砂の海
800字ぐらいに収めたいなーと思い書き始めました。
「あぁ娘に会いたい」
そんな言葉が、唇から離れてすぐ、男の気力とともに蒸発していった。
もう何時間、彷徨っているのかわからない。乗っているラクダはまだまだ元気そうだけれど、今日はやけに揺れる。男の方はラクダ酔いと暑さでヘトヘトだ。一体いつまで彷徨えばいいのだろう。唾を飲み込もうとしてむせた。男には飲み込むだけの唾も残されていないのだ。水が欲しい。どこかにオアシスがないだろうか。今すぐ冷たい水の中に飛び込みたい。いっそこの砂が全部水に置き換わればいいのに。あたり一面砂しかないここは、砂の海だった。砂が風に吹かれて波打っている。
「本当の海みたいだな」
そう言うと、海の香りがしたような気がした。
男は急いで辺りを見渡した。当然、海があるはずもない。これは幻覚なのかもしれない。しかし、海への希望は捨てきれず、風が吹いてきた方向に進んだ。
どれほど進んだだろう。依然として地平線から海が顔を出すことはなかった。こんなに進んで、ないということはさっきのは幻覚だったのだろう。そう思うようにした男には、波の音さえも聞こえるようになっていた。
海は見えない。それでも、すぐそこにあると信じていた。あそこの丘を越えれば海があるはずだ。娘と海へ行ったことを思い出した。娘が待っている。海と家族への渇望が男を駆り立てた。初めてラクダを降りたいと思った。気づいたら走り出してる。
丘を超える。思わず飛び上がった瞬間に、体への強い衝撃を受けた。必死に手を動かして泳ごうとするが、一向に進まない。意識が遠のいていく。砂に溺れていく。
お父さん、お父さん。目を開ける。開け放たれた窓から嗅いだことのある匂いがした。
「もうすぐで着くよ」
娘の声だ。
「海はどこだ」
「あなた何言ってるの?」
妻が笑う
「ずっと、海の上に浮かんでるじゃない」窓の外には砂が波打ってる気がした。
書いてる途中何回も星新一読み直しました。夢オチが、ありきたりすぎるのはわかっています。
初めてなので多めに見てください。




