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決勝戦-2

ーーーぱんっ!


 両の手のひらを併せた。まるで飛ぶ羽虫を叩き潰すかのように、打つように両手を併せカミラの放った炎の大玉はその手のひらによっていとも簡単に打ち消した。


「どういう……こと?私の魔法が……潰された?」


 目の前で起こった出来事をカミラは頭では理解していても心が受け入れることを拒絶した。渾身の魔法を、それも上位の魔法をあっさりと手のひらで叩き潰し、しかもそのとき魔法を使った形跡もない。

 受け入れ難い事実にカミラの瞳が小刻みに揺れる。


「精密な魔法の構築、速い展開速度、圧縮された高密な魔力……よほど鍛錬を積んできたと見える。これは構築された魔法を相殺し、魔力を吸収する技だ。攻撃に合わせて手を併せねばならんからな。タイミングを間違えれば無防備で攻撃を喰らってしまう。我は幼い頃、里長様に血を吐くまで鍛錬させられた」

「構築を相殺……?魔力を吸収?何を言っているの……?」

「吸収した魔力は自身のものに変換され、使用することもできる。魔法を主とするエルフ族にとって魔力の枯渇は死活問題だからな。人間は魔力回復のポーションを飲めば解決するだろうが、ほとんどのエルフ族が人間を不得意とする故、ポーションを使用するという発想すらなかった。それでこの技が編み出されたのだ。つまりエルフ族しか知らぬ技。もちろん人間にも習得可能だが、人間に伝わっていなかっただけの話だ。知らないのは恥ではない、当然のことだ」


 ゆっくりと手のひらをカミラに向けてかざす。さきほど吸収したカミラの魔力を再度構築し、炎の大玉を形成した。それはカミラの作り出したのもよりも遥かに大きく、魔力の濃度も濃い。


「これはお主の魔力に我のものを足したものだ。借りたものは上乗せして返すのが人間の礼儀だと聞いたが……少々上乗せし過ぎたようだ、許せ」

「……ッ防御結界(マジックバリア)!」


 大玉がカミラに向けて飛ばされる。熱気がヒリヒリと肌を焼いて、乾燥した瞳が閉じたがっていた。何倍もの力になって返ってきた自身の魔法に、カミラは全力で防御結界(マジックバリア)を展開し、来たる攻撃に備えた。

 すぐさまやってきた大きな衝撃。会場を轟かせ、揺らし、熱風を巻き起こす。衝撃が過ぎ去った後、防御結界は破壊されカミラは多少の怪我を負っていたが、どれも小さなものでほとんどのダメージを防いでいた。彼女は息を切らし、両手杖を握り体重をいくらか預けやっと立っていられるようだった。

 桝花にとってはこれで決まると思っていたが、予想外にカミラが耐えた事実に感心したように少し目を見開く。


「すまぬが我はつい先日里を出たばかりでな。人の子の魔導士を少々低く見積り過ぎていたようだ……これは我も本気を出さねば失礼というもの」


 桝花は手ひらを併せてそっと瞳を閉じた。まるで祈りを捧げるようなその姿は美しく、かつ恐ろしさを含んでいた。その光景はカミラの本能が恐怖を感じ取り彼女を後退りさせる。そうだ、これはーーー初めてイリヤと出会った時に感じた、畏怖の念。あの時の感覚に近い。


「お主に敬意を表し我らエルフ族の魔法を見せよう。これは我の本気だ。受け取るが良い」


 カミラの足元を中心に魔法陣が形成される。それはアラーナの使う呪縛魔法とはまた違う、長年旅をしてきたカミラでさえ見たことのない魔法陣だった。これから起こることの予想が一切つかず、杖を握る両手に力が入る。


防御結界(マジックバリア)!」


 カミラは残りの魔力を振り絞り全てを防御に費やした。防御結界を何重にも張り、ただこれから起こりうる全ての攻撃を防ぐことだけを考える。

 カミラの上空には空を覆うようにいくつもの魔法陣が展開された。それは全てが黄金に輝いており神秘的な光景だった。それに如何程の攻撃性があったとしても見るものの心を奪うような、そんな魔法。


日月(ひつき)魔法アマテラス」


 桝花が唱えた瞬間、天の雲が割け一筋の光がカミラをスポットライトのように照した。その光はカミラの防御結界をいとも容易く破壊し白い光が彼女を包み、やがて会場全体が眩い光に覆われた。


「きゃあああああっ!」


 高温の光に照らされたカミラは全身が焼けるような感覚がした。熱い!全身が暑いのーーー……!熱湯を全身で浴びたような痛み、ジリジリと太陽の光に焼かれるような感覚、熱いものに触れ火傷を負ったような……何とも言えぬ痛みが全身を貫いた。カミラの杖を握る手の力がだんだんと弱まっていき、光が集束する頃には彼女は膝からその場にどさりと音を立てて崩れ落ちた。それは彼女がこれ以上の戦闘は不可能だということを示し、同時に桝花の勝利が確定した。


「負け……た?この私が……」


 地面に横たわり指先ひとつ動かすことすらままならず、自身の負けを認めざるを得ない状況に、カミラの瞳からはらりと涙が溢れた。


「ルイス……さ、ま……申し訳……ございませ……ん」


 しばらくの沈黙の後、桝花の大魔法を息を呑んで見守っていた観客は桝花の勝利に歓声を上げた。桝花の勝利だけでなく、滅多に見ることができないエルフ族の魔法を目の前で観戦できたのだ。その興奮もしばらくはおさまりそうにならなさそうだ。


「少々派手にやり過ぎたか……?まあ、他人を見下したんだ、これくらいの罰がちょうど良いだろう。案ずるな、大会のルールがあるから大事にはならん」

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