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影の王  作者: ナンデス
第3章: 龍馬との邂逅
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3-3.新たな暗殺計画

京都に戻った松田は、龍馬の命を救い、倒幕を推し進めるという大きな使命を抱えながらも、不安に満ちていた。龍馬が生きていることで、歴史が変わり始めたのは明白だった。そして、彼自身の存在もまた、この時代の流れに干渉している。


ある日、龍馬や陸奥と共に会議を終え、松田がひとり宿に戻ろうとした時だった。彼は、暗がりの中で不気味な気配を感じた。振り返ると、黒装束の男がひとり、じっとこちらを見つめている。


松田は瞬時にその男がただ者ではないことを察した。彼の周囲には、数日前に遭遇した刺客と同じ冷たい殺意が漂っていた。松田は即座にその場から立ち去ろうとしたが、男が静かに声をかけた。


「待て……」


その声には、どこか威圧感があった。松田は足を止め、振り返った。男は近づいてきて、冷静な口調で続けた。


「お前が坂本龍馬を助けたと聞いている。そのせいで、すべての計画が狂い始めた。」


松田は心臓が激しく鼓動するのを感じた。敵はすでに、龍馬を救ったことを把握している。そして、龍馬を狙って再び動き出しているのだ。


「誰なんですか……?あなたたちは、なぜそこまでして龍馬を消そうとする?」

松田は冷静を保とうと努めたが、声は少し震えていた。


男はじっと松田を見つめたまま、冷たい笑みを浮かべた。


「俺たちは、幕府の未来を守るために動いている。それ以上の説明は必要ない。だが、お前もその未来を変えようとしている者のひとりだろう。」


松田は短刀に手をかけた。目の前の男が、次にどんな行動を取るか予測がつかない。自分が命を狙われることはすでに予感していたが、いざその瞬間が来ると、恐怖が体を覆っていく。


「坂本龍馬の命を奪う。それがこの国の混乱を防ぐ唯一の方法だ。お前が何者であろうと、これから先、俺たちの計画を邪魔するならば、お前も消さなければならない。」


その言葉を聞き、松田は背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。彼が未来から来たことを知られているわけではなかったが、何らかの形で龍馬を救った「異分子」として認識されていることは間違いない。


「……それなら、龍馬を襲う計画が進んでいるということか?」

松田は何とか男から情報を引き出そうと問いかけた。だが、男は答えず、刀の柄に手をかけた。


「龍馬の命はもう長くない。次に襲撃が行われるのは、数日以内だ。」


男がその言葉を残し、ゆっくりと刀を引き抜こうとした瞬間、松田は反射的に身を低くし、走り出した。すぐに逃げるしかなかった。暗がりの京都の路地裏を全力で駆け抜け、松田は何とか追っ手を振り切ることができた。


---


宿に戻った松田は、息を切らしながら龍馬の元へ急いだ。彼の頭の中では、男の言葉が繰り返されていた。「次に襲撃が行われるのは、数日以内」――龍馬が再び命を狙われているのは間違いなかった。


「龍馬さん!緊急です!」

松田が息を切らしながら龍馬の部屋に飛び込むと、龍馬と陸奥が振り返った。松田の表情から、ただならぬ事態が起こっていることはすぐに伝わった。


「どうした、松田くん?」

龍馬が真剣な表情で問いかける。松田はすぐに先ほどの男との遭遇を説明した。


「刺客が再び動き出しています。数日以内にあなたを襲う計画があると言っていました。」

松田の言葉に、龍馬も陸奥も表情を曇らせた。


「やはり、そうか……」

龍馬は低く呟き、少し考え込んだ。


「けど、それは別に驚くことやないな。わしはずっと命を狙われとるし、今さら動揺しても仕方ないやろ。」

龍馬は静かに笑ったが、その目は鋭く冷静だった。彼は、命を狙われていることを当然のこととして受け止めていたのだ。


「でも、今度は違います。相手は本気です。あなたが生き残ったことで、彼らは焦り、確実に動いてきます。」

松田は強い調子で訴えた。自分が知っている歴史では、龍馬はすでにこの時期に命を落としている。それを変えた今、次に何が起こるかは全く予測がつかない。


「ふむ……それじゃあ、こっちも策を練らんとあかんな。」

龍馬は冷静にそう言うと、陸奥に目を向けた。


「陸奥、今すぐ信頼できる者たちを集めてくれ。刺客がいつ来ても対応できるように準備を進める。」

陸奥は頷き、すぐに行動を開始した。松田はその様子を見ながら、龍馬の冷静さに改めて感嘆した。命を狙われているにもかかわらず、動じることなく次の行動を考え、的確な指示を出す姿――これこそが、歴史を動かしてきた坂本龍馬という男の真髄なのだ。


「松田くん、わしは死ぬ気はないで。せっかく君に助けられた命や。まだまだやることは山ほどある。」

龍馬は軽く笑って言った。その言葉に、松田は少しだけ安堵したが、同時にまた新たな不安が募っていた。自分が歴史に介入したことで、事態はさらに複雑になっている。


このまま龍馬を救い続けることで、日本の未来はどう変わるのか――その答えはまだ見えてこなかった。


---


数日以内に襲撃が行われるという情報を得た松田たちは、夜も警戒を強めていた。龍馬は表向きは変わらない態度を貫いていたが、宿の周囲には信頼できる同志たちを配置し、どんな動きにも対応できるようにしていた。


夜風が冷たく吹き付ける中、松田は窓の外を見つめながら、これからの展開を予想していた。彼が未来に戻るべきかどうか、依然としてその決断は下せないままだった。


「未来に戻ることが、すべての解決になるわけではない……」

松田は自分にそう言い聞かせた。だが、もし龍馬がこのまま生き続けることで、歴史が大きく変わってしまったら――その考えが、松田の胸中をさらに重くしていった。

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