第 28 話:ノアの記憶の断片
病院の一室を借り、ノアを休ませる。
しばらくして、彼女は目を覚ました。
だが、その瞳は焦点が合わず、どこか遠くを見ているようだった。
「……白い部屋」
「え?」
「真っ白な部屋……たくさんのベッド……管に繋がれた子供たち……」
ノアがうわ言のように呟く。
それは、彼女の失われた記憶の断片のようだった。
「……実験。マナの抽出……魂の……分離……」
「実験? 誰がそんなことを?」
「……白衣の男。笑ってる……。痛い、痛いよ……」
ノアが怯えるように体を丸める。
俺は彼女の手を強く握った。
「大丈夫だ、ノア。俺がいる。誰も君を傷つけさせない」
「……タクミ?」
俺の声が届いたのか、ノアの瞳に光が戻る。
彼女は俺の手を握り返し、震える声で言った。
「……思い出した。少しだけ。私、あそこで……実験されてた」
「あそこ?」
「……わからない。でも、この病気と同じ匂いがする。あの人たちが、やってるの」
ノアの記憶と、眠り病。
点と点が繋がった。
眠り病は自然発生したものじゃない。
誰かが意図的に引き起こしている、大規模な人体実験だ。
そしてその首謀者は、ノアの過去を知る人物である可能性が高い。
「アルファ、王都内のマナの流れを解析しろ。異常な吸引反応がある場所を特定するんだ」
『了解。広域スキャンを実行……。特定しました。王宮の地下、魔術研究棟から強力なマナ吸引反応を検知』
王宮の地下だと?
まさか、国の中枢が関わっているのか?
俺の怒りのボルテージが上がっていくのがわかった。




