あ、あたしを女の子扱いするなよ。……あ、あたしはね。戦士なのよ、ゴブリン族の!」
顔が赤く――Error――青くなっています。
「ともかく! 魔王の配下だろうがなんだろうが! ぶっ飛ばしてやる」
ガーゴイルさんって魔王さんの配下なんですか?
「そうだよ。言ってなかったか?」
はい。今、情報を記録しました。
「なんだよ。魔王の配下ってビビってんのか、あんた?」
カイはロボットです。
「ビビる」とか「恐怖」とかいう感情は持っていません。
「感情を持ってない? はは……。あんた、本当に変なヤツだね」
カイを人類のみさなまと同一視するのであれば、変わっていて同然です。
何故なら、カイは――。
「ロボットだっていいたいんだろ?」
なんでわかったんですか?
「耳にたこができるぐらい聞いたつーの。ともかく行くよ」
はい。行きましょう。
洞窟の中は暗いかといえば、そうではありません。
ところどころ、松明が光っていて、明るく照らしています。
1本の長い廊下があって、両サイドに小さな部屋があります。
カイの予測では、かつてここにゴブリンさんたちが暮らしていたのでしょう。
廊下は奥へと続いていました。
一際、大きな部屋が出ます。
松明の光に照らされた陰影がゆっくりと動きました。
「勝手に出てったと思ったら、今度は戻ってきおって。なんだ? 俺様に殺されにでもきたのか、ゴブリン」
聴覚センサーを最大。
さらに他のセンサーの機能精度も上げて、カイは観察します。
視覚センサーに、細長い生物を捉えました。
禿頭に、つるりとした灰色の肌。
さほど筋肉質ではありませんが、その質から考えて、とても瞬発力が高そうです。
衣服は一切つけていませんが、性器は確認できません
虹彩がない真っ赤な瞳は、心理的な「恐怖」を植え付けるのに十分でしょう。
何より記載せねばならないのは、肩甲骨から伸びた羽根です。
今は閉じられていますが、広げれば今いる空間内を覆うほどの大きさはあるはずです。
転じて分析するなら、この部屋に封じ込めておけば飛行はできないということですね。
さすがに、空を飛ばれるとカイにはどうしようもありません。
いつかいいましたが、カイはベースタイプです。
オプションでバックパックをつけることは可能ですが、飛行は不可能です。
「は! なにをいってるんだい! 決まってるだろ! あんたをぶん殴りに来たんだよ!」
ココさんが啖呵を切ります。
また女の子らしからぬ発言をしています。
これは一から教えた方がいいかもしれません。
あと、それとガーゴイルさんと戦うのは待ってほしいです。
「どういうことだよ?」
「なんだ? そいつは人間か? ……はは。落ちたなゴブリンも。まさか人間に助けを求めるとは」
「違うわ! こいつが勝手に――」
はじめまして、ガーゴイルさん。
通訳ロボット『カイ』です。
補足すると、カイはロボットです。人間ではありません。
「ろぼっと?」
お決まりの疑問形です。
カイはもう慣れてしまいました。
少し話は変わりますが、カイは「安堵」しています。
何故なら、ガーゴイルさんの言葉も聞けるし、話すこともできるからです。
なるほど。
ガーゴイルさんとゴブリンさんの言葉って一緒なんですね。
記録しました。
話を戻します。
カイはガーゴイルさんに話しかけました。
麓の村の人類のみなさまにゴブリンさんを退治するよう言われてきました。
しかし、ゴブリンさんがあなたを退治すれば、人類のみなさまの迷惑をおかけしないといわれ、あなたを退治しにきました。
「人間が1人で俺様を? くくく……。あはははははは」
洞窟に目一杯広がる声で、ゴブリンさんは笑いました。
「なんの冗談だ。……ゴブリン、とんだ人間を仲間にしたものだな」
「あたしは仲間にした覚えはない」
ガーゴイルさん。
「なんだ?」
もう1度言います。
カイは人間ではありません。
ロボットです。
「それは聞いた。――って、お前……。そんなに近づいてきていいのか。俺様の腕力は、ゴブリンの首だって一瞬にして刈るぞ」
そうです。
カイは今、ガーゴイルさんの前に立っています。
そしておもむろにガーゴイルさんの腕を取りました。
「あん?」
軽く持ち上げます。
「は?」
放り投げます。
ガーゴイルさんは何がなんだかわからないという顔をして、空中で固まっていました。
そのまま岩壁に激突します。
がらがらと音を立てて、岩が崩れました。
足を投げ出し、逆さまになったガーゴイルさんは、つるりとしたお尻をこちらに向け、股の間からカイを見つめました。
「て、てめぇ……。なにもんだ?」
もう1度いいましょう。
ガーゴイルさん、おはようございます。
通訳ロボット『カイ』です。
カイは頭を下げました。
自動的に、です。
超シンプルな描写でまとめてみた。
明日も7時に投稿させていただきます。
よろしくお願いします。




