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光の欠片、闇の余白  作者: こっくん
第三章 鏡の信仰

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聖ペルトニック 4-2 暴走する信仰

 ..アモルは不気味に感じ、あの巨大なモニターの部屋にあった石の階段から「地上」へと昇って行った。「地上」に行くと、今回は顔のない人間たちはアモルのことを見はしないし、今回は電車も自動車も光のような速度ではなく、普通に速く動いている。しかし、あの気持ちの悪い形に変わりはないが..


 しかし、幸運だったことはあの中央のタワーがそれなりに遠く見えることであった。つまり、断層都市の郊外にアモルはいた。あのメモではタワーのすぐ下にあの部屋があると書いてあったが..


 どうも、ここはとても静寂だ。確かに自動車も、電車も、人間も存在はしているが、そこから出てくる音は微かなものであった。そして、アモルはまた彷徨うように歩いていると、そこには「人間」がいた。


 ..いや、確かに顔はなく、肌色も他の顔のない人間と同じであったが、この地区だけは違っていた。動きは不規則で、あの儀式をしていた人間とは真反対の動きをしていた。何かの準備をしている..何かしらの儀式のためだろうか?

 

 「あ~あの、何をしてるんですか?」


 話が通じるかはわからないが、アモルは近くにいって声をかけた。


 「我々 信仰 再生」


 あぁ..何らかしらの儀式の復活を行おうとしているのだろうか?しかし、アモルにとっては言語を話せる人間がいるとは思わなかった。


 「我々 記憶 追及 提供 追及」


 ..記憶がほしいということなのだろうか?アモルにはその恐ろしさというのは理解できなかったが、何かしらまずいことが起きているということは理解した。..しかし、追及というのはどういうことなのだろうか?


 「手 接触 作動」


 ここに手を置いたら作動するということか。前にもそのような装置を見たことがある気がするが..しかし、アモルはその装置に手を触れた。この儀式によってまたあの神殿に帰還したいと、ほんの少し感じていた。


 そしてそこに手を置くと、何かしらの記憶が消えていった。何かしらというのは、もう消えてしまったからわからないのだ。しかし、少なくとも神殿からの記憶は残り続けている。そして、その手からそれなりの「欠片」が放出されてゆく。その装置は、記憶の断片を光の「欠片」として抽出し、「像」を生成する機械仕掛けの祭壇であった。


 装置が稼働し、光の「欠片」が宙に浮かび、やがて人型を結ぶ。しかし、その姿は曖昧で、境界が揺らぎ、言葉を発しても意味が成立しない。


 まるで、信仰の構造のみが復元され、魂がまるまる欠落しているようだった。


 周りにいる顔のない人間が歓喜の声をあげる。だがアモルには違和感しかなかった。その「神」はただ観測された刺激に反応し、人間の言葉を模倣するだけの存在だった。


「..................」


 まるで人の叫び声のように響く声は、祈りを記録した音声データの再生のようだった。


 やがて、像の輪郭がまるで寄生虫のごとく都市の構造に干渉し始める。あの規則的なマンションの外壁が歪み、記号や言葉が物理的に浮かび上がる。自動車や電車の外装は歪みを始めた。「思考」が「物質」を侵食しているのだ。信仰が再構築された瞬間、世界の因果そのものが再計算、再起動を始めた。


 アモルは叫ぶ。


 「これは再生なんかない、模倣の暴走だ!」


 だが群衆は止めようとしない。むしろ神像に取り込まれ、だんだんと人間の形を失っていく。魂が、「信仰」の名のもと奪われていく。


 すべてが沈黙してしまった。神像は完全に静止し、まるで意味を失い、数百年経ってしまった彫刻のように残る。アモルはそれを見つめ、呟く。


 「信仰は再生されるたび、神を空っぽにするのか……」


 都市の一角が崩壊し、空に「欠片」や「文字」が漂っている。アモルはその光景を背に、次の場所へ歩き出す。

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