花宮カナ、帰る
お疲れ様でございます
チャックが開いたまま、歩いている男―――
私です
目撃された方、忘れて下さい
なんで気がつかないんでしょうかね
家に帰ってから気づき、恥ずか死ぬ寸前までいきます
それでは本日のぼくコレ、どうぞ
バス停から5分ほど歩いた先にある、瀟洒なマンション
そこがカナの自宅である
少し、カナの家族について紹介しよう
カナの父親―――
その名を、花宮達夫
大体いつも、笑っている
とある商社の営業マンであり、中々のやり手である
現在の役職、係長
プロジェクトが動き出せば先兵として動く男であり、部下からの信望も厚い
彼の仕事とは自社の商品を売り込む事だが、成功している理由は他にある
人々の顔を、繋ぐ事である
達夫は様々な営業先を抱えており、普段から方々と雑談をしている
彼の営業先で困った事があった者は、達夫に相談さえすれば、それを解決してくれる人間を直ちに紹介して貰えるのだ
弁護士―――
金だけ取って、仕事をしない連中が多々いる職業である
間違った弁護士を選んでしまえば、金だけ取られて敗訴してしまうパターンがほとんどだ
達夫はどこの法律事務所がどういった関係に強いかを熟知しており、相談を受けた相手には最も優れた事務所を紹介する
こうなるともう、その営業先は達夫に頭が上がらない
黙っていても、達夫の会社の商品を欲しがりそうな相手を営業先が見つけたら、紹介してくれるのだ
その辺のノウハウを抱えているのは達夫一人であり、部下や周囲には教えていない
自分だけ出世したいからである
他にも太陽電池や蓄電池の話を聞いたりしては、それらを繋ぎ合わせるイノベーションを提案したりしており、実際に採用される事もしばしばある
達夫の存在が営業先にとって必要とされるからこそ、達夫の商売が途切れる事は起こり得ないのだ
なお仕事を終えて帰った後の達夫は、愛犬のチワワ、ミルクちゃんに首ったけである
本日は有給調整の為、半休を取って真っ直ぐ帰宅した
ミルクちゃん(チワワ、♀、2022~、存命
真っ白なロングコートの被毛―――
潤んだ瞳、笑うと左側に垂れる舌―――
達夫が玄関を開け、ただいま~、と声を上げると、最初に迎える犬である
その距離が50㎝に近づいたところで、ミルクちゃんは必ず達夫に飛びつく
それを掴んで抱き上げるのが、達夫のお帰りの儀礼である
舐められて顔がヨダレまみれになるが、どうせ風呂に入るので達夫は気にしない
スーツを脱いで着替える前に、達夫はミルクちゃんにお迎えのご褒美をあげる
鶏のささみをブロック状に切り、昆布出汁に漬けたうえで乾燥させた、お手製のおやつだ
正直ミルクちゃんのお目当てはこちらであり、これが出てこないなら達夫に飛びついたりはしない
「ヨーシヨシヨシヨシ…えらいでちゅね~?ささみ欲しいの~?」
ワンとしか言葉にはならないが、ミルクちゃんの主張は、さっさと出すもの出しやがれである
分からない方が良いだろう
「ただいま~。…あれ、お父さん?」
「ああ、お帰りカナ。父さん今日は半休なんだ。学校はどうだった?」
なんか人が旅行に行ってる写メとか見ると、羨ましくなってしまいます
私はもう連載を2本抱えているので、ここから滅多に動けません
この目で見るオーロラって、どんななんでしょうね
そんな夢を見ながら、そろそろ落ちます
おやすみなさい