なぜか成り行きで女友達と帰ることに… パート2
おかしなことになった…。
友達と言っても、僕達は家もちょっと近いだけで、一緒に登下校みたいなことは殆どなかった。
だけど、今僕の隣には奈々がいる。不思議な感じだ。
僕達はあの後、校門を出て家に向かっていた。この学校、桜ヶ咲高校は、家からも近く、歩きで通える位置にある。
「あーあ、いいなリア充は~」
「リア充の何処がいいんだよ?」
「そうじゃなくってね、恋人がいるのが羨ましいの」
なーるほど、そういうことね。
奈々もお年頃だ。僕みたいな感性を持っていない限りは、奈々だって恋人ぐらいは欲しいわな。
でも、奈々だってなかなかの美少女で、こいつを好きってやつも何人かいたはずだ。
「じゃあ今度告白してきたやつがいたら、OKしちゃえばいいじゃん?」
「そんなの駄目だよ!!」
「ん?なんでだよ?待つのが嫌なのか?」
「そ、そうじゃなくて……」
なんか知らんが言葉を濁す奈々。
確か奈々に告白してきたやつの中には、けっこうモテるやつもいたんだけど、奈々は今まで全部の誘いを断ってる。理想が高いのかもな。
「なんだよ?好きなやつでもいんの?」
ちょっと冗談半分で訊いてみた。
そう言えば、こいつとこんな話なんて全然しないから、僕は今、奈々の恋愛状況を全然知らない。知ってるのはフリーだってことだけ。
「えっ!いや…別に…そんな…」
あれ?もしかして図星か?
否、この反応は間違いなく図星!これは聞きだすしかない!
「いるのか?いるんだな?誰だ?なぁ誰だ?」
「え…いや…あのね…その…」
「なんだよ~。教えてくれよ~」
「…い、いいよ…」
おぉ…意外だ…。まさかマジで教えてくれる流れになるとは…。
ちなみに、僕は自分で興味がない分、こういった情報を集めることは大好きだ。
なんてったって、僕には弱みってもんが全くないから、修学旅行とかで恒例の「俺言ったらお前も言えよ!」みたいな取引も、僕は嘘を吐くことなく相手の情報だけを聞くことができる。
まぁ、その後でけっこう危険な目に遭ったりしてるけど…。
「…私の好きな人は―」
「あ~っ!!」
「きゃっ!…どうしたの…?」
「今日アレだった!」
「アレ…って?」
「アレだ!ほらあの~…そう!タイムサービス!」
そう、今日は近所の激安スーパーのタイムサービスの日だったのを、すっかり忘れてた!
「今説明してる時間はないからザックリ話すけど、僕の親は2人ともヨーロッパで働いてて、僕は家に一人暮らしなんだ。つまり、家のことは全部自分でやらないといけないわけで…」
確かに仕送りで十分な金は貰ってるけど、節約は大事なのだ。
んで、タイムサービスは本当に俺のお財布のマブダチなので、今日は何としても食材を調達しなければなららい、いや、ならないのだ。舌が回らないほど焦ってます。
「今何時だ!?くっそ!!」 時計を見ると、現在5時20分。よし、まだ10分ある。これならギリギリまにあ…あーっ!!
僕がそう思った瞬間、スマホの画面の数字は21に変わった。やられたっ!
ここから9分はきつい!!が、当然の如くそんな弱音を吐いてる場合じゃない!
駅がある方へ向き直ると、スマホをポケットにしまって全力で駆け出した。
奈々の好きなやつの話はまた今度ってことで!!
「悪い奈々!俺行くとこあるの忘れてた!!じゃな!!」
「あっ…うん…」 *** 「はぁ…せっかく一緒に帰るとこまでいったのになぁ…」
わたるは鈍感…。私の気持ちにも全然気付いてくれない。
だから、私は決めたのよ!なんとかして、自分から気持ちを伝えると!
…で、今日は実はその実行予定日だったの…。
でも、結果はこの通り。せっかくわたるがナイスな質問までしてくれたのに……。
でもっ!私は諦めないの!
だってわたる、モテるからもたもたしてちゃ誰かに盗られちゃうし…。
『恋は早いもの勝ち』なんかのマンガで読んだ言葉。私はこの言葉に誓って、わたるに告白するのっ!!
また今度にね…。