花宮カナ、固まる
お疲れ様でございます
期待されてしまうと、どうにも応えずにはいられない性分でして
ぼくコレを心待ちにしてくださる方々、ご期待ください
私は頑張って書きます
それでは本日のぼくコレ、どうぞ
よろしくって言われても、困る―――
彼氏!?
生まれてから今まで、一度も考えた事なかった
そう、カナとは、少女漫画やアニメなどのイケメンキャラに憧れた事はあっても、そのお相手が自分だったらどうだろうと考えた事など、さっぱり無いのだ
それが、現実になろうとしている
困った事に、どうして良いか全く分からない
「ホレ次!花宮!」
いつの間にか、自己紹介はカナの番になっていた
担任の田島の声で、反射的にカナが席を立つ
「はいっ!」
返事はしたものの、その後の言葉が続かない
当然である
自己紹介の言葉など、何も考えていなかったからである
固まってしまい、次第に赤くなり始めるカナ
「名前と、好きなもの。あと、よろしくお願いします」
泰恒が、口に手をかざしながら、聞こえるように囁く
「は、花宮カナです!好きなものは、パピコです!あと、よろしくお願いします!」
言い終わると同時にバッと頭を下げ、席に着くカナ
緊張と恥ずかしさのあまり、少し涙ぐんでしまっている
その様子を眺めていた泰恒は、カナを慰めてやりたくて思案していた
机の端を、トントンと叩く
音に反応して、カナが泰恒の方を見る
聞こえないように拍手をして、ニッコリ微笑む泰恒
数回叩いてから親指を立ててグッと力を入れ、言葉は無くとも、よくできましたと伝える
「あ…」
褒められたら、さっきまでの緊張と恥ずかしさが消えてしまった
悟られないように、泰恒の方をそっとチラ見する
泰恒は頬づえをついて、優しげに微笑みながら前を向いている
今考えている事は、泰恒がどう話しかけたら、カナがどう反応してくれるかである
生まれついてのホスト―――
ただのイケメンではない
可愛い女の子をどうやって喜ばせるか、いつもそんな事を考えているような男
竹田泰恒―――
カナが目をつけられてしまったのは、そんな男である
自己紹介からのホームルームが終わり、本日は下校となった
明日からは、授業が始まる
下駄箱まで歩きながら、帰ったらどうしようかと考えているカナ
初日からもう、仲良くし始めている女子達もいるようだ
うかうかしていたら、ボッチになってしまうかも知れない
近くの子にLINEとか聞いておいた方が良かったかな…
そんな事を考えつつ靴を履き、扉から出ようとしたところ、外から扉を開けられた
あれ?
これ、自動扉じゃないはず…
「やあ。待ってたよ」
傾きかけた陽が眩しくて見えづらいが、よく見れば泰恒である
目ざとい泰恒は、カナの机の横にかけてあったカバンに、バスのカードが入ったパスケースがついているのをしっかり見ていた
一緒にバスに乗って、お喋りする
泰恒が頬づえをつきながら、後半で考えていたのはそれである
「一緒に帰ろう?君もバスでしょ?ぼくもなんだ」
10㎝の距離―――
教室での、告白劇―――
泰恒を見ていると、どんどん自分がおかしくなってしまう
その抑えがたい感情が何なのか分からず、カナは逃げる事を選んだ
「…いやです。一人で帰ります」
まだね、なかなか難しいんですよ
見ていてキャーって言いたくなるレベルのイケメン
泰恒くんをそう書きたいのですが、まだまだです
どうです、恥ずかしいでしょう?
では、おやすみなさい