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影の王  作者: ナンデス
第2章: 幕末への旅立ち
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2-4.新たな幕末

勝海舟との会談を終えた後、松田は少しずつ実感し始めていた。坂本龍馬が生き残り、勝海舟の支援を取り付けたことによって、幕末の情勢がゆっくりと変わり始めているのだ。歴史の流れに新たな「うねり」が生じ、かつての記録に存在しなかった動きが明確に見え始めた。


松田は、その変化が自分の予想を超えて広がりつつあることを強く感じていた。龍馬は、これまで以上に大胆な動きを見せ始め、倒幕の計画を進めるべく各地の志士たちとの連絡を急ピッチで進めていた。元々の歴史では、この時期に龍馬は命を落とし、彼が倒幕を支える役割を担うことはできなかった。だが今は、坂本龍馬は生きている――そして、未来を動かし始めた。


---


「松田くん、最近の動き、どう思う?」

ある日、龍馬は松田に声をかけた。彼らは京都の町外れにある小さな茶屋にいた。周囲は静かで、風が通り抜ける音だけが聞こえる。龍馬の顔には少し疲れが見えていたが、その目は燃えるような熱意を失っていない。


「正直に言えば……少し予想外です。龍馬さんが生きていることで、倒幕の動きが以前よりも早まっているように感じます。」

松田は冷静に答えた。龍馬の影響力は、思った以上に大きかった。彼が生きていることで、様々な勢力が倒幕に向けて動き始め、歴史が一層加速している。


龍馬は少し笑って答えた。


「まあ、わしが生きてることで、そりゃ色々変わるやろうな。けど、それがええ方向かどうかはまだわからんで。何が起こるか、最後まで見届けんと。」

龍馬の言葉には冷静さと強さが混在していた。松田が抱いていた「坂本龍馬」という歴史上の人物像が、目の前でさらに鮮明になっていく。彼は確かに偉大な志士でありながら、未来がどうなるかを全く予測できない一人の人間でもあった。


「でも、倒幕の動きが加速することで、幕府側もすぐに動き出すでしょう。幕府の刺客や、新選組が動いてくる可能性もあります。安全ではないです。」

松田はその不安を口にした。歴史上、坂本龍馬はすでに命を狙われていたが、彼の行動が活発になれば、それだけ幕府側も厳しい対策を講じることになる。


「確かにそうやな……けど、わしらがビビって動けんようになったら、それこそ未来は変わらん。幕府はもはや倒れかけとる。わしらがその倒れかけた柱を倒すだけや。」

龍馬の言葉には揺るぎない信念が込められていた。彼はリスクを承知の上で、未来を切り開こうとしている。それが、松田には眩しくも恐ろしく思えた。


---


その晩、松田は京都の宿屋に戻り、一人で考え込んでいた。龍馬の生存が引き起こした影響は、確実に広がりを見せている。歴史は松田が知る通りには進んでいない。新たな展開が次々と訪れることで、彼自身もどう振る舞うべきか迷い始めていた。


「本当に、このままでいいのか?」

松田は一人呟いた。坂本龍馬を救ったことで、日本の未来はどう変わるのか。彼は歴史学者として、その変化に興味を持ちつつも、個人的な責任感に押し潰されそうになっていた。未来を知る者として、どこまで過去に干渉すべきなのか――その問いが、彼の心に重くのしかかっていた。


突然、宿の扉がノックされる音がした。松田は警戒しながら扉を開けると、そこには見覚えのある人物が立っていた。陸奥陽之助だ。


「松田くん、少し話がある。」

陸奥は静かに言った。松田は彼を部屋に招き入れ、二人で話を始めた。


「松田くん、最近の動きで、あんたのことを怪しんでる連中が増えてきてる。龍馬さんを助けてくれたことは感謝してるけど、あんたの正体を疑ってる者も少なくない。」

陸奥の声には、微かな緊張感が漂っていた。松田はその言葉に少し動揺した。やはり、彼の存在がこの時代にとって異物であることを、多くの者が感じ取っているのだ。


「僕はただ、龍馬さんを助けるためにここに来たんです。それ以外に、何の意図もありません。」

松田は冷静を装いながらも、内心は不安を抱えていた。自分が未来から来た人間だということを、誰にも言わないようにしてきたが、すでに噂は広がりつつある。彼がこの時代の人間ではないという疑念が、志士たちの中で広まっているのだ。


「わかってる、俺はあんたを信じてる。でも、これからは気をつけた方がいい。龍馬さんを狙う連中も増えてるし、あんた自身が狙われる可能性だってある。」

陸奥の言葉に、松田は深く頷いた。自分がこの時代に足を踏み入れたことで、知らず知らずのうちに多くの目が自分に向けられているのだと、改めて感じた。


「ありがとう、陸奥さん。僕も気を引き締めます。」

松田は感謝の意を伝え、陸奥は静かにその場を去っていった。宿屋の部屋に一人残された松田は、再び深く息を吐いた。倒幕という大きな渦の中で、自分がどれほどの役割を果たすのか、もしくはどれほどの影響を与えてしまうのか――その考えが彼の頭を離れなかった。


---


夜が更け、松田はようやく寝床に入った。しかし、眠りに落ちることはできなかった。彼の頭の中では、龍馬や陸奥、そして自分自身がこれから直面する運命のことが渦巻いていた。


「もし、このまま龍馬が生き続けたら……歴史はどうなるんだろう?」

その疑問が、松田の胸を苦しめ続けた。未来は予測できない。彼が望む結果になるのか、それとも全く別の結末が待っているのか、今は誰にもわからない。


そして、ふとした瞬間、彼の中に一つの考えが浮かんだ。もしかしたら、彼が本当にすべきことは、歴史を修正するために、再び過去に戻ることではないのか――。


その考えは、眠れない夜の中で、次第に松田の心を蝕み始めていた。


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