第 39 話:ノアの正体
「私は……ホムンクルス。偽物の、命……」
ノアの声が震える。
彼女は自分の手を見つめ、怯えるように後ずさった。
「タクミ、私、怖い。自分が何なのかわからない。もしかしたら、いつか壊れて、暴走して……タクミを傷つけるかもしれない」
「そんなことない!」
俺はノアの肩を掴んだ。
「ノアはノアだ。ホムンクルスだろうが、人工神だろうが、関係ない!」
「でも……!」
「俺を見てくれ」
俺は彼女の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「俺たちは一緒に旅をしてきた。美味しいものを食べて笑ったり、綺麗な景色を見て感動したりしただろ? あの感情は偽物なんかじゃない。ノア自身のものだ」
「……私の、感情」
「ああ。過去がどうであれ、今の君はここにいる。俺の大切なパートナーだ。それだけは絶対に変わらない」
俺の言葉に、ノアの瞳から涙が溢れ出した。
彼女は俺の胸に飛び込み、声を上げて泣いた。
「うあぁぁぁん! タクミぃぃぃ!」
俺は彼女を強く抱きしめた。
温かい。
心臓の音が聞こえる。
彼女は生きている。
誰が何と言おうと、彼女は一人の人間だ。
しばらくして、ノアは泣き止んだ。
その顔は、憑き物が落ちたように晴れやかだった。
「……ありがとう、タクミ。私、もう迷わない」
「ああ。一緒に帰ろう」
俺たちは手を取り合い、出口へと向かおうとした。
だが、運命はまだ俺たちを解放してくれなかった。
『警告。高エネルギー反応接近。敵対的シグナルを確認』
アルファの警告と共に、部屋の入り口に黒い影が現れた。
ノアと瓜二つの顔をした、黒髪の少年。
彼は冷酷な笑みを浮かべ、俺たちを見下ろしていた。
「感動的な再会だね、姉さん。いや、失敗作の『ノア』」
新たな脅威の出現。
過去との決別は、戦いの始まりでもあった。




