剣玉ライフ
剣持小珠は、剣玉三昧の人生を謳歌してきた。
初めて小珠が剣玉に触れた時、彼女はまだ二歳になったばかりだった。
近所の公園で剣玉のイベントが行われた際、剣玉の達人と呼ばれる女性が技を披露し、その後皆も剣玉で遊んだのだ。
(けんだま……たのちい!)
初めて遊ぶ剣玉の魅力に惹かれた小珠の心は、剣玉の達人になるという夢で埋め尽くされた。
イベントの帰り、小珠は両親に剣玉をねだった。
玩具の小槌タイプではなく、検定を受けられる剣玉協会のシールが貼られた本格的な物を、だ。
二歳の小珠にはサイズが大きい事と、価格が二千円を越える事から両親は困惑したが、娘の眼差しに負け、その剣玉を購入した。
「このけんだまなら、けんてい、うけられる」
小珠の発言は両親は驚き、流石に緩い笑顔で云った。
「そうなの?
検定、合格すると良いわね」
「ぜったい、ごうかくしゅるよ!」
「楽しみだな!」
「きたいちててね!」
勿論この時は本気にしていない両親だったが、小珠は剣玉の練習を重ねるうちみるみる上達していった。
小学校を卒業する頃に出場した大会では剣玉フリースタイルで見事グランプリを獲得して、前回優勝者を驚かせていた。
そしてこの日の剣玉の大会
でも優勝の座は譲らないままだ。
「今大会でも、グランプリだったわ!
思えば長く生きてきたわよ」
小珠はすっかり貫禄がつき、剣玉トリックを披露するのもお手のもの。
「剣玉は好きだけど、第二の人生をも視野に入れたいわね。
残りの時間、どう過ごそう……」
成長した小珠は、剣玉を手にしながらこれから先を思案する。
そんな彼女を見て、両親は軽く吹き出しこう云った。
「まだ十七歳でしょう?
まだまだこれからよ」
「これからも剣玉さばきを見せてくれよな!」
「まだ十七歳と考えるか、もう十七歳と考えるか……これは、課題だわ」
小珠の剣玉ライフは、まだスタートしたばかりだ。