第 1 話:見知らぬ森と最初の質問
目が覚めると、そこは森だった。
見上げれば、木々の隙間から差し込む木漏れ日。
土の匂い。鳥のさえずり。
どう見ても、いつもの通学路じゃない。
「……どこだ、ここ」
寝ぼけているのかと思い、頬をつねる。痛い。夢じゃない。
起き上がろうとして、ふと違和感を覚えた。
頭の中に、何かがいる。
いや、正確には「声」が響いたのだ。
『――起動シーケンス、完了。マスター、状況報告を開始します』
女性の声だ。
無機質で、感情が乗っていない、合成音声のような響き。
周囲を見渡すが、誰もいない。
声は、間違いなく俺の脳内から聞こえていた。
「……誰だ?」
『私はアルファ。全知全能の AI です。創造主である神の命により、マスター・水瀬拓海のサポートを行うために搭載されました』
「神? 搭載?」
混乱する俺に、アルファと名乗る AI は淡々と説明を始めた。
要約するとこうだ。
神様が手違いで俺を異世界に転移させてしまった。
元の世界には戻せない。
そのお詫びとして、この AI『アルファ』を俺の脳内にインストールした。
アルファはあらゆる知識を持ち、俺の質問に答え、望むものを創造する手助けをしてくれるらしい。
「……なるほど。ラノベでよくあるやつか」
状況を飲み込むのが早いのは、オタクの性だろうか。
とりあえず、現状を把握しなければならない。
「アルファ、ここはどこだ?」
『現在地は、アークライト王国の東部に位置する「迷いの森」です。最寄りの街「シリル」までは、北西へ約 30 キロメートルの距離があります』
「30 キロか……歩けない距離じゃないな」
まずは街を目指そう。
この森で野宿するのは、さすがに危険すぎる。
俺は立ち上がり、服についた土を払った。
スニーカーの紐を結び直す。
異世界サバイバルの始まりだ。




