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月夜の獣  作者: 八重花
5/11

人は見かけによらない

 道中大きな事件もないまま、俺たち四人は街まであともう少しというところまでやってきた。

 が、

「日ぃ、暮れちゃうね」

 月夜が言う。

 草原はすでに赤く染まりだしている。はっきりした時間はわからないが、暗くなるのにそう時間はかからないだろう。

「どうしよ?このまま街まで歩こうか」

「うーん」

 俺一人なら本気で走ればすぐに着きそうだ。おまけに今は夜目が利く体質でもある。

 しかし、今は月夜やデスリップがいる。灯りのない草原を歩き続けて、もしはぐれでもしたら大変なことになる。

「今日はここで野宿の方が良いでしょう」

 イェレッシュが言った。デスリップも頷いて同意を示す。

「じゃあ、薪と食べ物集めて来ないとね」

 月夜がそう言うと、

「いや、もう暗くて危ないから、僕とバセットさんとで行ってきますよ」

 と、イェレッシュが言うが、

「いやいや、あんたたちが行っちゃうと、あたしとデスリップさんここで二人だけになっちゃうでしょ?

 獣とか出てきたら危ないし、イェレッシュさんはデスリップさんとここに残りなよ。バセットとあたしで行くから」

 いやいやいや、獣出ても平気だろ、お前の場合。と、俺はこっそり思ったが、デスリップのことは心配だったので何も言わなかった。

「うん、まあ、そうですね」

 なんか曖昧ではあるが、イェレッシュが頷いたので、月夜は俺の腕をとった。

「この辺りは、野生の豚が出るそうなんで気をつけてください」

「わかったー」

 月夜はひらひらと二人に手を振る。

「頼むわね。ボディーガード君」

「·······」

 だから、お前一人でも大丈夫だろ。






「バセット、これは?」

「その草は食えるけど、そっちの実は採るなよ。毒があるから」

 辺りに生えてるものを指して聞いてくる月夜に、俺も辺りを探りながら応える。

「ってか、旅してるなら食えるもんくらい覚えとけよ」

「あたし、毒食っても死なないもん」

「また、そういうことを。大体、そのサキュバスっていう設定、意味あるのか?」

「意味も何も事実だし」

「だってサキュバスって、もっと色っぽい···いや、なんでもない」

 笑顔のまま無言で近づいてくる月夜が怖かったので、黙る。

 月夜は人差し指をぴっと立てて、

「人は見かけ通りとは限らないわよ」

「そういう話でもないような···」

 言いかけて、俺は立ち止まる。

 狂暴そうな野豚が、向こうからこちらに突進してくるのが見えた。

 普通ならパニックになっても良いところだが、

「うおっと」

 俺は咄嗟にその突進を両腕で受け止めていた。

 合成獣の動体視力のせいか、今の俺には野豚の突進も余裕で見きれる。

 それに、力も今は俺の方が強いのか、野豚にいくらぐいぐい押されてもなんともない。

 月夜は弾んだ声で、

「ちょうど良かったね。肉も手に入ったよ!」

「え?食うの?」

 良いけどさ。別に。

 俺はとりあえず野豚を地面に投げ飛ばした。

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