1-5.暗殺の夜
松田の息遣いは乱れていた。建物の外から聞こえる足音が、刻一刻と近づいてくる。もう後戻りはできない。目の前の龍馬を救い、歴史を変えるため、彼はその瞬間を迎えようとしていた。
「来たか……」
龍馬は低い声で呟いた。普段の快活な笑みは消え、冷静に周囲の状況を把握している。彼は生き残るために何度も修羅場をくぐり抜けてきた男だ。しかし、松田は違う。未来から来た研究者として、彼にできることは限られていた。
外の足音が止まり、建物の入口が軋んで開く音が響いた。松田は体の芯が凍りつくような感覚に襲われた。歴史の教科書に書かれているその瞬間が、まさに目の前で起きようとしている――刺客たちが近江屋に入り込み、坂本龍馬を襲撃する、その運命の夜だ。
「どうする？」
龍馬が松田に目配せをした。その視線には緊張があるが、動じてはいない。彼は、何度も危険を生き抜いてきた男の目をしていた。
松田は、手にした短刀を握りしめたが、汗で滑りそうになるのを感じた。これを本当に使う時が来るとは思っていなかった。歴史に介入するということが、これほどまでに恐ろしいものだとは考えが及ばなかったのだ。
階段を上る足音が、さらに近づいてくる。3人か、4人――複数の気配が確かに感じられる。松田の背筋に冷たい汗が流れる。龍馬を救わなければならない。その一心で、彼は必死に頭を働かせた。
「彼らがこの部屋に入ってくる前に、隠れられる場所はないか？」
松田は龍馬に小声で尋ねた。龍馬は少し考え込み、部屋の隅にある古い屏風を指さした。
「ここなら、多少時間を稼げるかもしれん。わしらはそこに隠れて、敵が油断したところを狙おう。」
松田は龍馬の提案に従い、屏風の裏に身を潜めた。陸奥も続いて隠れ、3人は息を殺して刺客たちの動きを待った。
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扉が静かに開いた。
松田は屏風の隙間から、2人の黒装束を纏った男たちが部屋に入ってくるのを目撃した。暗闇の中、彼らの表情は見えないが、その動きは一切の躊躇を感じさせない。音もなく床を進み、部屋を見渡している。刀を持った男たちが探しているのは、一人の標的――坂本龍馬だ。
「……おらんか？」
一人の男が低く呟く。その声には苛立ちが混じっている。
松田は、短刀を握りしめる手に力を込めた。龍馬の命が今、彼の行動にかかっている。だが、彼はどうすべきか迷っていた。歴史を変えるのは、単に事実を歪めるだけではない。松田はその責任の重さを痛感していた。
「見つからんか。では、他の部屋も……」
男たちが動き出そうとした瞬間、龍馬が静かに息を吸い込む音が聞こえた。松田はその音に反応し、思わず飛び出した。
「今だ！」
松田は叫びながら短刀を振りかざし、刺客たちに向かって突進した。彼自身、何をしているのか理解する間もなく、体が反射的に動いていた。
刺客たちは驚いて後退し、瞬間的に刀を構える。だが、その一瞬の隙が決定的だった。龍馬と陸奥が同時に飛び出し、松田の動きに合わせて襲撃者たちに襲いかかった。
一人の刺客が龍馬の一撃をかわし、刀を振り上げる。だが、龍馬は鋭い身のこなしでその攻撃を避け、相手の足を払う。倒れた刺客に陸奥が素早くとどめを刺す。
松田はもう一人の男と向き合った。彼の刀が光を反射して鈍く光る。松田は短刀を構えたが、心臓が激しく鼓動しているのを感じた。相手はプロの刺客、自分のような歴史学者では到底太刀打ちできない。
「くそ……！」
刺客が刀を振り下ろす瞬間、松田はとっさに身を低くして避けた。刀が空を切り、彼の頭上を通り過ぎる。反撃する隙を見つけた松田は、全力で短刀を相手の腕に突き刺した。
「ぐっ……！」
刺客は苦悶の声を上げて刀を落とし、松田は反射的にそれを蹴り飛ばした。攻撃を受けた男は、そのまま倒れ込む。
静寂が訪れた。
松田はその場に座り込み、激しい呼吸を繰り返しながら、目の前に広がる光景を見つめていた。刺客たちは完全に無力化されていた。彼らを倒すことができた――しかし、それが本当に良かったのか？歴史がどのように変わってしまうのか、松田にはわからなかった。
「助かったな、松田くん。」
龍馬が肩を叩いてきた。その言葉に、松田は少しだけ安堵を感じたが、すぐに複雑な感情に苛まれた。
「これで……歴史が変わりました。」
松田は呟くように言った。坂本龍馬の命を救った瞬間、確かに歴史は変わった。だが、それがどのような未来を招くのか、今の彼には全く想像できない。
龍馬はそんな松田の様子を見て、軽く笑った。
「未来がどうなるかは、わしらにはわからん。けど、今は生き延びた。それでええんとちゃうか？」
龍馬の言葉に、松田は一瞬、救われた気がした。しかし、未来に待ち受ける運命がどれほど大きく変わってしまったのか、その答えを知るのは、これからのことだった。
ChatGPT3.5が進化してChatGPT4oが無料で使用できるようになりました。
やはり、バージョンが高いとそれなりに優秀になりますね。
一発でこの物語を描き上げました。
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