花宮カナ、誘う その2
お疲れ様でございます
野良のニャンコに餌など与えているのですが、育つのが早いです
なんかこの間見た時と比べて、1.2倍くらいになってる気がします
小さくて可愛い時期なんて、あっという間に終わってしまうんでしょうね
まあ、大きくなっても可愛いんですけど
もう秋口です
そんな感傷が訪れる季節になりました
それでは本日のぼくコレ、どうぞ
「それって、二人で?」
「うん、だってまだ他に誘える人なんていないし…イヤだった?」
いえ、違います。イヤっていうか、逆なんです―――
それってひょっとして、カラオケデートなんじゃないでしょうか
二人っきりですよね?
そこ密室ですけど、大丈夫でしょうか?
「そんな訳無いよ…じゃあ、二人でいこ?ぼくも練習しとかないとね。次の日曜日でどう?」
早くカナとのデートに行きたかった泰恒であるが、敢えて土曜日を指定せず日曜日を選んだのは、曲の練習をする時間を取りたかったが為である
ヘタクソだなんて、思われたくないのだ
「うん!日曜ね。何時にする?」
満面の笑みで、返事をするカナ
ハッキリ言って、これは既に天使である
異論は認めない
カナの父である達夫が失いたくないものであり、泰恒が手に入れたいものである
「じゃあ、お昼過ぎでどう?1時とか」
「分かった、1時ね。何歌うか、選んどく。今から楽しみw」
ハイ、私もです―――
しかし、参ったな―――
泰恒は、今までの人生で歌った事など碌に無いのである
正直、勉強しかしてこなかった
もっと流行りの歌とか聞いて、歌い込んでおけば良かった
だが、今更後悔しても始まらない
この子を捕まえようと思ったら、今からでもやるしかない
いつの間にかカナが降りるバス停に着き、手を振り合って分かれる二人―――
流石に1曲だけじゃあ、足りないだろう
10曲くらいは覚えておかないとな
それなら1曲当たり5分として、2人で2時間はいける
カナにそのつもりは全く無いが、泰恒にとっては人生初のデートである
ここでしくじる訳にはいかない―――
絶対にだ
泰恒の決意は固く、既にスマホで楽曲の選定を始めている
この曲悪くないんだけど、ホストか何かが歌うヤツっぽいな
これは止めとこう
いくつか聴く中で、どうやら悪く無さそうな曲をリストアップしていく
バスを降り、家の玄関を開ける頃には既に、その10曲の題名をしっかり記憶していた
ちなみに歩きスマホは、していない
現在時刻、夜の12時―――
泰恒の部屋の窓からは灯りが漏れており、微かに歌声も外へと漏れている
まだ少々音程が外れており、高い声も出せていない
こう言っては悪いが、ヘタクソと思われるレベルである
それでも泰恒は、止めない―――
今が、勝負の時なのである
実を申しますと、私の趣味の一つも歌だったりします
無駄にビブラートが効いた、ハイバリトンのよく響く歌声が持ち味です
ひょっとしたら、オペラ歌手で食っていく道なんてのもあったのかも知れません
まあ、コロナのせいで歌う機会なんて無くなっちゃいましたけど
さて、今日の仕事も終わりました
ちょっと一人で歌ってから、寝るとします
おやすみなさい




