花宮カナ、うろたえる
お疲れ様でございます
更新頻度が低いと言ったな
あれは嘘だ
俊風館高校、1年2組―――
クラスの教室に、式を終えた生徒達が続々と席に着く
右から左へ縦一列に、出席番号順の席順である
カナが教室の左側、中ほどの席に座ったところで、右側からチョイチョイと手を振られた
先程の、竹田泰恒である―――
「やあ、お隣さんだね。よろしく」
えっ…!?
話しかけられてしまった
なんて答えたらいいんだろう…
「ぼくは竹田泰恒、竹ちゃんとかツネって呼ばれるんだけど、好きな方で呼んでね。君は?」
耳まで赤くなり、ゆっくりと下を向いてしまったカナ
恥ずかしい
こんな格好良い人と仲良くして、大丈夫なの?
私みたいな、ダサ系女子
だが、相手が挨拶をしてきているのだ、
それに答えないような失礼な真似は、カナには出来なかった
消え入りそうな声で、ボソボソと泰恒に答える
「…あの、花宮カナって言います。天雷中にいました。よろしくお願いします」
カナの声が小さいので、泰恒は乗り出して耳を近づけていた
下を向きながら話していた為、泰恒がそんなに近寄っている事には、気づいていなかった
「へぇ、じゃあ近かったんだ。ぼくは紫電中だったんだ。会った事、あるのかもね」
柔らかく、優しげに響く声で、泰恒が答える―――
顔には微笑みが浮かんでおり、その気は無いのに女性を落としてしまう色香を放っている
近い―――
泰恒の声に顔を上げたカナは、ギョッとして固まってしまった
その距離、約20㎝
今までの人生で、カナはこの距離で男子と顔を向き合わせた事など無い
あまりの恥ずかしさに、両手を机に合わせて顔を伏せてしまった
それを眺めながら、クスクスと泰恒が笑っている
わざとである―――
あんまり可愛い反応だから、からかいたくなってしまったのだ
泰恒とは、周囲から見れば、普段は軽い男だ
見た目がイケメンなせいもあり、チャラいと思っている者も多い
だがその実は優しい男であり、守ってやりたいといった気持ちを、強く持つ男である
今少しずつ、泰恒は、この子を大事にしたいと思い始めている
顔を伏せたまま、カナが抗議の声を上げる
「…その、近いです。そういうの、やめてください」
顔が近いまま、泰恒が、囁く
「ゴメンね、嫌だった?」
「そうじゃなくて、恥ずかしいんです!」
耐えられなくなったカナが、泰恒の胸をグイッと押し返した
意外と結構、強く押された為、泰恒は反対側に倒れ始めた
あっ!
もし、ケガしたら
咄嗟にカナは泰恒の腕を掴んだが、引き留めるには至らず、一緒に倒れ込んでしまった
教室の床に、倒れ込んでいる泰恒―――
その上に覆い被さり、胸に顔を当てているカナ―――
ザワザワと声が上がり始める教室の中で、二人が目線を合わせる
その距離、10㎝―――
さっきより、もっと近い
ぼくコレが売れて、先生の行いと教科書も売れる事を祈ります
いえ、悪気なんて、何も無いんです
マジです
…ホントですよ?
それでは、おやすみなさい