第 25 話:王都への道とノアの変化
王都アークライトまでは、馬車で約 2 週間の道のりだ。
自動運転のおかげで、移動中は自由な時間がたっぷりある。
俺はこの時間を使って、ノアに勉強を教えることにした。
「これは『ア』。こっちは『イ』だ」
「……ア、イ」
ノアは文字を覚えるのが早かった。
アルファ曰く、彼女の脳の処理能力は常人を遥かに凌駕しているらしい。
文字だけでなく、計算や歴史、地理なども、教えれば教えるほど吸収していく。
「ねえ、タクミ。この国は昔、竜と戦ったの?」
「ああ、建国神話にな。初代国王が竜と契約して……」
歴史の本を読みながら、ノアが質問してくる。
以前は言葉少なだった彼女が、今では自分から話題を振ってくるようになった。
表情も豊かになり、笑ったり、驚いたり、時には拗ねたりもする。
「……むう。この王様、ずるい」
「はは、政治ってのはそういうもんだよ」
そんな会話をしていると、時間が経つのを忘れる。
旅の途中、美しい湖のほとりで休憩したり、満天の星空の下でスープを飲んだりした。
二人だけの旅は、まるで新婚旅行……いや、家族旅行のような温かさに満ちていた。
「タクミ、ありがとう」
「え? 何が?」
「いろいろ。教えてくれて、連れてきてくれて」
夜、焚き火を見つめながらノアが言った。
炎に照らされた彼女の横顔は、今までで一番綺麗に見えた。
「俺の方こそ、ありがとうな。ノアがいてくれてよかったよ」
俺たちは互いに微笑み合い、静かな夜を過ごした。
王都に近づくにつれ、ノアの記憶に関する不安も大きくなっていたはずだが、この時だけはそれを忘れることができた。




