第 10 話:ささやかな祝杯
ギルドに戻り、納品を行う。
リリアさんは袋の中身を見て、目を丸くした。
「こ、これは……! 全部最高品質じゃないですか! それに、この月光草……こんなにたくさん!?」
「あはは、運良く見つけまして」
「運で片付けられる量じゃありませんよ……。査定額、弾みますね!」
報酬は、依頼料と買取額を合わせて銀貨 20 枚にもなった。
日本円で約 20 万円。
日給にしては破格だ。
「やったな、ノア」
「……ん。すごい」
懐が温まったところで、今日は少し贅沢をすることにした。
市場で肉や野菜、パンを買い込む。
宿の女将さんに頼んで厨房を借り、俺が料理を作ることにした。
一人暮らしが長かったので、自炊は得意だ。
メニューは、異世界の食材を使ったクリームシチュー。
アルファにレシピを調整してもらい、こちらの味覚に合うようにした。
部屋に戻り、テーブルに料理を並べる。
湯気が立ち上るシチューに、焼きたてのパン。
「さあ、食べよう。初仕事の成功に乾杯だ」
「……乾杯」
木のカップに入った果実水で乾杯する。
ノアはスプーンでシチューを掬い、口に運んだ。
「……!」
「どうだ? 美味いか?」
「……おいしい。すごく、温かい」
ノアの表情が、ふわりと緩んだ。
出会ってから初めて見る、柔らかな表情だった。
それを見て、俺も自然と笑顔になる。
「よかった。たくさん食べてくれ」
異世界に来て、不安も多かった。
でも、こうして美味しいものを食べて、隣に誰かがいてくれる。
それだけで、なんとかなるような気がした。
俺たちの異世界生活は、まだ始まったばかりだ。




