川での邂逅
「前方に街発見」
探検隊を気取って月夜が言う。
「まだ遠いな」
前方に木などの障害物が少ないからその姿はぼんやり見えるが、ここから俺が全力で走ったとしても数時間はかかりそうだ。
「バセット」
振り返った瞬間、月夜が俺の腹の辺りを思いっきり突き飛ばす。
後ろは、川だった。
ばしゃぁぁぁんっと水しぶきが上がる。
※これも真似しないでください。
「何すんだ!!」
「そんな汚れた格好で街に入るつもり?」
確かに。
幽閉されてた俺に服なんて与えられなかった。今着ているのは、閉じ込められたときからずっと身に付けているものだけだ。袖や裾はぼろぼろに擦りきれているし、色も見る影もなく褪せている。
月夜と出会った街でも、この格好で歩き回ってたら周りから変な目で見られた。
「でも、服これしか持ってねぇし」
「それでも、多少ましには出来るでしょ」
「確かにそうだけどさ」
何も突き落とさなくても。
文句を言いながらも、体が水に浸かるようにぶざぶと川の奥へ進む。
冷たいが、檻暮らしで身だしなみを整えられなかった頃に比べればずっと―。
「ちょっと待て!!ここ、流れ速いぞ!!」
「知ってるよ」
突き出た岩にしがみつきながら叫ぶ。しかし月夜は全く意に介さない。助ける気ねぇな、こいつ。
ぐしゃっと、掴まっていた岩が砕けた。俺の強化された腕力に耐えられなかったらしい。
当然、俺はそのまま流された。
「がぼっげほっけほ···ん?」
思ったより苦しくない。合成獣になって肺活量が増したのだろうか。俺はもがいてすぐに水面に顔を出す。
そうこうしているうちに流れは緩やかになっていき、
「お、足立つわ」
けど、水を吸って服が重い。先に脱いどきゃ良かったな。
俺は下着以外を脱いで絞りながら岸へ向かい、川淵でいちゃついていた男女と目が合ってしまった。
「え、あ、あ、すみません」
しかし、俺の出現に驚いたのか、男の方がよろめき、
「あ」
川に落ちた。
作者は昔、川で遊んでいて流されたことがあります。
周りに大人はいたのですが、案外すぐには気づかないものらしく、助けが来る前に自力で這い上がりました。
作者の場合は流れが途中から緩やかになったから助かりましたが、皆さんも水辺には十分注意してくださいね。