第 72 話:深海への備え
深海への潜航は順調だった。
アルファ号の性能は完璧だ。
だが、深海には危険な生物が多い。
巨大なイカや、発光する魚の群れが通り過ぎていく。
「きれい……」
「ああ。でも油断するなよ」
水深 3000 メートルを超えたあたりで、アルファが警告を発した。
『警告。巨大な生体反応接近。全長 100 メートル級です』
「100 メートル!? クジラか?」
『いいえ。マナの波長が異なります。これは……守護者クラスです』
現れたのは、巨大な亀だった。
甲羅には岩山のような突起があり、長い首と尾を持っている。
伝説の魔獣、竜亀だ。
「でけえ……!」
竜亀は俺たちの船に気づくと、口から激流のブレスを吐いてきた。
「うわっ!?」
船が激しく揺れる。
装甲がきしむ音がする。
「攻撃してきやがった! 迎撃するぞ!」
「待って!」
ノアが叫ぶ。
「あの亀、怒ってない。ただ、守ってるだけ」
「守ってる?」
「うん。神殿に近づく人を試してるの」
ノアは操縦席の窓に手を当てた。
「私が出る」
「おい、無茶だ! 水圧で潰されるぞ!」
「大丈夫。ハンマーが守ってくれる」
ノアは聞かなかった。
俺は仕方なく、エアロックを開放した。
ノアが深海へと飛び出していく。
彼女の体は、ハンマーの光の膜に包まれていた。




