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File9 ドラゴンさんを叩いてみた。

本日2本目です。


よろしくお願いします。

 人類のみなさま、こんにちは。


 通訳ロボット『カイ』です。


 このやりとりは久しぶりです。


 さて、カイの助産師デビューとなりました。


 頑張ります!


「これからどうするんだい?」


 助産師さんが質問します。


 カイはドラゴンに関する情報を再チェックしました。


 そして指示を送ります。


 えっと……。まずはドラゴンさんを持ってきた棒で叩いて下さい。



 えっ!!



 村の男性の方たちはみな驚いています。


「ドラゴンを叩くのかい?」


 第1村人さんが近づいてきて、カイに確認します。


 はい。そうです。


 出来るかぎり思いっきり。お腹の近くが望ましいです。



 ええっ!!!!



 またみなさまは素っ頓狂な声を上げました。


「そんなことをして大丈夫なのかなあ」


 村人さんは不安そうです。


 しかし、ドラゴンのデータにはそう書かれています。


 ドラゴンは出産の際、(つがい)のドラゴンに腹を蹴ってもらう、と――。


「腹を蹴る?」

「虐待じゃねぇか……」

「ドラゴンは恐ろしいことをするんだなあ」

「なまんだぶなまんだぶ」


 ざわざわと騒がしくなります。


 最後のはなんでしょうか? お経?


 みなさまが戸惑う中、パンパンと手を叩く音が聞こえます。


 助産師さんでした。


「はいはい。お喋りはおしまい。とっととやるんだ、男ども」

「しかし、ドラゴンを叩くなんて」

「そんな恐ろしいこと……」

「バチが当たるかもしれねぇ」

「いや、他のドラゴンに報復されるかも」



「ぴーちくぱーちくうるさいよ、あんたたち!!」



 助産師さんは大声を上げました。


 凄い声です。100dbを記録しました。


 助産師さんは「ふん」と鼻息を荒くします。


「ちゃんと理にはかなってる。人間だって陣痛前にマッサージとかするだろう? それと一緒と思えばいいのさ」


 助産師さんが言うと、後ろで女性の方たちも深く頷いています。


 村の男の人たちは、顔を見合わせました。


 どうしようか、迷っています。


「カイくん」


 振り返ると、第1村人さんが立っていました。


「ドラゴンに聞いてくれるかい。棒で叩いたりしても、怒らないと約束すると。村に報復しないと」


 カイはそのままドラゴンさんに言いました。


 こういってますが、約束してくれますか?


『大丈夫だ。その代わり、遠慮なくやってくれ』


 だ――そうです。


 村人さんはまた他の村人さんと目を合わせました。


「やるのじゃ、皆の衆」


 村長さんが言いました。


 ドラゴンさんの周りに、棒を持った男の人たち集まってきます。


 するとドラゴンさんはいきなり動きました。


 悲鳴が上がります。


 しかし暴れたりするわけではありません。


 ただお腹を村の人たちの方に向けました。


 叩きやすいようにしてくれたのです。


 大きなお腹でした。


「今にも産まれそうだね」


 助産師さんが言います。


 カイも同じ意見です。


 男の人は戸惑っていましたが、意を決して叩きはじめました。


 トントン……。トントン……。トントン……。


 タイヤを叩いているような音がなります。


『もっと強くだ』


 もっと強くだそうです。


 男の人たちは力を込めて叩きました。


『もっとだ』


 もっとです。


 一生懸命叩きました。


『もっともっとだ』


 もっともっとです。


 なりふり構わず叩きました。


 けれど――。


『ダメだな』


 ダメだな……。


 え?


『人間の力ではダメかもしれない』


 人間の力ではダメだそうです。


「そりゃあそうかもね。いつもはドラゴンに蹴ってもらっているんだろ?」


 助産師さんの言うとおりかもしれません。


 ドラゴンさんのキックに比べれば、人類のみなさまがどんなに集まって同じ衝撃を加えることなんて出来ません。


 どうしましょうか……。


『異界の人形よ』


 はい。


『お前がやってみろ』


 カイがですか!?


 ドラゴンさんは頷く代わりに、ふぅと息を吐き出しました。


 とても苦しそうです。


 わかりました。


 カイがやってみます。


 腕を捲ります。


 カイはロボットです。


 それなりに出力はあります。


 ですが、人類のみなさまに危害を加えることは出来ません。


 殴るなんて以ての外です。


 しかし、ドラゴンさんは別です。


 問題なし。オールグリーンです。


 カイはお腹の前に移動しました。


 男の人たちが、道をあけてくれます。


 なんだか強者の気分です。


 人を殴る機能はありませんが、格闘術のデータはあります。


 それを参考に、ドラゴンさんの前で構えました。


 いきます!


 カイは思いっきり殴りました。


 捻りを入れて、スピードを殺さず、最短距離を打ち抜きます。


 パイルを打ち込むような音が聞こえました。


『うぉおおおおお!!』


 ドラゴンさんは声を上げます。


 大丈夫でしょうか?


『大丈夫だ。そのまま続けろ』


 わかりました。


 カイは言われたとおり、拳を打ちました。


『のぉおおおおおおお!!』


 打ちました。


『お、おおおおおお!!』


 打ちます。


『きくうぅうううう!!』


 打つ!


『ぐおおおおおおおおおおおおおお!!』


 一際、大きくドラゴンさんは大きな声を上げました。


 すると――。


 何か破裂したような音が聞こえました。


 気が付くと、カイの下の地面が水浸しになっていました。


「は、破水だ!」


 助産師さんが叫びます。


 検索します。


 1件ヒットしました。


 はすい【破水】 〔名〕(スル)胎児や羊水の入っている卵膜が破れ、羊水が排出されること。ふつう分娩に際して起こる。


 カイは自動的に首を傾げます。


 どういうことでしょうか?


「つまり、もうすぐ産まれるってことさ! 見な!!」


 助産師さんが指をさします。


 下腹部のさらに下に、いつの間にか穴が空いていました。


 そこから白くつるりとしたものが出ています。


 ぬらぬらテカテカと光っています。


 まるでそれは――。


 卵のようでした……。


次は19時に更新します。

よろしくお願いします。

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