第5話 雷神の片鱗
夜の空は、
雲ひとつない。
星が、
静かに瞬いている。
ロンドは、
宿のベッドに横になっていた。
体は、
疲れている。
だが。
眠れない。
胸の奥が、
ざわついていた。
ダンジョンでの戦い。
オークを倒した瞬間。
あの時。
一瞬だけ。
自分の中に、
自分ではない何かを感じた。
「……気のせいか」
目を閉じる。
意識が、
ゆっくり沈む。
◇
闇。
どこまでも、
広がる闇。
足元に、
雷が走った。
空が、
割れる。
巨大な影が、
立っている。
全身を覆う、
雷の鎧。
片手には、
巨大な戦斧。
圧倒的な存在感。
声が、
頭に直接響く。
「我が名は、
トール」
ロンドは、
声を失う。
「恐れるな」
影が、
一歩近づく。
「我は、
お前の中に在る」
意味が、
理解できない。
「力は、
まだ眠っている」
「だが、
お前は目覚め始めた」
ロンドは、
震える声で言う。
「あなたは……
俺に何を……」
トールは、
ゆっくりと戦斧を地面に置く。
雷鳴が、
轟く。
「選べ」
「力に呑まれるか」
「力を、
使いこなすか」
「答えは、
お前自身だ」
光が、
溢れる。
◇
目を開ける。
朝だ。
体が、
熱い。
指先から、
微かな火花。
「……夢?」
だが。
胸の奥に、
確かな鼓動。
ロンドは、
起き上がる。
ギルドへ向かう。
朝の空気が、
冷たい。
水晶球に、
手を置く。
光が、
強くなる。
「スキル、
雷撃」
ミレナが、
目を見開く。
「レベル4……」
ロンドは、
息を呑む。
「そんな……」
ミレナは、
微笑む。
「昇格試験の、
正式通知です」
封筒を、
差し出される。
ロンドは、
受け取る。
手が、
少し震えている。
外へ出る。
空を、
見上げる。
雲の向こうで、
雷鳴が鳴った。
偶然か。
それとも。
「俺は……」
拳を、
握る。
「冒険者だ」
怖い。
それでも。
進む。
ロンドは、
まだすべてを知らない。
自分が、
神の器であることを。
だが。
運命は、
動き出した。
雷と共に。
第一部・完




