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ほうじ茶  作者: 大浜朴
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ほうじ茶

 彼女の入れてくれたほうじ茶は俺の体の中を通っていった。

そのほうじ茶は俺の人生の中で間違いなく一番美味いお茶だった。

ほうじ茶は俺の心に住みついていた焦燥感と苛立ちを溶かしてくれた。

その瞬間俺は命を救われたような気がした。

彼女も音を立ててゆっくりとほうじ茶を飲んだ。

彼女が息を吐くと瞳が緩んた。

俺に向けられた視線は微笑んでいるように思う。

俺はもう一度ほうじ茶を飲んだ。

ああ今俺は幸せなんだ。

 いつかのほうじ茶をもう一度飲もう。

そう思って俺はデパートの地下で高いほうじ茶を買った。

店員の女性が違いを説明し試飲したがよく分からず一番高いものを買った。

家に帰って湯を沸かした。

やかんも急須も見つからず思わず舌打ちをした。

仕方なく鍋で湯を沸かし茶漉しを使いお茶を入れた。

俺はゆっくりとほうじ茶を飲んだ。

でもあの時のような美味さは一向にやってこない。

彼女が入れた茶葉よりも高いものを使っているはずなのに俺の中を通るものは熱いばかりだった。

ゆっくりため息をついた。

明日、やかんと急須を買おう

そうしたかまた美味いほうじ茶が飲めるだろう。

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