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勇者パーティーの重責

 ドルトムントの町に着くと、闘技大会という一大イベントが控えているからか、町中が活気に溢れていた。3人はここに到着するまでの間に、予備知識として闘技大会がどういったものか聞き込みをしていた。分かったことは、ざっくりいうと「冒険者の力試し」だそうだ。冒険者がその旅においてどのように鍛錬を積み、どのようにパーティーで連携を取り、その実力を十二分に発揮して互いにぶつかり合うものらしい。ドルトムントでは過去9回開催しているそうだ。


 魔法や武器はもちろん、魔法具の使用も可。ただし、死人が出る行為は禁止。それ以外は何でもアリという、イリヤたちが想像している以上に緩いルールだった。最大5人のチーム戦で普段組んでいるパーティーで出場登録をするらしい。


 さっそくイリヤたちは闘技大会に出場するために大会の開催される会場、円形闘技場へ向かった。受付では氏名とパーティー内での職業を登録するようになっている。セトは盗賊、桝花は魔道士、そしてイリヤは———。


「ゆ、勇者!?」


 受付を担当している女性が、イリヤの書いた文字に驚いたような声を上げた。その受付の声に周りにいた人たちも一斉に反応する。


「勇者って……本物の勇者?」

「やっば……初めて見た」

「勇者だって!これは波乱の予感だなあ!」


 あっという間にイリヤたちは観衆によって取り囲まれた。勇者伝説は各地に広がっているが、まさかこうも反応されるとは……とセトは少し引き気味に思う。一方イリヤは慣れてしまったのか、はたまた肝が据わっているだけなのか、顔色ひとつ変えずにその群衆に笑顔で返している。


「記念すべき第10回大会に勇者が出場するとは……ますます楽しみになってきたなあ」

「けど確か聞いた話では……前のパーティーは抜けたんだろ?何でこんな所にいるんだ?」


 誰かがそう言った。イリヤはその言葉に一瞬、表情を曇らせる。しかし誰にも悟らないうちに元の笑顔に戻した。


「うん。まあ色々あってね。でも今は彼らと旅をしてるから」


 動揺の色を少しも見せずに、にっこりと躱す彼女。彼女の事情を知るセトは少しその様子を見て複雑な気分になった。抜けた、というより「追い出された」の方が表現として正しいからだ。


「そうだったのか。いやはやさすが勇者、盗賊の兄ちゃんにエルフ族の魔道士とは変わった組み合わせだなあ」


 1人の男が受付票を見て関心があるように言った。


「とても頼りになる仲間なの。君も大会出場者?もし大会で当たったら手加減しないよ」


◆◇◆


 受付を済ませ円形闘技場を出たイリヤ達は、少し町を観光しようとふらふら当てもなく歩いていた。

 町を歩けば「闘技大会に勇者が出場するらしいぞ」と噂が立っていた。受付を済ませたのはつい先程の話なのに、その噂が広まるのはあっという間だった。小さな町だからこそそうなのか、それとも「勇者」という身分がそうさせているのか。だが逆にその噂が大きく膨らみすぎて、優勝して「神の宝玉」を手に入れなければならない重圧と、勇者へ対する町の期待が大きくプレッシャーとしてのしかかる。

 特に勇者パーティーとして下手な試合をすれば、イリヤの今後の旅に影響をするのではないかと、セトには大きな責任に感じた。そのプレッシャーが顔に出ていたのか、イリヤは不思議そうにセトに訊ねる。


「どうしたの?もしかしてセト、緊張してる?」

「……逆に何であんたたちは緊張してないんだよ」

「え?このメンバーで勝てないことある?」


 当然のことのようにイリヤは言った。


「あんたは忘れたのか?俺の盗賊は本当の職業じゃないんだぞ?」

「えー?エルフ族の里での活躍を見たら忘れちゃったなあ」


 実際、イリヤは何も心配していなかった。エルフ族の里ではセトの大きな活躍でデュラハン率いる魔物を殲滅することができた。セトがいなければきっと、もっと苦戦を強いられたことだろう。セトにどんな事情があって盗賊になり、何を背負っているかはイリヤから追及するつもりはないが、何よりセトの戦闘面での実力は高いものだった。盗みスキルの才能は無いが。

 そして何より、イリヤはセトのことを心の底から信頼している。


「私、人を見る目はあるはずなんだけど?」

「……あんたの人を見る目は過去をよく振り返った方がいい」


 彼女の事情を知るセトは、呆れた視線を向けた。そこに2人の会話を黙って聞いていた桝花が口を挟む。


「何だ?お主ら何か過去にしでかしたのか?」

「え、えーっとね……話せばとーっても長くなるんだけどー……」


 仲間の桝花には話してもいいかな。と、以前追放されたパーティーでの出来事を言葉にしようとしたその時。


「おい見ろよ、勇者サマがこーんなところにいるぞ」

「本当ねぇ。まだ仲間なんて集めて旅をしていたのぉ?」


 人を馬鹿にしたような煽る声と、くすくすと鼻につくような猫なで声。


「…………ルイス」


 振り返るとそこには、かつてイリヤが共に旅をした仲間たち———イリヤをくだらない理由でパーティーから追放したルイスと、ルイス囲むようにうっとりとした女4人のパーティーが立っていた。

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