クリスマスの奇跡
二作目です。どうぞ!!
今日はクリスマス
街はイルミネーションで輝いていて家族や恋人達であふれている
義樹は人ごみに外れたベンチに座っていた。
凍えるように寒かったがクリスマスはいつもこの場所で人ごみを眺めていた。
義樹はあの出来事を思い出した。
「とうさ〜ん!」
義樹は小さい頃から父が大好きだった。
休日も仕事から帰ってきて疲れているはずなのに毎日のように遊んでくれる父が大好きだった。
そして義樹の1番の楽しみがクリスマス。
父はいつもより少し遅く帰ってくるとサンタのかっこうをして玄関から入ってくる。
「メリ〜クリスマス!!」
義樹は父に飛びついた。
「義樹君!いい子にしていたかな?」
サンタの父は義樹を見た。
「うん!!」
義樹は元気よく頷き答えた。
父は優しく義樹の頭を撫でた。
「じゃあ、はい。プレゼント」
義樹はニッコリ笑い言った。
「サンタさん、ありがとう!」
義樹はプレゼントをもらい居間へと走っていった。
父もサンタの格好を着替えるために玄関を出ようとするとまだ料理をしていた母が出てきてこっそりと言った。
「タマゴが足りないの。外に出るついでに近くのスーパーで買ってきてくれません?」
ケーキはいつも母の手作りと決まっている。
「わかった」
父は優しく言い玄関を出て言った。
母は料理が完成し一息入れた。
「よし。あとはケーキのみ」
すると電話が鳴った。
母は、玄関の廊下に行き電話に出た。
義樹はプレゼントを開けた。
中には義樹の好きな戦隊ヒーローのロボットが入っていた。
義樹は嬉しくなり遊び始めた。
しばらくすると母が急いで着替え始めた。
「義樹!ちょっと家出るから静かに遊んでてね!」
優しく言う母の目は今にも泣き出しそうだった。
バタン!!
母は家を出た。
義樹は訳が解らず黙っていた。
しばらくすると玄関が開く音が聞こえた。
そして居間のドアが開いた。
そこには父がいた。
いつもなら義樹を見て最初にニッコリ笑ってくれるはずなのに少し暗い。
父はゆっくりと義樹に近づき、義樹の隣にあぐらをかいた。
「父さん。どうしたの?」
父は無言のまま義樹の持っていたロボットを取り上げロボットの後ろ部分をいじり始めた。
義樹が黙って見ていると父はやっと口をひらいた。
「義樹……ごめんな。最後まで一緒にいれなくて」
ロボットに父の涙が落ちた。
ロボットを置くと父は義樹を見た。
義樹は初めて父の涙を見た。
「信じられないかもしれないけど父さん、車にひかれて死んじゃったんだ。でも死ぬ前に家族に会いたいって言ったらサンタさんが連れて来てくれたんだ」
父は溢れ出る涙をこらえて続けた。
「義樹。もう父さんいないけど、母さんと楽しく暮らすんだぞ!
母さん自分のせいだって悲しむから義樹が父さんの分まで支えてやってくれ……」
父は涙をこらえきれず義樹に抱きついた。
「お前にもっといろんなこと教えてやりたかった。成長したお前を見ていたかったなぁ」
父はずっとずっと義樹を抱きしめた。
義樹は信じられなかった。
父はここにいるし温もりも感じるのにいないなんて。
しばらくすると義樹の肩を優しくつかみ、まっすぐに義樹をみた。
「強く生きろよ、義樹。母さんを大切にな。父さんの最後の頼みだ。わかったな?」
義樹は頷いた。
父はやっと義樹にニッコリとして頭を撫でよとした。
しかし、手が義樹をすりぬけた。
「もう時間だ。今まで楽しかったぞ。父さんとの約束守るんだぞ」
父は立ち上がり居間のドアを開けた。
「父さん。行かないで」
父は足を止め振り返り義樹に言った。
「父さんはいつもずっと義樹の側にいるから」
父はもう一度ニッコリと笑いドアを閉めた。
あの時なぜ自分は泣かなかったのか不思議に思う
あれから15年。
義樹は毎年、クリスマスはこのベンチに座っている。
あのあと父の事故にあった場所がこの通りで家族三人で暮らしていた家も見えるのがこのベンチだった。
ここにいると近くに大好きな父さんがいるような気がする。
とくにクリスマスの日は
義樹はバックからある物を取り出した。
それは父が最後のクリスマスにくれたロボット。あの日から大事にしまってあったのを持ってきた。
ロボットを眺めていると、後ろのパーツが外れて雪の地面に落ちた。
もう15年も経ってるからなぁとパーツをひろいあげ、ロボットのうしろ
をみると中に紙が入っていた。
義樹は紙を取り出し半分に折れた紙を広げた。
大切な母さん、義樹へ
ありがとう
父より
父の字だった。
義樹は頬に涙が伝うのを感じた。
涙が出ないようにと顔を上げた。
小さな雪達が降る星空にトナカイのソリに乗ったサンタが走っていった
ありがとうございました。