第 33 話:アルファのアップデート
出発までの間、俺は王宮の禁書庫への立ち入りを許可された。
ここには、一般には公開されていない古代文明に関する文献が山ほどある。
アルファのデータベースを強化する絶好のチャンスだ。
「アルファ、片っ端からスキャンしてくれ」
『了解。高速スキャンモード起動』
俺が本をパラパラと捲るだけで、アルファがその内容を瞬時に記録していく。
数万冊に及ぶ蔵書を、わずか 3 日で読破した。
『データ統合完了。古代語の解読率が 98% に向上。古代技術の設計思想に関する理解が深まりました』
「よし。これで遺跡のシステムにもアクセスしやすくなるな」
さらに、アルファ自身にも変化があった。
『マスター、提案があります。私の思考ロジックをアップデートし、より柔軟な対話モードを実装可能です。実行しますか?』
「へえ、そんなこともできるのか。やってみてくれ」
『了解。……再起動完了。どうも、マスター。調子はどう?』
アルファの声色が、少しだけ人間らしくなった。
抑揚があり、どこか親しみやすさを感じる。
「おお、なんかすごく自然になったな」
『でしょ? 膨大な文献から、人間の感情表現や会話パターンを学習したの。これでノアちゃんともガールズトークができるわ』
「ガールズトークって……お前、AI だろ」
『AI にだって女子力は必要なのよ。これからの旅、もっと楽しくなりそうでしょ?』
確かに、無機質なナビゲーターより、こういう相棒の方が退屈しなそうだ。
進化したアルファと共に、俺たちは南への旅に備えた。




