祖父の猟銃は山神を撃たない──山神の婿
最初に鹿を見たのは、俺ではなかった。
仙台駅東口の地下駐車場で、深夜巡回をしていた警備員が見たのだという。三番ブロックの柱の陰に、鹿が立っていた。都会の地下駐車場に鹿がいること自体おかしいのに、もっとおかしかったのは、その鹿が二本足で立っていたことだった。
しかも、顔が女に見えた。
警備会社の内輪で気味悪がられているその話を俺が知ったのは、大学の研究室だった。民俗学専攻の院生が集まる共同室では、怪談めいた噂ほど妙に早く回る。都市伝説、再開発地の地名、消えた祠、埋められた水脈。そういうものを面白がる人間が多いせいだろう。
「また鹿か」
先輩がスマホを見ながら言った。
「河原町の方でも出たって。今度は広瀬川沿い」
「本物の鹿ですか」
「さあな。防犯カメラが変なんだよ。四つ脚で映ってるフレームと、立ってるみたいなフレームが混じる」
画面を見せてもらうと、たしかに奇妙だった。粗い夜間映像の中で、白っぽいものが移動している。止めた瞬間によっては鹿の背の線にも見えるし、女が長い髪を垂らして立っているようにも見えた。
「都市怪談としては出来すぎですね」
そう言った俺に、先輩は笑った。
「お前、こういうの好きだろ。地名と信仰で一本書けるじゃん」
そのときは、俺も適当に笑っていた。まさか数日後、その鹿の話が祖父の遺品と繋がるとは思ってもいなかった。
祖父が亡くなったのは、その翌日だった。
八十七歳。死因は老衰。実家からの電話は淡々としていたが、母の声は少しだけ掠れていた。葬儀のため、俺は仙台市内のアパートを出て、宮城県北の実家へ戻った。
祖父は山の人間だった。
若い頃は猟をしていたと聞いている。ただ、俺は祖父が獲物を解体している場面も、鹿や熊の話を誇らしげにするところも、ほとんど見たことがなかった。山へ入る日はあったが、帰ってくると銃を拭き、仏壇の前に座り、酒を少しだけ飲んで黙る。子どもの頃の俺には、頑固で静かな老人にしか見えなかった。
通夜も葬儀も滞りなく終わった。親族が帰り、家が急に広くなった夜、母が押し入れを見上げて言った。
「悪いけど、明日、少し片づけるの手伝って。銃のこともあるし」
「銃、まだ残ってるの」
「あるよ。許可は切ってるけど、処分の手続きしないと」
翌日、俺は祖父の部屋に入った。日当たりの悪い六畳間で、畳には家具の跡が濃く残っている。仏間の脇の押し入れには、古い衣類、山道具、木箱、帳面がしまい込まれていた。生活の残りというより、時間そのものが押し込められているようだった。
銃はすぐに見つかった。長く使い込まれた猟銃で、黒い銃身には手入れの跡がある。だが、俺の知っている猟銃より細工が細かい。銃床の内側に、見慣れない彫りがあった。丸と線が組み合わさった、記号のようなものだ。
「それ、あまり触らない方がいいよ」
母が言った。
「なんで」
「おじいちゃん、それだけは人に触られるの嫌がったから」
「もう遺品だろ」
「そうだけど」
母はそう言って、それ以上は何も言わなかった。
押し入れの奥から、鹿の角が出てきた。立派なものではない。片側だけで、根元に布が巻かれている。その下に、黒い手帳があった。ビニール表紙が剥がれ、角が丸くなった、小さな大学ノートほどの帳面だった。
開いた瞬間、少しだけ背筋が寒くなった。
中身が、猟の記録には見えなかったからだ。
日付。月齢。天気。山の名。地名。そこまではわかる。だが、その横に並ぶ文字列が変だった。
春降
怒
静
婿役
山神鎮
それから、何度も出てくる一文。
――山神は撃つな。
ページを繰るたび、同じ文言が現れた。強く書いた日もある。薄い日もある。墨でなぞったような頁もある。まるで自分に言い聞かせるように、祖父は何度もその言葉を書いていた。
「これ、何」
思わず口にすると、母が覗き込んできた。
「その手帳もあったのか」
「知ってたの」
「知ってたけど、中は見たことない。おじいちゃん、山のことは家で喋らなかったから」
「猟の記録じゃないよ、これ」
「だったら、なおさら分からないね」
母はそう言って立ち上がり、襖を閉めた。あまり近づきたくない、という態度だった。
その夜、実家の座敷で手帳を読み返した。途中から、記録にある山の名前が一定の範囲に偏っていることに気づいた。船形山、その支尾根、麓の集落名。いくつかは今も残っているが、もう使われない小字も混じっている。
こういうとき、民俗学をやっている人間の頭は妙に早く切り替わる。まず資料として見る。次に、言葉の反復に意味を探す。山神。婿役。鎮。東北の山神信仰。猟師。禁忌。
やがて一つの連想に行き着いた。
山の神は女である。
東北では珍しくない話だ。嫉妬深く、怒りやすく、山に入る人間に多くの禁を課す。猟師のようにその領域へ踏み込む男は、ときに山神の夫や婿のように語られることがある。
黒い手帳を見る。
――婿役 継
首筋を、いやな冷たさが這い上がった。
翌日、仙台へ戻る前に、祖母の代から近所付き合いのある家を何軒か回った。葬儀の礼も兼ねていたが、本当は祖父のことを聞きたかった。昔、祖父はどんな猟師だったのか。
答えは、思ったより曖昧だった。
「腕はよかったよ。でも、数を獲る人じゃなかった」
「山見て帰ってくる日も多かったな」
「獲物より、祠の方を気にしてた」
「船形の方入るときは、必ず酒持ってったねえ」
祠。酒。
そこで、一番年上の老人が懐かしむように言った。
「お前んとこのじいさんは、昔から婿役だって言われてた」
心臓がひとつ、強く鳴った。
「婿役って、何ですか」
「山の方の古い言い方だ。山の神さまは女だからな。山に入る男は、みんなあれの婿みたいなもんだって」
「みたいなもん、って」
「でも、お前のじいさんは少し違った。あれは当番みたいなもんだ。代々、誰かがやる。やらんと鹿が降りる、って昔の人は言った」
「鹿が降りる?」
「里まで来る。昔は田を荒らす、今はどうだか知らんが」
冗談めいた口調だったのに、その言葉の芯だけが妙に現実味を帯びていた。
仙台に戻った夜、アパートで手帳を広げ、大学のデータベースや過去の採訪記録を漁った。船形山周辺、山神、猟師、婿。ぴたりと一致する史料はなかったが、断片はいくつも見つかった。山神が女神であること。猟師が酒を供えること。山で得た命を正しく返す必要があること。
そして、古い聞き取り記録の一行。
――山ノカミは婿を離さない。
そのとき、スマホが震えた。研究室の先輩からだった。
『お前、例の鹿の件、まだ興味ある?』
『あります』
『今日、大学の立駐で見たって話が出た』
冗談だろうと思った。だが、次の一文で笑えなくなった。
『方角が変なんだよ。北向いて立ってたって』
北。
船形山の方向だった。
翌日、俺は大学の立体駐車場へ行った。昼間の明るいコンクリートの箱に、夜の怪異の痕跡などあるはずもない。だが、三階の隅、車止めの脇に、泥が一滴だけ落ちていた。乾いた灰色の床に、不自然なほど濃い土の色だった。
しゃがみこんで見ると、泥の中に細い草が混じっている。湿った土と、木の皮と、冷たい水の匂いがした。山の匂いだった。
その夜、先輩から監視カメラの一部を見せてもらった。
午前二時十三分。画面の端に白っぽいものが入る。鹿の背の高さ。次の瞬間、ノイズ。さらに次の瞬間、白い人影。長い髪の女が、こちらを向いて立っている。フレームが飛び、次には何もいない。
「加工じゃないですよね、これ」
「警備会社の生データだってさ」
手帳を持つ指先が冷たくなっていた。見返した最後の方のページに、前は気づかなかった線が引いてある。地名を結ぶ細い線だ。山から、川沿いに、都市へ降りてくる線。いくつかの目撃地点と、重なっている。
最後のページの一行を、俺は三度読み返した。
――次の婿 孫
自分の喉が、やけに乾いているのに気づいた。
その晩、実家に電話した。
「母さん、祖父って、最後の方、何か言ってなかったか」
「何を」
「山とか、銃とか、俺のこととか」
受話器の向こうで少し間があった。
「死ぬ一週間くらい前に、一回だけ変なこと言ったよ」
「何て」
「お前がもう山から遠いと思ってるなら、それは勘違いだ、って」
「それだけ?」
「あと、銃を処分するなって」
昔話で済ませられるなら楽だった。
週末、俺は祖父の猟銃を車に積み、手帳と鹿の角を持って船形山の麓へ向かった。許可の切れた銃を持ち歩くことへの後ろめたさはあったが、それ以上に、持っていかなければならない気がした。
山の空気はまだ冷たい。人の少ない林道脇に車を停め、手帳の地図を辿る。昔の小字と今の道は完全には一致しない。それでも沢の流れと尾根筋を見れば、祖父がどこへ向かっていたのかはなんとなくわかった。
祠は、拍子抜けするほど小さかった。
倒れかけた木の鳥居もない。ただ、苔むした石の祠がひとつ、古い杉の根元に寄り添うように置かれている。周囲だけ空気が冷えていた。風が吹いているのに、葉擦れの音がやけに遠い。
手帳には、その頁だけ文字が濃く書かれていた。
――酒
――塩
――符
――撃たず、封ず
そこでようやくわかった。祖父の銃は、普通の弾を撃つための状態ではなかった。薬室の周辺に、紙片を巻いて差し込むための細工がある。銃というより、形だけ銃に似せた封じ具だった。
祖父は、獣を撃っていたのではない。
その理解が落ちてきた瞬間、背後で鹿の鳴く声がした。
高く、掠れた、女の泣き声に似た音だった。
振り返る。
木々のあいだに、何かがいた。
最初は鹿に見えた。細い脚。白い腹。だが次の瞬間には、人の立ち姿に見えた。長い髪。白い着物。肩のあたりから、角のような影が伸びている。
目が合った、と思った。
ぞっとするほど静かな目だった。深い山の水のような色をしていた。
「迎えに来た」
声は近くで聞こえたのに、唇はほとんど動かなかった。
逃げようとは思わなかった。逃げたところで、もう遅いのだと、なぜか分かっていた。
「祖父は、何をしてたんだ」
掠れた声でそう聞くと、女は少しだけ首を傾げた。
「知っているだろう」
「知らない。手帳を読んだだけだ」
「読んだなら、知っている」
「祖父は猟師じゃなかったのか」
「猟師だった。山に入る男だった。だから婿だった」
女の輪郭が揺れた。鹿の頭骨のようなものが一瞬だけ重なり、すぐにまた女に戻る。
「撃つための銃じゃない」
「撃てば壊れる。壊れたら、境がなくなる」
「境」
「山と里。こちらとあちら。見えるものと、見えないもの」
祖父の手帳の線が頭に浮かんだ。山から都市へ降りる線。
「祖父がそれを守ってたのか」
「来なくなった。けれど銃だけは残した。人の役を、道具で埋めた」
「じゃあ鹿が出たのは」
「怒ったから」
「何に」
「婿が空いた」
ぞっとした。
「おまえの祖父は、長く半分だけ果たした。だから山は静かだった。けれど、完全には静かでなくなった」
意味が分かりそうで、まだ分からない。
「じゃあ俺は何をすればいい」
「知っているはずだ」
手帳を開く。最後から二頁目に、祖父の字でこうあった。
――婿がいれば山は静か
そして最後の頁。
――次の婿 孫
手が震えた。
「ふざけるな」
喉が乾いて、声がうまく出なかった。それでも言った。
「勝手に決めるな。俺はそんなもの引き継ぐ気はない」
女は怒らなかった。ただ、本当に不思議そうな顔をした。
「引き継がなければ、鹿は降りる」
「だからって」
「おまえの街まで行った」
「脅してるのか」
「迎えに行った」
その言い方は、脅しというより事実の確認だった。
俺は祠の前にしゃがみこみ、銃を手にした。符は手帳の裏表紙の内側に挟まっていた。黄ばんだ紙に、墨で記号が書かれている。丸と線と、古い文字のようなもの。見よう見まねでそれを装填する。金属がわずかに鳴った。
「これで、どうなる」
「静かになる」
祠に向けて引き金を引いた。
音は銃声というより、乾いた破裂音だった。符が風に煽られず、まっすぐ祠へ吸い込まれるように飛ぶ。見えない水面に石を投げ込んだような震えが、空気に広がった。
途端に、山が静かになった。
いや、それまでがうるさすぎたのだと気づいた。風の音、沢の音、葉擦れ、そのすべての背後に薄く張りついていた気配が、一度に引いていく。
女は一歩近づいた。
「これで境は閉じた」
「じゃあ、もう終わりか」
「静かにはなる」
「なら」
「婿だろ」
一拍遅れて意味がつながった。
「待て」
女はもうそこにいなかった。鹿の鳴き声だけが遠くで一度して、森の奥に消えた。
その日以降、仙台で鹿の怪異はぴたりと止んだ。
警備会社の目撃情報も、河川敷の噂も、大学の駐車場の話も、それ以上は続かなかった。研究室では、結局あれはノイズだったのだろう、で片づけられた。俺はその輪に混ざらず、祖父の手帳をもとに短い報告書を書いた。
東北地方における山神信仰と猟師の婚姻的比喩について。
いかにも院生らしい無難な題目にした。船形山の名も、実家のことも、黒い手帳の細部も書かなかった。書けるわけがない。
日常は戻ってきた。
講義に出る。研究室に顔を出す。コンビニで夕飯を買う。レポートを直す。そういう当たり前の動作の中で、ときどき不意に山の匂いがした。湿った土と、冷たい水と、木の皮の匂い。振り向いても、そこには誰もいない。
その夜も、ただの一日だった。
指導教員との面談が長引き、帰宅は九時を過ぎていた。アパートの外階段を上がり、自室の前まで来たとき、妙な違和感があった。鍵を差し込む前から、部屋の中に人の気配がある。
空き巣かと思って心臓が跳ねた。
だが次の瞬間、扉の隙間から味噌汁の匂いがした。
意味が分からなかった。
鍵は確かに閉めて出たはずだ。なのに中から、包丁がまな板を打つ軽い音がする。俺はしばらく玄関の前で固まり、それから恐る恐る扉を開けた。
台所に、女が立っていた。
山で会ったあの女だった。
白い着物ではない。いつの間に用意したのか、薄い色の部屋着のようなものを着ている。髪は背中に流れ、肩のあたりに角の影は見えない。だが、振り返った顔を見た瞬間に分かった。あの目だ。深い山の水みたいな色の目。
女は鍋の蓋を少し持ち上げ、湯気の匂いを確かめてから言った。
「遅い」
平坦な声なのに、機嫌が悪いのは分かった。
「何で、いる」
「山が静かになった」
「だから?」
「もう山に戻らなくていい。ここにいる」
頭が痛くなった。
「戻らなくていい、って何だよ」
「婿だろ」
「そういう話じゃないだろ。山を静めたら終わりじゃないのか」
「静まった。だから来た」
あまりに当然の理屈で、逆に言葉を失う。
女は味噌汁を椀によそい、食卓に置いた。俺の茶碗も、いつの間にか出されている。冷蔵庫を勝手に開けた痕跡まであった。昨日買った豆腐が減っていた。
「座れ」
「いや、待て」
「冷める」
味噌汁の湯気が妙に現実的で、かえって怖かった。
「お前、山神なんだろ」
「そう呼ぶ」
「神が何でアパートに上がり込んで味噌汁作ってるんだ」
「おまえは仙台に住んでいる」
「そうだけど」
「山は遠い」
その言い方に、ほんのわずか、拗ねたような響きが混じっていた。
俺は言葉を失った。
女は視線を落とし、箸を揃えながら続けた。
「祖父のときは、山に来た。酒を持って、祠に来た。静かにした。帰った」
そこで初めて、女の声に感情らしいものが混じった。
「おまえは来ない」
「普通は来ないだろ」
「だから迎えに行った」
地下駐車場の鹿。大学の立駐。河川敷。あれは本当に迎えだったのか。
女はようやくこちらを見た。
「静かにしたなら、そばにいる」
「何の理屈だよ」
「そういうものだ」
神の論理、というやつかもしれない。人間の法律や賃貸契約が通じる相手には見えなかった。
女は味噌汁の椀を俺の方へ少し押した。
「飲め」
恐る恐る口をつけると、拍子抜けするほど普通にうまかった。塩気はやや薄いが、出汁が利いていて、体にすっと入る。山菜のような香りがした。入れた覚えのない具がひとつ沈んでいる。
俺が黙って飲むのを見て、女はわずかに満足そうな顔をした。
「それから」
「まだあるのか」
「他の女に近づくな」
「は?」
「近づいたら山へ連れて帰る」
冗談の気配がまったくなかった。
「待て。俺の生活があるんだよ。大学もあるし、人付き合いもある」
「知っている」
「知ってるなら、もう少し」
「嫉妬する」
あまりにまっすぐな言い方で、返す言葉がなくなった。
「山は広い。静かだ。でも、おまえがいないと静かすぎる」
それは告白なのか脅しなのか、判別しづらかった。ただ、その言葉の奥にある執着だけは疑いようがなかった。
女は俺の向かいに座り、自分の椀にも汁を注いだ。箸の持ち方はきれいだった。神のくせに、妙なところで生活感がある。
「名前は」
俺がそう聞くと、女は少し考えた。
「山では呼ばない」
「じゃあここで呼べないだろ」
「好きに呼べ」
「そんな適当な」
「おまえのものだ」
頭を抱えたくなった。
窓の外を見ると、仙台の夜景が見えた。遠く、北の方角は闇が深い。その向こうに船形山がある。ここからは見えないはずなのに、山の稜線の気配だけが分かる気がした。
部屋の中には味噌の匂いと、微かな山の匂いが混じっていた。
「帰る場所、間違えてると思うぞ」
最後の抵抗のつもりで言うと、女は即座に首を横に振った。
「間違えていない」
「どうして言い切れる」
「婿の家だ」
そう言って、女は当然のように俺の布団の方を見た。
嫌な予感しかしなかった。
その日から、仙台で鹿の怪異は一切出なくなった。
ただし、俺のアパートでは、ときどき深夜に窓の外を鹿の影が横切る。見に行っても何もいない。けれど台所には、朝になると山菜が置かれていたり、見たことのないきのこが水切り籠に入っていたりする。
そして、山神はとても嫉妬深い。
そのかわり、ひどく溺愛もするらしかった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この作品は、東北地方に残る山神信仰や猟師の伝承をヒントにした民俗ホラーです。
山の神は女で嫉妬深い――そんな話は各地に断片的に残っていて、調べていくと「人と山の距離」のようなものが見えてきます。
作中の出来事や設定は創作ですが、いくつかの民俗要素を組み合わせて物語として再構成しています。
もし楽しんでいただけたなら、ブックマークや評価、感想などいただけるととても励みになります。
そして、もし夜に窓を開けたとき、ふと山の匂いがしたら。
少しだけ、北の方角を気にしてみてください。
もしかすると――
まだ、迎えに来ているのかもしれません。




