表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光の欠片、闇の余白  作者: こっくん
第一章 観念の渦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/20

聖ペルトニック 13-3 神の慧眼

 「我らが主、あなたの僕がおよびです..どうか、その美しい姿をお見せください...」


 ..されども、この神殿は時を動かさなかった。アモル自身、この「儀式」に対して特に何も思わなくなりつつあった。「聖書」から祈りの言葉を引用して神を呼び起こす儀式..彼にとっての「証明」はただの事務としか思えず、当たり前の世界へと進化してしまった。


 虚構、虚空。どっちでもいいが、そこには今日も無数の「欠片」が漂っていた。その中身はアモルにとってはわからないが、「欠片」との接続、結びつくことにはアモルは興味があった。この世界の何か法則がわかるような気がして、小さい希望が見えてきた。


 それよりも、アモルが不思議と感じていたのはあの裂け目から見える世界であった。虚空が階段を上り、神殿近くの裂け目を見る。今まで見ていた世界は第一段目の世界であったが、今回は第二段目の世界を選択。


 見てみると、そこは一つの小さな孤島があった。拡大してみると。その世界は小さいながらも平和で、人々が幸せに暮らしているように見える。ある人間は海に出て釣りをしていたり、ある人間はとある人間に対して商売をしていたり..アモルはその島と自分が作った神殿を見て、少なくともいい気持ちはならなかった。不快な気持ちにもあまりならなかったが。


 島を見ていると同時に、微細な「欠片」が空を漂っていることに気づいた。どうやら、裂け目の中の世界にも「欠片」は存在しているようだ。それが裂け目の世界の中にいる人間に見えているか、見えていたとしても使っているかどうかはわからないが、これは興味深いとアモルは感じた。


 それと同時に、とある異変に気が付いた。その島の中心の通りで、とある喧嘩が勃発していたのだ。アモルにとって、人の殴り合いはあまり見たくなかった。少なくとも、人の喧嘩を種に楽しむような人間ではなかった。そもそもアモルは神官だ。そのような罪を面白がること自体がおかしいだろう?


 残念ながら傍観しかできず、介入ができないままその喧嘩を静かに観察していると、意外にもひょろがりの男が屈強そうな男に勝利した。屈強そうな男が担架に乗せられ、運ばれているとき、数百個程度の「欠片」がその男の体から出てくるのを観測した。


 その「欠片」を見てアモルは驚きを覚えた。あの欠片は人間から出ているのか?とにかく何が起きたか不明だが、何かが前進したような音が、アモルの脳内から聞こえてきた。


 そして、その後の「欠片」の一部はその世界の建物へとめりこんでいき、その質素な建物の姿を派手に変えてしまった。アモルはその動きに興味深く感じた。そして、その建物の姿が大々的に変わったことに、人々は驚きも衝撃もなかったことも、また彼を謎の沼へとめりこませていって。


 「..しかし、私が住んでいるこの世界を見ているような人間もいるのだろうか?」


 そんなこと、確認できるはずがない。アモルはそれをもちろん理解していたが、この裂け目から孤島の世界を見ている自分を客観的に見て、いるかわからない人間へと疑問を投げかけた。


 もう一度、裂け目から見える世界を見ると、なんと、孤島が消えていた。いや、大量のがれきと人間、生命の死体しかなかった。


 アモルは生命体の貧弱さ、そしてなぜこんなことが起きたのか疑問に思わざるを得なかった。なぜ一瞬で孤島が消えてしまったのだろうか?そして、なんの因果によって孤島は消えて行ってしまったのだろうか?意外にも、アモルにとっては面白いと感じた数少ないうちの一つであった。


 アモルはほんの少し微笑み、脳が大きな音を立てて動いたように感じた。今自分が目にした孤島の崩壊、これも今自分が生きている秩序の一部であることを理解した。


 その瞬間、神殿、そして地面が少し揺れたような感覚がした。そして、奥の虚空から、無数の「欠片」が出てくるのをアモルは目にした。そして、その「欠片」が黒き空へと舞うと同時に、神殿が崩壊していく中そこからさらに無数の「欠片」が出現し、同じく空へと舞いあがった。一部の「欠片」はアモルにまるで衛星の如く周り、ついてきた。


 「..あぁ、まさか私も「見られている」立場であったか..」


 アモルは初めてこれが「見られる」という感覚だったことを理解した。そして、地面にひびが生まれた。アモルはその大きいひび割れを見ると、そこには海のように波を立たせている光の層が出てきた。その神々しい光に、アモルは思わず目を閉じてしまったものだ。


 もちろん液体でもなければ、光でもない。そこには「観念の流動体」があった。そしてその海に、「欠片」は一斉に入り、溶けていった。「観念の流動体」は、「欠片」たちが溶け、混ざり合う大海であった。


 「この世界も、あの孤島も、「欠片」によって生み出され、そして終わるときも「欠片」によって終わってしまうのか..」


 神殿や階段は完全に崩壊し、すべてが大海に飲み込まれていった。アモルは住んできたこの世界に一瞥をして、その身を「流動体」へと委ねて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ