力と決意
――人は、少なくとも誰かの『幸』を望んでいる。
それに否定を加え『不幸』もだ。
例えば、親や友人。自分に『幸せ』を与えてくれた者には『幸せ』を与えたくなる。望む。
そして、『不幸』もその逆で自分に最悪や傷つけた、『不幸』を与えた者には、ある程度の『不幸』を与えたくはなる。望む。
人は、色々な意味で何かを返したくなる生き物なのだ。
僕は、そんな人間の心を増幅させるモノ。いや、装置なのだ。
ここで装置という言葉にしたのには理由があってのことだ。
人にはそれぞれ感情を感情で押さえ込むリミッターがあるのだと、僕は考えた。
例えば、そう。
――人が人を衝動的に殺したいと思っても、その衝動を制御する感情があるのだと。
僕はその制御する感情をリミッターの解除装置なのだ。
そういう役目を果たしている。
それを聞くと、僕は人間の感情のコントロールを出来る宇宙人やら超能力者と思う者もいるだろうが、そうではない。
ただの人間だ。
人の感情をコントロールするのは、さほど難しくなかった。
僕はある日、こう思った。
『言葉や文字には人を殺せる能力、力がある。』
そう思うだけで、僕はその日、自分の手を汚さずに人を殺めた。殺められた。
――世界は、ありとあらゆる感情を抑え込み過ぎて窮屈になっている。
窮屈で息をするのも今では苦しい。
――僕が、世界を変えてみせる。転覆させるよ。