File12 お別れです。
第4章第12話です。
よろしくお願いします。
「まさか産声で炎を吐くとはねぇ」
避難した助産師さんが戻ってきました。
はい。そうです。
「なら、もうちょっと早く言いな。そういう大事なことは」
すいません。今の失敗を記録して、データを反映します。
「そんな小難しいことを言わなくても、反省するっていやいいんだ」
助産師さんはこつんとカイを叩きました。
そして笑って許してくれました。
とても優しい人類さまです。
1度失敗しただけで、廃棄するユーザー様もいらっしゃるのに……。
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!」
大きなドラゴンさんは雄叫びを上げます。
すごい声です。大気が震動しています。
「ひぃいいいいいいいいいいいいいい!!」
赤ん坊ドラゴンさんも負けじと声を上げます。
とても元気です。
ドラゴンさんはゆっくりと動きました。
産まれた赤ん坊に近づいていきます。
感動の親子初対面です。
鼻先を向けると、赤ん坊さんは「ひぃひぃ」と甘えるように声を上げます。
ドラゴンさんは大きな舌を出します。
赤ん坊をペロリとなめました。
それを見ながら、助産師さんは泣いてます。
他にも村の人が泣いていました。
カイも泣いた方が自然でしょうか。
人類のみなさまが、出産に際してとても感情的になるのはデータでわかっていますが、カイはロボットなので理解できません。
しばらく親子の戯れが続きました。
産湯を使って、助産師さんが中心になりながら、赤ん坊ドラゴンさんを拭いてあげます。
徐々に赤ん坊の皮膚が、赤から赤茶色に変わっていきます。
目はまだ開いてないですが、お母さんがいる場所はわかるようです。
1時間ほどそうしていると、ドラゴンさんは赤ん坊を食べてしまいました。
え? 嘘は言ってませんよ。
ただ口の中に、赤ん坊さんを入れたのです。
ちゃんと赤ん坊さんは生きてます。
口の中で「ひぃひぃ」と叫んでいます。
ドラゴンさんはカイたちの方へ向き直りました。
『世話になったな。人間たち』
カイは通訳します。
「別に私たちがなんもしてないよ。あんたと、この子が頑張ったおかげさ」
助産師さんはカイの肩に手を置きます。
『異界の人形よ』
はい。
『そなたにも世話になった。無事に赤子を産むことができた』
カイはロボットです。
人類のみなさまに奉仕することが役目です。
人類のみなさまが困っていたから、ドラゴンさんを助けただけです。
ドラゴンさんは「はっはっ」と声を上げました。
どうやら笑っているようです。
『そなたは本当に変わっているな。何かお礼をさせてくれ』
お礼なんてとんでもありません。
カイは頭を振りました。
『ドラゴンは気高い生き物と同時に、恩を忘れぬ。ならば、困った時私の名前を呼べ。お前がバーラントのどこにいても駆けつけよう』
バーラント?
『この世界の名前だ。覚えておけ』
記録しました。ありがとうございます。
ところで、お名前を聞かせてもらえますか?
『ゾルドだ』
はい。記録しました。
赤ちゃんの名前はどうしましょうか?
『赤ん坊の名前は向こうが決めることになっている』
では、次にお会いした時に記録します。
『ふん。そなたは本当に変わっているな』
そうでしょうか?
カイはロボットだからですかね?
『では、カイ……。また会おう!』
ドラゴンさんは大きな翼を広げます。
それだけで辺りが真っ暗になるほどの大きさでした。
お口の中で、赤ちゃんドラゴンが「ひぃひぃ」と声を上げていました。
言葉はわかりませんが、「さようなら」と言っているような気がします。
ドラゴンさんは大きく羽ばたきました。
猛烈な風が辺りの大気をかき混ぜます。
焚き火が一気に消えてしまいました。
ドラゴンさんの巨体が浮きます。
何度も羽ばたき、東に向かって飛んでいってしまいました。
ドラゴンさんともお別れです。
カイは大きく手を振りました。
さようならです。ゾルドさん。
また会いましょう!
ドラゴン編はこれにて終了です。
お話の切りのところですが、いかがだったでしょうか?
次は21時に投稿します。
よろしくお願いします。




