聖ペルトニック 12-7 私は、私自身を祝福する。
世界は「観測」されることで、その存在を初めてあらわにする。 では、その前は? 一人、孤独な神官がそれを探し出す。 沈黙と、暗闇の中から。
世界は「観測」されることで、その存在を初めてあらわにする。 では、その前は? 一人、孤独な神官がそれを探し出す。 沈黙と、暗闇の中から。
「..聖なる我らの神よ、この美しき神殿に参り、その美しき賛歌をお聞かせください..」
..されども、その賛歌は来ない。アモルは、昨日のこの虚構に問いかけた質問について考えていた。自分はこの世界で孤独なのだろうか?それとも、この世界は本当に何もなく、自分はいまとても長い夢の中にいるのだろうか?
アモル自身、前の世界の記憶というのがない。いや、そもそも「前の世界」自体がなく、アモルにとっての世界はこの世界なのかもしれない。その次元の記憶、境界が曖昧となっていた。 「私は神の忠実なしもべ、神官として..やるべきことをやらなければならない..」
アモルは、自分自身にこう信じ込ませるのであった。しかし、これはアモルにとってただの返答の延長にしかすぎなかった。数分後、数時間後、数日後、数か月後、数年後にはまたそのような考えを抱くだろう。アモル自身にはそれが理解できていないが。
またいつものように、階段を一段、一段と降りていく。そんな中ある階段の、ごく一部が欠けてしまった。その瞬間、その欠片からいくつもの「欠片」が虚空へと駆け下りていった。そこからは無数の喜び、悲しみ、絶望の声が無数に聞こえてきた。まるでノイズのように、アモルへと襲い掛かった。アモルは、思わず耳をふさいでしまった。
しかし、数十秒後にはもうそのノイズも、「欠片」も消え去っていった。アモルにとって、それはこの世界の謎を解き明かす、ヒントを告げられたような感覚になった。
アモルは、虚空へと走っていく「欠片」の中で、一部の「欠片」がまた別の段の石へと突入していくのを目にした。一体何が起きているのだろうか、アモルは石を触ってみる.. しかし、特に何も発生しなかった。石は、ただ沈黙を貫いていた。階段と神殿以外は虚空が広がっていた。石には何があるのだろうか?
..そういえば、神殿の近くにはその石の世界を観測することができる裂け目があることを思い出した。アモル自身、裂け目をみて人々が交流しているところを見ると、より一層孤独を感じるため見たくはなかったが、なぜあれが起きたかを知りたい。
..試しに最初の世界を観察してみると、最初にみた世界とはまるで違う世界が広がっていた。最初みたときはあんなに繁栄していたのに、今では廃墟と数人の人間しかいないではないか。アモルは天を仰ぎながら、こう神に問いかけた。
「おお神よ、これが神の沈黙の正体なのでしょうか?それとも、ただの偶然でしょうか?それとも、この世界の法則なのでしょうか?」




