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親父のばかやろー

「で、君は一体誰!?」

 僕はさっき投げたクッションがぶっ倒したカップヌードル・シオのスープと麺をフキンで拭きながら尋ねた。

 クッションにはスープの香ばしい臭いが染み付いて取れない。

 僕はあの後、とりあえずダンボールを片付けて、台無しになったカップヌードルの代わりに、新しいやつにお湯を入れて蓋をした。

 零れたラーメンは後でいいか…って思ってたら、ついさっき、クッションまで甚大な被害を受けていたことに気が付いたのだ……うぅ…。

 僕は後ろでボーっと立ってる女の子を気に掛けながら、とりあえずはカップヌードルを片付けることに成功した。

 女の子に向き直り、ソファに誘導して座らせる。僕も向かいに座って、さぁ戦闘開始だ。

「で、訊くけど君は誰?」

「…なつね…葉月夏音はづき なつね…」

「……オーケー質問を変えようか。君は何者?」

「…ん」

 僕が、尋ねると、女の子改め葉月夏音は、着ていたパーカーのポケットをゴソゴソと漁り茶封筒を取り出した。

 僕にそれを差し出すと、「読んで」と一言。

 ……嫌な予感しかしない…。

 僕が受け取った茶封筒を開けると、中から出てきたのは案の定、親父からの手紙…。

 そいつが言うにはこういうことだ…

『ヤッホー我が自慢の息子よ。ちょっと遅めの私からの誕生日プレゼントは気に入ってくれたか?』

 無駄に軽い親父…。

 ちなみに僕の誕生日は4月5日とかなり早く、今は5月上旬だから確かに遅めだ。

 ………でっ!?誕生日プレゼントって……まさか……

『と、まぁ冗談はこの辺にして、いきなりだが、お前その子預かれ』

 殺すきか!!

『そう驚くなよ。ちょっとこっちで俺と同じように日本に子ども置いて仕事してるナイスガイと仲良くなっちまってな。 そいつがさ~、その子が心配だから俺の息子、つまりまぁお前なんだけど、お前と一緒にくらす訳にはいかねぇかな、って頼まれてな』

ふ、ふざけるなぁぁぁ!!しかもなんで僕が驚いたことが分かったんだ…?

『まぁ良いじゃねぇか。お前だって男なんだから、女の子と一緒に暮らせるなんて夢のシチュエーションだろ? ちょっと変な子らしいけど、お前も十分変だから上手くやれると思う。二つの意味でやれるとおもう(笑)』                                          HAHAHA、勘違いしてんじゃねーよ。殺すぞ。                                     『殺されねぇよ』                                                      「………これって手紙だよな…?」                                             『まぁそいつがいくらか手続きは終わらせてるから、そっちの学校にも通わせられる。問題は生活費だけなんだだが』

「だけじゃねぇよ!他にも色々あんだろ!僕の尊厳は!?プライベートは!?」

『んなもんねーよ。で、問題は生活費だけ!なんだが、ちょっと仕事で成功してな、今月から仕送りがアップするから頑張れ!大丈夫大丈夫、母さんもお前はしっかりしてるから大丈夫よ~って言ってたもん』

「母さん!?なんで止めねぇんだよ!?こいつのこんな愚行を!アンタが止めなきゃ誰が止めるんだよちっくしょぉお!!」                                                       『で、なんでダンボールで送ったのかというと、そっちの方が安いって思ったんだと。

あぁそれと、学校の制服とか私服とか靴とかは、そのうち届くと思うから買うなよ。

まぁ俺と母さんはこっちでニャンニャンやっとくから、お前はその子とニャンニャンしてろよな!じゃ、そーゆーことで!』                                                            安いからって、ダンボールで人をいれるなよ、おい。

 あぁ…僕の平和な日常が……それなりに楽しかった生活がぁぁ…!!

 あ?なんだよお前!このシチュエーションが羨ましいって言うなら、それは大きな間違いだぞ!!

 実際にこんなことになったら、お前だって泣きたくなるんだぞこんにゃろー!!

「…どうしたの?」

「……いや…なんでもありませんよ…」

 そうだ…この子に当たっても意味はないし、                                      この子だって突然のことで驚いて………あれ!?

「…君さぁ…このこと納得したの?」

 僕が睨みながら訊くと、葉月はコクンっと小さく頷いて…。

「……良いのか?」

「…なにが?」

「…この家で…」

「良いよ」

「………あそう…」

 勿論のことながら、もう来てしまった以上、追い出すわけにはいかない。

 交通費を気にしたってことは、けっこう遠くから来たんだろう…。

 待てよ……そうするとこの子は…。                                     ‘グー……’

  やっぱり……。そりゃあ何も食ってねーわな…。恥ずかしそうに腹を押さえる葉月。

 まぁ僕も昼から何も食ってねーけど…この子と比べると可愛いもんだ…。仕方ない…。

「…ラーメンでも良いか?」

「…いいの?」

「仕方ねぇもん…」

 僕はもう3分以上経ってとっくに伸びてるような本日2杯目のカップヌードル・シオの蓋を開け、台所から箸を持ってきてその子に渡した。

 葉月は嬉しそうに箸を受け取ると、なんとも美味しそうな音を立てて、ラーメンをすすり始めた…。

 あぁ…腹減ったな…あ、そう言えばもう1個あったっけかな…。

 でもな…とりあえずこのまま一緒に暮らすにしても暮らさないにしてもどうせ暫くはこの家にいることになるんだろうし、今はこの子に色々と留意点を教えておかなければならないわけで…。

 つまりは寝る部屋と、当然家のことも手伝ってもらうから、家の中のことを説明しないといけない…。

 要するに、俺が飯食ってる時間なんてない…。はぁ……。

 ‘グー……’

 あぁ…鳴っちまったよ僕の腹が…。もう良いや…早く説明して風呂入って寝よう…。

 きっとね!寝たら何でも忘れられるさ!それに、もしかしたら夢だったみたいなこともあるかもしれないもんな!

 と、無理に明るく振舞ってみたものの、空腹感が消えるはずはない………はぁ……。

「ん」

「え?あぁ食べ終わった?」

「うん」

 僕はまた小さく頷く葉月から箸とカップを受け取り、台所に適当に置いた。

「さて、じゃあまぁ……家の中説明するから付いて来て…」

「うん」

 僕は台所へ行った足でまず、風呂場へ向かった。

 で、葉月もトコトコと付いて来る。

「ここが風呂場な。シャンプーは僕が使ってるアレと共同だ。文句は?」

「ない」

 うんうん、思ったより物分かりが良いようで、お兄さんは嬉しいよ。

 …あれ…?そういや葉月って……

「ところで…君って何歳?いや、何年生?」

「高2」

 あぁ一緒か……。意外だな、一つくらいは下かと思ったけど…。

 まぁそれはさて置いて、僕達は次に台所へ戻る。

 風呂を沸かすところは台所にあるから、そっちの説明をして、沸かし方を覚えてもらわないといけない。

「ここで風呂が沸かせる。この緑を押して、お湯の温度は41度ね」

「……40度がいい」

「ダーメ、僕は41度が好きなの」

「…………わかった」

「…………あぁー!いいよ40度で!その代わり!風呂沸かしは君の仕事だからな!」

「……ありがと」

 まったく…あんな露骨にガッカリされたら折れるしかねぇだろ…。

 さっきも言ったが、厄介なことに葉月はかなりの美少女であり、そんな子を悲しませられるほど、僕の神経図太くない…。

 そして僕達は2階へ。

 2階には僕の部屋と、使ってない部屋が2つある。

 横に並んだ3つの部屋のうち、僕の部屋は向かって左の部屋だ。

 つまり、常識的に考えれば、葉月の部屋は一個空けて右だな。

「じゃあ、君はこの部屋使うこと。ベッドは……まぁ明日出すから、今日のことは後で考えるとします」

「………あなたの部屋は?」

「え?僕の部屋は一個飛んであそこ」

「……隣がいい」

「はい?」

 なんか知らんがおかしなことを言いだす葉月。

 なんか無口なくせに、自分の思ってることはしっかり言うね…。

 とか、問題はそこじゃないんすよね…。

「え~と…なんで?」

「…寂しい」

「寂しくない!普通は男女の部屋は隣にしないだろ?」

「……寂しい…」

「うっ………はいはい分かりましたよ!」

 僕は仕方なく承諾して、葉月を真ん中にの部屋に移動させた。

 どうやら気に入ったようで、一応だけど置いてある机とイスを色々と触ってる。

 ところで……このギャルゲみたいな展開…このまま続くのだろうか…。


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