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黒犬ツアーへようこそ  作者: 緋龍
愛が彷徨う国イシュアヌ
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七日目……次の目的地を決めてみる

「はい?」


 首だけ動かしてレヴァイアを見る。このパターン、さっきもあった気がする。


「どこへ行く」


「どこって、用が済んだのでここから去るんですが」


 当たり前のことを訊くなぁ、と思っていたらぎろりと睨まれた。な、なんで? 質問にちゃんと答えたのに。


「ここを出て何処に行くのか訊いているんだ」


 ああ、そういうこと。ちゃんと言ってくれないと分からないっての。

 私たちの次の目的地ね、はいはい、えっとねえ……何処だろう? 何にも考えてないよ。

 とりあえず雷華たちに会うという目的は果たしたし、レヴァイアも助けられたし、あとやりたいことって何だろう? うーん、ぶらぶら観光しながらストーキング? ってどんな類の変質者だ、私は。

 でもまあつかず離れず雷華たち一行を見守って行くのが一番いいのかな。正直、気になるしね。

 ということは、


「……北?」


「何故疑問形になる」


「イシュアヌの王都に行くつもりですけど、その道のりをどうするかは決めてないので」


 翼竜に乗ればすぐに行けるけど、それじゃあ面白くない。せっかくだからいろんな町をみないともったいないわ。だから移動はリウじゃなくて地竜にお願いしよう、うん。

 それにしても、どうしてレヴァイアは私の行先なんか気にするのかしらね。何か頼み事でもあるのかな。


「……墓に、行ってくれないか。リムダエイムにある。場所は……孤児院で訊けば教えてくれるだろう」


「何故私に言うんです?」


 墓って、当然フェリシアの墓のことよね。行くのは構わないけれど、何で頼まれるのかしら。


「俺にはもう行く資格がない」


 顔を歪めてレヴァイアは視線を地面に落とす。

 はぁ? 資格がないぃ? 何を訳の分からないことを言い出すんだこの人は。突然のネガティブ思考ですか? 私の話ちゃんと聞いてました? あんたの顔なんか二度と見たくないとか言いましたっけ? 言ってないですよね。幸せに生きて欲しいってフェリシアが言ってるって言いましたよね。

 

「お墓参りするのに資格も何もないでしょう」


 お礼参りなら別だけど。……なんて冗談通じないだろうなあ。


「もし自分のしたことを後悔しているのならお墓の前で謝ればいいんです。……フェリシアさんは貴方に謝ってほしいなんて思ってないと思いますけどね。じゃあ私はもう行きますから。あ、お仲間のところに行くつもりならそこの湧き水で顔を冷やしてからの方がいいですよ。目元、赤いです」


 それじゃ、と片手を上げて歩き出す。呼び止められるかと思ったけど、声はかけられなかった。まあ、何か言われたとしても止まるつもりはなかったけど。

 やれやれ、弱気なレヴァイアなんて調子狂うったらないわ。元最強の賞金稼ぎでしょうに。


「きゅきゅ、きゅ?」


「レヴァイアを放置して良かったのかって? 大丈夫でしょ、ちゃんと仲間がいるんだし」


 すたすた瓦礫の町を歩いてリウのところに戻る。なんだか少し視界が明るくなったようなと視線を上げれば、東の地平線から太陽が顔を覗かせていた。


「あー、もう朝だよー。眠いぃぃ、でも野宿したら身体が痛いし……あ、ナナこれ返しとくね」


「きゅっ!」


 欠伸しながらリュックサックから水筒を出そうとして、紐に括りつけていた蒼色のスカーフが眼に入った。それで思い出した。ナナの装備品、針とマントを取り上げたままだったことを。

 マントをつけてあげると、彼女は嬉しそうにくるりと一回転してポーズを決めた。


「ぷはー、美味しい。でもぬるいのがちょっと残念」


 水分を補給したことで少しだけ眠気がとんだ。ナナにも水をあげて水筒をしまうと、改めてこれからどうしようかと考えた。


「ねえナナ、これからこの国の町をいくつか回って、それからリムダエイム……王都に行こうと思うんだけど、どうかな?」


「きゅー……きゅ」


「異論ないのね。じゃあ、とりあえずどこかの町に行って寝よう。ここから一番近い町はシュローグランだけど……雷華たちと鉢合わせになるから駄目ね。南下してサルテ村に行くのがいいかな」 


「きゅっ」


「決まりね。リウ、お願いできる?」


 猫のように喉を鳴らすリウ――音は雷のようだが――によじ登り、しっかりとナナを腕に抱く。ポンポンと硬い背中を叩くとリウは翼を広げゆっくりと浮上した。

 サルテ村はマーレ=ボルジエとの国境に一番近い村で、北に位置するイシュアヌの王都リムダエイムとは反対方向になる。


「急ぎの用があるわけでもないし、別に問題ないわよね。今日一日サルテでのんびりしよっと」


 何か美味しい食べ物はあるかな、などと欠伸しながらこれから行く村のことを考えた。

 遥か彼方の地平線からゆっくりと朝陽が昇っていく。何度見ても飽きない、言葉では表現できない素晴らしい光景。

 今日も変わらずこの世界は美しかった。

 

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