拝啓、お三方
ネーヴェさん、ディラノさん。旅先でお元気でいらっしゃる?
あのね、シシリはね、とっても明るくなりました。
あの広場が、それはそれは、たくさんの人であふれかえって。
そこでお仕事してくださる人も、日に日に増えて。
そうそう、帰ってきたらおいしいものを差し上げますわ。
わたあめ、というのです。
ふわふわの、やわらかな、とっても甘いお菓子なんですよ。
あれをね、作ってみようって話になったら、ナティマから来た方が協力してくれたのです。
お名前はネバさん。お顔はちょっぴり怖いけど、とってもいい方ですの。
器に穴を空けたものを作りましてね、そこにお砂糖を入れて温めましね。
せーの、で器を思い切り回すと、ふわっとした糸が出て来るのです。
それを、くるくるっとみんなで巻き取って食べるのですよ。
今では、定刻になると鐘の音がして、それを合図に作るのが恒例になりました。
ねえ、ネーヴェさん。前に、こっそり打ち明けてくださいましたよね?
この国はなにもないから、って。
とてもとても、寂しそうなお顔でおっしゃいましたよね。
なにもないなんて、とんでもない。
どうか、胸を張って下さいな。
資源がなくたって、雪が多くたって、見るものがあるじゃありませんか。
こればかりは、シシリのみなさまのおかげです。
ふるさとがどうやったら綺麗に見えるか、どこが自慢できるか、それを何より知っていらっしゃるから、こんなにも人が来る場所になったのです。
わたくしは考えるだけ。作ってくださるのは、いつだってみなさまなのですよ。
景色ってね、そこにしかないのです。
だから人が来るのです。資源もなあんにもいりません。
そりゃあ、ちょっとは新しいものを考えましたよ。景色のついでに楽しんで下さるようにって。
それで……その、竹馬とか、凧とかでシシリのお子様が遊んでいらっしゃるのは、ちょっぴり不思議な感じがしますけど。
お隣の国は、とてもとても大変だと聞いております。
どうか、喧嘩なさらずに、仲良く帰って来てくださいませね。




