第 76 話:沈黙の神殿ポセイドン
「くそっ、逃げられたか!」
「それより自爆を止めないと!」
水がどんどん増えてくる。
このままでは溺れ死ぬか、瓦礫の下敷きだ。
「アルファ、停止方法は?」
『クリスタルの中枢コアを物理的に破壊すれば、自爆回路は遮断されます。しかし、コアは高密度のマナ防壁に守られています』
「ハンマーなら壊せるか?」
「やってみる!」
ノアがクリスタルに駆け寄る。
ハンマーを振り上げるが、防壁に弾かれる。
「硬い!」
「俺も手伝う!」
俺とギムレットも攻撃を加えるが、びくともしない。
オメガが残した最後の悪あがきか。
「時間がないぞ!」
『残り 3 分』
焦る俺たち。
その時、ノアがハンマーを捨て、クリスタルに抱きついた。
「ノア!?」
「壊すんじゃない。癒やすの」
ノアの体が光る。
彼女はクリスタルに流れる暴走したマナを、自分の体に取り込み始めたのだ。
「やめろ! そんなことしたらお前が!」
「大丈夫。私、神の器だもん」
ノアは苦しげな表情を浮かべながらも、決して手を離さなかった。
黒く濁っていたクリスタルが、徐々に青色を取り戻していく。
『残り 10 秒……5、4、3……』
光が最大になり、そして消えた。
赤い警報灯が消え、静寂が戻った。
『自爆シークエンス、停止を確認』
助かった。
ノアはその場に崩れ落ちた。
「ノア!」
「……へへ、やったよ」
彼女は弱々しく笑った。
無茶しやがって。
俺は彼女を抱きしめた。




