花宮カナ、父と話す
お疲れ様でございます
こちら福岡は、現在雨が降っております
あんまり好きじゃないんですけど、一つだけ良い事があります
外に出る方が少なくなる為、お店のレジであんまり並ばなくて良いって所です
良くない時でも、探せば何か見つかるものだと思います
それでは本日のぼくコレ、どうぞ
父に問われて、カナは斜め下を向く
その顔は、羞恥心で赤く染め上げられている
対人関係には敏感な達夫であるが故、瞬時に気づいてしまった
男か?ひょっとして男なのか?―――
普段は何でも、お父さんに話してくれるじゃないか
お前がそんな風に顔を赤らめているところ、父さん初めて見たぞ
そいつぁ、少女から女に変わった時の顔だ
畜生め、
ウチの娘に何してくれやがった!?
どこの馬の骨かは知らんが、許さんぞ
絶対に許さんぞ
達夫にとってのカナとは、いつまでも5さいの頃のカナのままである
ただただ、ひたすら可愛く、お父さ~ん、と声を上げて飛びついてくる愛娘である
男が出来る日が来るなんて、考えたくなかった
今、実感してしまったが、湧いてくる感情は怒りである
この青二才めが、私からこの娘を、カナを奪う気か
お父さん、許しません
現在、冷静でいるのが非常に難しい状態の達夫であるが、娘の前では優しい父でいたいのだ
スーッと大きく息をつき、表面上の平静さを取り戻す達夫
その内心は、巨大な台風に加え、雷が束のように降り注いでいるような状態である
それほどまでに、達夫はカナの事を溺愛している
「何かあったのかい?お父さんに話してごらん?」
いつもの柔らかい口調ではあるが、何が何でも聞き出すつもりだ
「…ん、別になんにもないよ?今日は入学式に行って帰ってきただけだよ?」
うん、そうか―――
そう言って納得してしまいたい達夫であったが、いくら何でもその顔はあやしい
気づいてないのか、カナ
それは、恋する乙女の顔なんだ
急に席を立ち、別室へと向かう達夫
ガン、という音が響いた後、額を赤く腫らして戻ってきた
「ああ、お父さんちょっと転んじゃったんだ、ハハッ。ところでカナ、今日は誰か知り合いが出来たりしたのかい?例えば男の子とか」
水を向けられて、カナがおずおずと答え始める
「…うん。竹田泰恒って人。すごく優しいんだけど、なんか馴れ馴れしくてどうしようって思ってる」
「今、竹田さんって言った?」
「うん。竹田泰恒くん」
なんてこった―――
それ、宮家の方かも知れない
ウチの商品が、皇室御用達を名乗れるチャンスが来たのか?
売り上げ、いくらまで跳ね上がるんだ
出世のチャンスが転がり込んで来やがった
確か竹田家の御子息が、今年カナと同じ高校に御入学あそばされたとか聞いた
その方なのだろうか
そうであって欲しい
「そっかー、竹田泰恒くんねー。カナ、ご実家がどんな所か、聞いておいて貰えないかな?父さん、その泰恒くんがどんな方なのか、知っておきたいんだ」
達夫はカナに向けて、柔らかく微笑みかけている
「ん…じゃあ聞いとくね。明日ね」
返事をしたカナは、台所に向かって夕飯のおかずの仕込みをし始めた
その後ろ姿を眺めつつ、達夫はこう考えている
良い娘に育ってくれた―――
お前が引いたの、多分大当たりだ
そういえばなんですが、海水温の上昇でズワイガニが大量に餓死したそうです
高くなっちゃうんでしょうかね
環境が元に戻って、復活して欲しいものです
それでは、おやすみなさい